シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

大妻多摩中学校

2019年09月掲載

大妻多摩中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.勉強は本来楽しいもの。知的好奇心や遊び心を持って学んでほしい。

インタビュー1/3

絵が描いてあるナンバープレートに興味があった

まずは出題意図からお話いただけますか。

森谷先生 この問題は九州地方の農産物と、自動車のナンバープレートを組み合わせて作った問題です。九州地方は農業が盛んです。人口・面積は日本の1割ほどですが、農産物は金額にして2割を超えます。私たちが九州で生産されたものをよく口にすることから、九州の農業はこれまでも度々出題しています。受験生も、九州地方の○○県は○○の農産物の生産が盛んであるという知識はある程度持っていると思います。

自動車のナンバープレートについては、自動車のご当地ナンバーが注目されたタイミングだったこともありますが、実はかなり前から興味を持っていました。以前、訪れたアメリカのメイン州でロブスター料理店を出た時に、ロブスターの絵が描いてあるナンバープレートを見て、非常に興味が湧き、日本にはないのかなという思いがずっとありました。

そんななか、昨年、ラグビーワールドカップや東京五輪用にカラーのナンバープレートが登場しました。その時に、ご当地ナンバーも交付されたので調べて見ると、ちょうど授業で扱っていた「九州」は、歴史や自然を描いたものが中心でした。長崎(佐世保)はステンドグラス、宮崎は海岸線の朝日…、どれも地域をアピールするものなのですが、関東の人にとっては結びつきにくいものが多く、それをそのまま入試問題に採用することはできないと思いましたが、農作物なら身近なところで答えられると思い、山形のさくらんぼを例に、九州地方の任意の県でナンバープレートを描いてもらうという問題になりました。

ナンバープレートの問題は、富士山ナンバーが県をまたいで交付されたことが話題になった2010年に出題したことがありました。「山梨・静岡」を答えさせる問題でしたが、9割の受験生が正解しました。今回は、知識をストレートに問う問題ではなく、一工夫したいという思いから、こういう問題になりました。

問題づくりで悩んだのは、例として取り上げた山形のナンバープレートがもともとカラーで、そのまま掲載するか否かということでした。本校の入試問題はカラー印刷なので、色がついた状態で出題することもできますが、そうすると解答にも色をつける受験生が出るだろうと考えました。カラーペンを持っていないため困ってしまう受験生が出ることも予想できるため、社会科の教員と悩んだ末に、モノクロで掲載することにしました。

社会科/森谷  陽子先生

社会科/森谷 陽子先生

絵を描かせると受験生の個性がわかる

森谷先生 絵を採り入れる問題は数年前から取り入れています。楽しんで答えるという視点も加わるのでいいですよね。前方後円墳の形を書くという歴史の問題も好評でした。ただ「前方後円墳」を覚えるのではなく、きちんと理解しているかを問えるので、そういう形の問題はおもしろいのではないかという流れがありました。また、文字だけでなく絵を描かせることにより、相手の顔が見えます。受験生の思いや個性までもわかるということで、採点していると楽しい気分になります。

海野先生 入試問題を解くことが好きという人はあまりいないと思います。だからこそ、入試問題を解きながら興味が湧いたり、遊び感覚で解いたりできる問題を出したいと思っています。この問題はワクワクしますし、受験生はスイッチが入ると大人では考えられないような発想をするので、それを見たいなという気持ちもありました。

多かった解答はさつまいも、トマト

森谷先生 県名と農産物が合っていて2点、農産物の絵をきちんと描いてくれればさらに1点、合計3点という問題でした。最初は「農産物名」を聞くことは考えていませんでしたが、多少絵がつなたくても採点できるように設けました。絵が苦手な子もいると思うのですが、空欄の受験生はいませんでした。

どんな解答がありましたか。

森谷先生 多かったのは、鹿児島のさつまいも、熊本のトマト、宮崎のピーマン、マンゴー、沖縄のパイン…という順でした。例えば福岡県のいちご(「あまおう」というブランドが有名)のように、生産量はその県が一番じゃなくても、非常に知名度の高いものは正解としました。受験勉強で都道府県1位の農産物が頭に入っているのか、さつまいも、トマトがダントツで多かったです。知識がしっかり入っているなと思いました。

意外な解答はありましたか。

森谷先生 意外なものとしては沖縄のさとうきびがありました。茎の絵を描いていて、「なんだろう」と思いましたが、それがきっと受験生の記憶にあったものなのでしょう。生産量が多い商品作物(農作物)なので、もちろん正解です。また、沖縄のハイビスカス、福岡のお茶(八女茶)、大分のシイタケ、カボスなども正解にしました。解答の多くは農作物でしたが、豚や鳥などの畜産物も少数ありました。水産物は不正解ですが、ありませんでした。

