シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

土浦日本大学中等教育学校

2019年10月掲載

土浦日本大学中等教育学校【国語】

2019年 土浦日本大学中等教育学校入試問題より

(問)もしあなたなら、「幸せとは何か」についてどのような作文を書いて発表しますか。
【資料1】・【資料2】の内容を参考にして100字以内で答えなさい。

【資料1】

「幸福」の本質的なモメント(きっかけ)
①自己充実
②他者との「交流」
(イ)交流そのものの歓(よろこ)び
(ロ)他者からの「承認(しょうにん)」

(菅野仁『友だち幻想 人と人の〈つながり〉を考える』筑摩書房より)

【資料2】【資料1】についての説明をまとめた文章

この本、『友だち幻想』では幸せになるきっかけについて説明されています。【資料1】の①「自己充実」とは、自分が能力を最大限発揮(はっき)する場を得て、やりたいことができるということが幸せにつながることを示しています。また、②の(イ)は人と人との深いつながりそのものから得られる歓びのことであり、(ロ)は何かを人からみとめられることで得られる歓びを指しています。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この土浦日本大学中等教育学校の国語の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

自他ともに、共感し合える環境をつくり出すことが幸せだと思う。自分が周りの人に貢献できれば、他人の幸福に共感できる。時間を共に過ごし多くの共感を得たとき、同時に自らの成長も感じられるからだ。

解説

自分自身の考える「幸せ」が何であるのかを言葉として表し、記述していきます。「幸せとは何か」と漠然と考えると思いつかない場合もありますが、ここでは「【資料1】・【資料2】の内容を参考にして」と条件があるように、考える際の手がかりが添えられています。「自己充実」、「(他者との)交流そのものの歓び」、「他者からの『承認』」それぞれとかかわりのあることがらのうち、自分が「幸せ」と感じられるものごとを記述していきましょう。

日能研がこの問題を選んだ理由

試験時間の中で、子どもたちは自分自身の考える「幸せとは何か」を記述していきます。

このとき、子ども自身が「幸せ」と考えることを、子どもが考えたままに自由に記述すればよいわけではありません。問題を解くときの条件として、【資料1】【資料2】を参考にするよう、指示が出されています。つまり、この問題を取り組むにあたり、子どもたちは自分の考えたことを二つの資料と照らし合わせて考えたり、資料をもとに自分の考えを構築していったりすることが必要となります。

このように、いくつかの条件に合わせるということは、出題者という他者の観点もふまえ、自分の考えを一歩引いた点から見つめなおすことです。子どもたちは問題に取り組む中で、そうした客観的な視点を持つことの必要性を実感していくといえるでしょう。

今回、子どもたちが考えを構築することがらは「幸せとは何か」という点です。子ども自身が考える幸せが、自分だけの幸せであるのか、世間のためにもつながることなのか。もし、子どもが自分と他人の存在を同時に考えることができたならば、それは、土浦日本大学中等教育学校の建学の精神にある「世界の平和と人類の福祉に寄与しうる人材の育成をはかり,社会に貢献すること」という点にもつながると考えました。また、SDGsで掲げる17の目標ともつながり、子どもたちが将来を見据えるためのよいきっかけになるともいえるでしょう。結果として、土浦日本大学中等教育学校の大切にしている考えが最大限に反映されている問題であると考えました。

以上の点から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。