シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

横浜隼人中学校

2019年08月掲載

横浜隼人中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.自分の考えを自分の言葉で表現する力も中高を通して磨きをかける

インタビュー3/3

適性検査型の入試問題でも身近な問題を出題

南崎先生 適性検査型の入試も行っています。この入試は全て考えて意見を書く問題です。
今年は給食で余ったプリンと揚げパンをどう分けるかをクラスで議論する文章を読んで、最終意見を300字でまとめるという問題を出しました。また、私がどこかを旅して、実際に歩いて集めた情報や自分で撮影した写真、いろいろな地図を駆使して、国語・算数・理科・社会、全てを使った問題も作っています。1回目はドバイ、2回目はバンクーバー、3回目はベトナム、そして4回目の今回はソウルでした。
この問題も親子で食事をする時のいい話題になっているそうです。やはり教科書だけの問題よりも、何かの役に立つ、身近な問題が一番いいのだろうと思います。

教頭/南崎 徳彦先生

教頭/南崎 徳彦先生

高校は普通科3コースと国際語科

一般入試と適性検査型入試の受験生は別ですか。

南崎先生 ほぼ別々です。適性検査型は公立中高一貫校と併願の受験生がほとんどです。一般入試と適性検査型入試とでは問題の傾向が違います。準備も違うため、本校ではオススメしていないのですが、両方受ける受験生もいることはいます。
もちろんどちらの入試で入ってきても、入学後は混ざって中学校3年間を過ごします。高校には普通科が3コース。国公立大学を目指す「特別選抜」コースと、私大を目指す「特進」「進学」コースがあります。また国際語科という英語に特化したコースもあり、中学から進学する生徒はいずれのコースにも進学できます。
中3は3クラスですが、高1は19クラスあります。急に大きな学級の中に放たれるわけですが、それでも堂々と自分の意見を言っています。みんなと一緒に協働できる、そういう子どもが育っていると思います。

授業ではアクティブラーニングを実施

今回のような問題など、自分で考えて答えを導き出す問題を出題するようになって、生徒さんに変化は見られますか。

三浦先生 入試問題だけでなく、授業ではアクティブラーニングを取り入れています。

遠藤先生 そこで感じているのは、生徒は自分の意見を言いたいというのもあるのですが、一方で人の意見を聞きたいという気持ちもあるということです。

三浦先生 (人と異なる建設的な意見には)拍手が起こります。

遠藤先生 その時はその子がヒーローになります。手を挙げないでぼそっと良いことを言う子もいます。

南崎先生 生徒の声をどう拾って授業に生かすかは教員の腕の見せどころです。

アクティブラーニングを取り入れているのは中学だけですか。

三浦先生 高校でも取り入れています。

遠藤先生 内進生はやはり積極的に意見を言ってくれます。授業だけでなく、行事などにも積極的に関わります。高校1年生の委員会決めや、文化祭のクラスの催し物などについての話し合いでも積極的に意見を言ってくれるので担任は助かります。校舎内をよくわかっているので、案内も進んでしてくれます。

横浜隼人中学校 食堂

横浜隼人中学校 食堂

楽曲の歌詞を使ってアクティブラーニング

三浦先生 中2ではこんなアクティブラーニングを実施しました。楽曲の歌詞を使ってのグループ学習です。その楽曲とは、米津玄師さんの「海の幽霊」です。本校では先生と生徒が手帳を使ってやりとりをしているのですが、ある生徒がその中で「米津玄師さんの『海の幽霊』という曲がいいよ」と書いてきたのでYouTubeで聞いてみるとすごくよかったので、生徒には自己学習として「きしむ」「うだる」「風薫る」といった歌詞の言葉を調べさせたり、この歌詞の特徴を考えさせたりしました。

遠藤先生 その後、教員の間で「海の幽霊」とは何かという話し合いをしました。そこでは震災の鎮魂歌ではないかという話になったのですが。授業では、グループ学習として取り組ませ、まずは音だけを聴いて考えさせました。入試問題とリンクして、こういう授業にも積極的に取り組める子に入ってきてもらえたらなと思っています。

