シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

成蹊中学校

2019年08月掲載

成蹊中学校【理科】

2019年 成蹊中学校入試問題より

ヒトの「うんち」に関する文章を読んで、後の問いに答えなさい。

(略)
下の図は、ヒト(成人)1人が1日当たりどのくらいの量の酸素を吸って二酸化炭素を出し、食物を食べ体外に出し、また、水をのんで体外に出しているかの物質の流れを示しています。例えば、この人は食物1400gからうんちを140g出しています。
(略)

問題図

現在はうんちの多くは水洗トイレで水と共に流してしまいます。それは下水となり、下水処理場できれいにされてから川や海に流されます。江戸時代は水洗トイレではなく、くみ取り式と呼ばれるうんちを一時的にため、くみだす方法でした。そして、そのうんちをわざわざ買いにくる人がいました。それはうんちが畑の良い肥料となったからです。しかし、現在は寄生虫が広がるなどの問題があるため、ヒトのうんちを畑にまくことは禁止されています。

(問)トイレは物質のじゅんかんを考える上でとても大切です。自然の物質の流れを考えたとき、どのようなトイレが好ましいと思うか、これからの未来のトイレを考え、1つ案を出してみてください。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この成蹊中学校の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

バクテリアなどの微生物の働きによってうんちを分解して別の物質に変え、肥料や燃料などの使えるものをつくりだすトイレ。

解説

問題文には、「トイレは物質のじゅんかんを考える上でとても大切です」「自然の物質の流れを考えたとき」とあることから、うんちを資源としてとらえ、どのように利用していくのかにも目を向けてみることで、アイデアが広がるでしょう。

もし、生ゴミを処理するコンポストのしくみなど、これまでに見聞きして知っている情報があれば、それらの情報を手がかりににして考えを組み立てることもできそうです。

日能研がこの問題を選んだ理由

物質の循環という視点から、どのようなトイレが好ましいと思うのかを考え、未来のトイレの案を説明する問題です。

問題に取り組むことで、子どもたちは、身近な存在であるトイレについて、ヒトの体内で行われる物質の流れや、江戸時代のうんちの利用方法など、科目の枠を超えたさまざまな視点から見つめ直していきます。また、未来のトイレについて、自分なりの考えを説明することによって、他者の考えに興味を持つなど、自分とは異なる意見に触れたり、新しい答えをつくり出したりすることにも目が向いていきます。

この問題に取り組むことを通して、身のまわりにある、いわば当たり前のように感じているものから課題を見つけ出し、その課題を解決していくためにはどうすればよいのかを、自らに問うことを体験するでしょう。

このような理由から、日能研では、この問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。