シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

成蹊中学校

2019年08月掲載

成蹊中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.中1の生物は毎授業が観察・実験

インタビュー3/3

教科書に載っていないところも観察する

観察・実験の頻度はどれくらいですか。

佐藤先生 中学の生物は、中1は毎回、中3は2回に1回観察・実験を行います。レポートも毎回作成・提出します。

坂井先生 本校は実験助手の方のバックアップ体制が整っています。そうしたことも毎回の観察・実験を支えています。

佐藤先生 教科書に載っていないところも観察しています。例えばダイズは葉の付き方がおもしろいのですが、発芽してある程度葉が開いたときの葉の位置関係を確認したり、トウモロコシと比較したりしています。

校内の林苑は観察材料に事欠きません。中1の生物は野外観察のフィールドワークと、実験室での植物の詳細なスケッチを併用して観察に力を入れています。
中3は顕微鏡を使っていろいろな細胞を観察します。

今年、近くの公園でアオコが大発生しました。アオコの原因のシアノバクテリアは小さな丸い粒ですが、大発生すると群体(コロニー)を形成します。これを採取して観察したところ、生徒に大好評でした。
2学期はブタの心臓の解剖など動物の組織を扱います。観察を中心に、最後にサメの解剖をしてせきつい動物の体の仕組みのまとめとします。

入試部長 家庭科教諭/坂井 史子先生

入試部長 家庭科教諭/坂井 史子先生

スケッチのノウハウは中1でたたき込む

佐藤先生 生物のレポートはスケッチを重視しています。スケッチは中1のときに、点と線でかくこと、天候、気温などのデータも記録するなど、スケッチのノウハウをしっかり身につけるので、学年が上がってもスケッチに苦労することはあまりないと思います。

スケッチを見ると、本物を見てかいたのか、インターネットを調べてかいたのかすぐにわかります。形が整ってきれいすぎるものは大抵、本物を見ていません。本物を見てかいた生徒とは評価を分けます。

レポートは必ず生徒にフィードバックします。評価の高いレポートはコピーしてみんなに見せて、どの点が評価できるか、どうすればもっとよくなるかを共有します。するとレポートの質が向上します。

成蹊中学校 秋の味覚「栗」

成蹊中学校 秋の味覚「栗」

実物を見ると数字以上に大きさを実感できる

佐藤先生 インスタグラムにアップする写真の加工は当たり前になるなど、本物が見えなくなりつつあります。そんな時代だからこそ、本物を見ることを大事にしたい。スケッチを通して本物は何かを学んでもらいたいと思います。本物がわかった上で加工するのは構いませんが、まず本物を見て、本質をとらえるようにしたいですね。

数字で大きさをイメージしても、実物を見ると印象が違ったりしますね。

佐藤先生 肉眼で見える大きさかどうかは大事な視点です。ゾウリムシは何とか肉眼でとらえられる大きさ(0.2mm)です。いきなり顕微鏡で見ることはせず、始めは瓶に入れて透かして見て、漂う様子を見ます。そうして実際の大きさをつかんでから、顕微鏡で観察します。

最新研究を授業で紹介、試験に出すことも

佐藤先生 生物は新しいことがどんどん解明されている分野です。例えば、細胞の老化のシステムがある程度わかってきました。寿命や老化現象に関わるたんぱく質を抑えれば寿命を2割延ばすことが、マウスの実験で証明されています。同じたんぱく質はヒトにもあるので、寿命を延ばす方法の開発につながるかもしれません。こうした最新の研究報告を授業で紹介したり、定期テストに出題したりしています。

科学はどんどん発展して、人工的な世界とそうでない世界の境界が曖昧になっています。その境界をきちんと線引きできる力を養うのは、理科の役割だと思っています。

人間が将来、AI(人工知能)に振り回され支配されるようなことがないように、最新科学についていけるように、現象をとらえる力のようなサイエンス的な考える力を、理科の学習を通して身につけさせたいと思います。

成蹊中学校 図書室

成蹊中学校 図書室

インタビュー3/3

成蹊中学校
成蹊中学校1906(明治39)年、学祖・中村春二により私塾「成蹊園」が本郷西片町に開塾。1924年に吉祥寺に移転し、翌年7年制の成蹊高等学校開校。戦後新制中学・高等学校となり、49(昭和24)年に大学を併設。同じ敷地内に小学校から大学までが並ぶ学園となる。
校名の由来、「桃李ものいはざれども下おのづから蹊(こみち)を成す」(『史記』)に基づいて「個性の尊重」「品性の陶冶」「勤労の実践」を教育理念としている。旧制・7年制高等学校の伝統と理念を継承する。家族的雰囲気のなか、個性重視、自由闊達な校風を保っているのも特色。
学園の正門から中・高正門までのけやき並木が見事。広々とした校内に特別教室棟、理科館、造形館、2棟の体育館などが点在。2008年には新校舎も完成した。400mグラウンド(ラグビー場)、野球場、サッカー場、馬場などが大学と共用でき施設も十分。
成蹊には「主要教科」という言葉はない。芸術科目や実技教科も含め、長い目で見た発展可能性を重視したカリキュラムを組んでいる。学習状況は年5回の定期テスト、随時行われる小テスト、実験レポートなどの成績により評価される。高2から文系・理系への移行が始まり、英・数は3段階(高1英語は2段階)のグレード別授業。高3では進路別に18のコースに分かれ、多彩な選択授業で対応。高校の自由選択の演習では、仏・独・中国語を設ける。成蹊大学へは約25%が推薦で進学するが、他大学進学希望者が増えており、東大、一橋大へ一定の合格者を出すほか、早慶上智大、東京理科大などにも多数の合格者を輩出。
静かに目を閉じ精神の集中をはかる「凝念」を行うのが日課で、テストや試合前など、自分から自然に行う生徒も多い。クラブ活動は盛んで、全国優勝を果たした男子硬式庭球部、女子硬式庭球部、東日本大会優勝のラグビー部、また文化部では都の吹奏楽コンクール金賞の吹奏楽部、自然科学部など35のクラブがある。