中1から書く力を磨く

遠藤先生 私は中高6学年をすべて経験しています。高校のことをよくわかっているので、余計に中学校で何をすべきかもわかるのです。

南崎先生 国公立大学を目指すコースを担当した時に、二次試験で自分の考えをどう表現すればいいのかわからない生徒を見てきました。その時に、高校3年間で書けるようにするのは、なかなか難しい。中学のうちから書くことに慣れていくことが、とても大切なことだと思いました。

遠藤先生 ですから中1の中間試験から学習した内容の応用として、論述問題をたくさん出しています。生徒には中1次から評価基準を示して、その力をつけるためにはどうすればいいかということを授業でレクチャーします。その後、中1の中間試験から300字くらい書かせますが、空欄はゼロです。内容も変わっていくのでおもしろいです。中1は当たり前のことを書きますが、書くことに慣れてくるとだんだん自分らしい答えを書こうとします。中3になると「教材を読んで、初読の感想を書きなさい」などと言う、自分の経験とつなげた感想を書いてくるので、目を通すのが楽しみです。登場人物はこうしているけれど、自分だったらこうすると思うなどというところまで書けるようになっているので、大したものだなと思います。嬉しいです。

三浦先生 確かに、中3にもなると抽象的ではなくて具体的な内容が多いと思います。

横浜隼人中学校 掲示物

横浜隼人中学校 掲示物

生徒中心の考える授業に参加してみませんか

最後に保護者の方へ、メッセージをお願いします。

三浦先生 初等教育時の子どもの国語教育において、保護者の方に重視してほしいことは3つあります。1つ目は、読ませたい本ではなく、読みたい本を与えてほしいということです。どんな本でも普段から進んで文字に触れることにより、国語の力がつきます。また、本が好きであることは、一生の宝です。2つ目は「説明してあげる」ではなく「説明させる」ことを意識してください。考えたことを整理してまとめることで、論理的思考力が向上します。3つ目は、大人が決めないということです。時間がかかっても自分で決めさせてください。すると判断力が身につきます。

私たちは「あなたならどうする」という問題を毎年出題していることからもわかるように、身の回りの出来事はもちろん、社会で起きている出来事を自分事としてとらえ、考えて行動できる人を育てたいと思っています。教室にゴミが落ちていたら、「関係ないよ」ではなく、気づいて拾える生徒に育てます。トイレが汚れていたら、「関係ないよ」ではなく、どう掃除するかを考えて、自分から発言できる生徒に育てます。

授業も一貫しています。横浜隼人はアクティブラーニングの先進校です。先生中心の教える授業ではなく、生徒中心の考える授業に参加してみませんか。

インタビュー3/3

横浜隼人中学校
横浜隼人中学校1979年に中学校が開校し、1985年から共学校となった。「必要で信頼される人となる」を校訓に、「学力・共生・健康」を教育の3本柱としている。遠くに富士山を仰ぐ緑豊かな自然環境の中、敷地面積54,000m2に校舎が立ち並ぶゆとりある学習環境である。最新のパソコンを配したコンピュータルームや体育館など情報教育施設や各体育施設など、生徒たちに活用されている。
「学力・共生・健康」の3本柱は、「人間教育」を最重要課題として位置づけているからだ。他人への思いやりや環境へのやさしさ、差別や偏見のない広い視野、そして困難に打ち勝つ勇気を身につけることが、新しい時代の扉を広く鍵と考えて、先生方は生徒と関わっている。
生徒主体の考える授業が、全教科で展開されている。英・数は習熟度別授業を導入。朝の読書、放課後の個別指導、漢字・英語コンテスト、ハヤト数検など、学力定着のためのプログラムも多数ある。中1の校内語学研修、中2の国内語学研修、そして中3のカナダ研修と、グローバル化に向けた対応も充実。高校の国際語科では、海外語学研修や1年間の留学制度もある。
合唱祭、スポーツフェスティバル、英語スピーチコンテストなど、行事も豊富にある。クラブ活動は活発であり、中高併せて40以上のクラブがある。全国レベルの強豪クラブもある。勉強にも部活動にも両方とも全力で打ち込むことができ、先生方がていねいにサポートしてくれるという卒業生の声が多い。