大妻多摩中学校 学園通り

大妻多摩中学校 学園通り

正答率は8割

森谷先生 解答の中には2匹の豚が仲良くしていたり、トマトとスイカの真ん中に人気キャラクターを思い浮かばせる絵があったりと、いろいろ工夫してくれていて、一生懸命描いた答案であることが伝わってきました。ナンバーの周りに広く描かれているサクランボにならい、サツマイモのつるなどを広げて描いているものもありました。採点の際に絵のうまい、下手は問題にしていません。正答率は8割でした。受験生にとっては取り組みやすい問題だったと思います。間違えた受験生の多くは問題文をよく読んでおらず、県名と農産物が一致していても九州以外の県でした。

いろいろな農作物を描いた場合はどのように採点しましたか。

森谷先生 県名と農産物が一致していれば正解にしました。例えば鹿児島は、サツマイモが豚の飼料ということもあり、サツマイモと豚をペアで描いていた受験生がいました。鹿児島のサツマイモで、背景に桜島が噴火している様子を描いている受験生もいました。

入試問題には1題でも日常につながる問題を出したい

毎年、知的好奇心をくすぐるような問題を出していますよね。社会科を楽しんで学んでほしいという思いが伝わってきます。

海野先生 入試問題は学校の顔ですし、塾などでも活用されます。入試問題に込めたメッセージはその年の受験生だけでなく、4、5年生にも伝わるので、小学生の目線で日常につながる問題を、1題でも出したいというのは意識しているところです。

森谷先生 トマトに顔がついているものがありました。それはかわいい解答でしたね。くまモンを描いていた子もいて、地域のピーアールが広く伝わっているのだなと、採点しながら思いました。

海野先生 くまモンの絵描き歌には、みかん、トマト、スイカ、阿蘇山が出てきます。もし歌を歌いながら覚ていたら、今回の問題は解きやすかったでしょうね。ガリガリ勉強するのではなく、遊び心で覚えたものが入試に生かせるというのはいいです。

森谷先生 これを機に、その地域が作っているナンバープレートが何を発信したいのか、というところにも興味をもってもらえたらいいなと思っています。

大妻多摩中学校 創立者 大妻コタカ肖像画

大妻多摩中学校 創立者 大妻コタカ肖像画

インタビュー1/3

大妻多摩中学校
大妻多摩中学校国際化と女性の社会進出が求められる時代を背景に、大妻多摩は「わたしの力を、未来のために」をスローガンとして、「社会と世界に貢献できる女性の育成」を目指している。「世界」を視野に入れた活躍を目指すべく、多彩なプログラムで構成された「英語・国際教育」を実施。
5ラウンドシステムを導入した習熟度別の英語教育から始まり、中学2年生必修でのオーストラリア研修やグローバルインタラクションチャレンジ、約50名が参加可能なターム留学制度、そして海外大学進学説明会など、6年間を系統立てて準備された国際プログラムを実施している。
また、「科学は世界の共通語」という考えのもと、理数教育にも力を入れ、大妻多摩独自の授業である「数学探究」や、立地環境を存分に活かした「理科教育」は生徒に人気の授業だ。
中学生を対象に実施している「理系を知るガイダンス」は東京農工大学と協力して実施しており、理系への好奇心をかき立てている。
2021年度には東京薬科大学と高大連携協定を締結し、理数教育のさらなる発展が期待できる。2023年度には成蹊大学とも高大連携協定を締結。さまざまな交流や連携事業を推進していく予定だ。
大妻多摩のキャンパスは駅徒歩7分に立地している。東京都にありながら自然豊かで広大なキャンパス、5つの理科実験室と3つのCALL教室、森の図書館をイメージした約200席の自習室をもつ図書館、人工芝の大きなグラウンドなど、世界基準で見ても素晴らしい教育環境である。四季を感じることができる広々としたキャンパスは、生徒の心を豊かに育んでいる。
キャンパスには体育館が3つ・グラウンドが3つ・照明付きのテニスコートが6面あり、運動をするにも恵まれた環境で、バトン部・ラクロス部・バレーボール部・バスケットボール部・テニス部などが活発に活動している。
併設大学への推薦制度はあるが、多数の生徒が他大学へ進学している。3割強が理系に進学し、ここ数年は医学部への進学者が増加している。早稲田・慶應・上智など難関大学への進学者も多い。