シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

成蹊中学校

2019年08月掲載

成蹊中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.排泄物を循環物質の視点で考える

インタビュー1/3

食べたもののうち、うんちで出るのはごくわずか

佐藤先生 「うんち」の絵本が出版されるなど、昨今うんちがブームです。「うんちは汚い」というイメージがありますが、排泄物として見るのではなく、いつもと視点を変えて有効利用できる社会の循環物質として考えてもらおうと思い、この問題を作りました。

図のデータは、私が大学で生態学を教えていたときの資料です。こうしたデータはなかなかないと思います。
初見の問題ですから、この問題の前にうんちの水分量などを計算させるなどして、段階を踏んで考えられるようにしました。

計算すると、食べたものの多くは水として出て行きますが、かすとして排出されるのは約5%(6~7%)とわずかです。二酸化炭素として排出される方が多いというのは、小学生は意外だと思います。この問題には小学生が認識していないことをとらえてもらおうという意図もありました。

理科教諭(生物)/佐藤 尚衛先生

理科教諭(生物)/佐藤 尚衛先生

物質循環が家庭で完結するトイレのアイデアも

どんな「未来トイレ」が提案されたのでしょうか。

佐藤先生 例えば、「うんちボタン・おしっこボタン付き排泄物分離機能付きトイレ」は、有効利用しやすいように始めに分別しようというアイデアです。分別してうんちだけにすれば、微生物による分解も効率的でしょう。

「ミミズトイレ」という解答もありました。トイレにミミズを“飼う”イメージです。これはとてもいい発想だと思いました。トイレに物質循環の仕組みを標準装備し、各家庭で物質循環が完結すれば理想的です。実現は難しいでしょうが、こうした想像ができる発想力を大切にしたいですね。「バイオマス発電トイレ」も同様の仕組みです。

既成概念にとらわれず、視点を変える、切り口を変えることでユニークな発想が生まれます。自由な発想力は、考える習慣が身についているかどうかが問われます。この問題は考える土台があるかどうかも見ています。

「宇宙に捨てる」では循環しない

佐藤先生 この問題は、排泄物のうんちと、体内の物質のやり取りを結びつけています。両者をリンクさせて考えることができれば、この問題を解くことができるのではないかと思います。

出来具合はいかがでしたか。

佐藤先生 満点は2割程度で、部分点が目立ちました。もう少しできてほしかったという思いはありますが、小学生にとって物質循環のテーマは難しかったようですね。ただ、無答はなく、何とかして書こうとしているのが伝わりました。

この問題の採点基準を教えてください。

佐藤先生 必須要素は、地球上で物質が循環できるアイデアになっていること。加えて、肥料や燃料などうんちをどのように有効利用するかまで書けていれば満点です。
「宇宙に捨てる」という解答がありましたが、これでは物質循環の条件を満たしません。また、単に「土にそのまま埋める」というだけでは、有効利用の方法がわかりません。

この問題の前に、解答が「微生物」の問題を連続して出題しています。物質循環に目を向けるように、うまく誘導してくださっています。満点が取れなかった受験生は、その流れにうまく乗れなかったのではないかと思います。

成蹊学園 けやき並木

成蹊学園 けやき並木

自分が出したものを「自分ごと」として考える

この問題が解ける子どもはどんな力があると思われますか。

佐藤先生 「自分ごと」としてとらえることができると思います。うんちを出しているのは自分だと意識していること、出したあとのことは知らないで済まさず、社会の一員として何ができるかを考える力があると思います。他人事にしないで、相手の立場で考えたり、全体のことを考えられることは大切にしたいですね。

水洗トイレで流したうんちがその後どうなるか、なかなか想像つかないでしょう。流したらもう関係ないと思わずに、自分が出した排泄物の行き先にも目を向けてほしいですね。

人口が増えれば当然、排泄物も増えます。地球環境の持続可能性を維持するためにも、排泄物の処理は衛生面だけでなく有効利用も考えなければならないと思います。このように、社会との接点を意識した問題づくりを心がけています。

 成蹊中学校 生物 実験室

成蹊中学校 生物 実験室

インタビュー1/3

成蹊中学校
成蹊中学校1906(明治39)年、学祖・中村春二により私塾「成蹊園」が本郷西片町に開塾。1924年に吉祥寺に移転し、翌年7年制の成蹊高等学校開校。戦後新制中学・高等学校となり、49(昭和24)年に大学を併設。同じ敷地内に小学校から大学までが並ぶ学園となる。
校名の由来、「桃李ものいはざれども下おのづから蹊(こみち)を成す」(『史記』)に基づいて「個性の尊重」「品性の陶冶」「勤労の実践」を教育理念としている。旧制・7年制高等学校の伝統と理念を継承する。家族的雰囲気のなか、個性重視、自由闊達な校風を保っているのも特色。
学園の正門から中・高正門までのけやき並木が見事。広々とした校内に特別教室棟、理科館、造形館、2棟の体育館などが点在。2008年には新校舎も完成した。400mグラウンド(ラグビー場)、野球場、サッカー場、馬場などが大学と共用でき施設も十分。
成蹊には「主要教科」という言葉はない。芸術科目や実技教科も含め、長い目で見た発展可能性を重視したカリキュラムを組んでいる。学習状況は年5回の定期テスト、随時行われる小テスト、実験レポートなどの成績により評価される。高2から文系・理系への移行が始まり、英・数は3段階(高1英語は2段階)のグレード別授業。高3では進路別に18のコースに分かれ、多彩な選択授業で対応。高校の自由選択の演習では、仏・独・中国語を設ける。成蹊大学へは約25%が推薦で進学するが、他大学進学希望者が増えており、東大、一橋大へ一定の合格者を出すほか、早慶上智大、東京理科大などにも多数の合格者を輩出。
静かに目を閉じ精神の集中をはかる「凝念」を行うのが日課で、テストや試合前など、自分から自然に行う生徒も多い。クラブ活動は盛んで、全国優勝を果たした男子硬式庭球部、女子硬式庭球部、東日本大会優勝のラグビー部、また文化部では都の吹奏楽コンクール金賞の吹奏楽部、自然科学部など35のクラブがある。