シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

横浜雙葉中学校

2019年07月掲載

横浜雙葉中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.教えられたことを鵜呑みにするのではなく、自分で確かめることが大切。

インタビュー2/3

歴史の学習で大切なのは、立場を変えていろいろな見方をすること

歴史分野の出題で大切にしていることを教えてください。

小市先生 基本的には知識の定着はもちろんのことですが、さらにいろいろな立場の人、いろいろな違いのある人と一緒に生きていくことができる社会をどのように創るのかということを、授業の中でも大切にしています。さらに歴史は、立場を変えてみるといろいろな見方ができるということを踏まえて取り組むことが歴史の学習をする上でも、研究をするうえでも大切なことだと思っています。入試もそういう考えのもとで、出題させていただいています。

横浜雙葉中学校 聖堂

横浜雙葉中学校 聖堂

自分で答えを見つけることが社会科の究極的なおもしろさ

根室市教育委員会が設置している、アイヌ民族に関する看板の説明文章が提示され、その上で「歴史について研究する時にどのようなことが大切だとあなたは考えますか。」という問いが出題されていました。

小市先生 受験生はこの問題にも一生懸命取り組んでいたと思います。ただ、大きなテーマなので、言いたいことがたくさん浮かんだのでしょう。問題の趣旨から少し外れてしまうような解答も見られました。パッと浮かんだ考えで答えてしまうと聞かれていることから離れてしまいます。やはり問題文をよく読むことが大切だと思います。

昨年の問題にも「研究」というワードが出てきたと思います。「研究」に焦点を当てている理由を教えてください。

小市先生 自分でテーマを見つけて、そこに向かって学んでいくことが、学びの本来の姿であると考えられるからです。与えられた題材をただ受け止めて吸収するだけではなくて、そこから自分で問いをたて、追究していくことが社会科の究極的なおもしろさだと思うので、そういう思いの表れだと思います。

言葉を覚えてわかった気になってはいけない

小市先生 実際に足を運んで学ぶことが好きな先生が多いと思います。授業では、先生自身が大学時代に研究したことや、体験したこと、見てきたことを話したり、いろいろなところで収集した資料の中から授業のテーマに合うものを提示したりすることにより、生徒の心をつかむ工夫をしながら授業を展開しています。

確かに、入試問題からも字面だけでなく実際のものに目を向けてほしいというメッセージが読み取れますよね。入試問題の中に、北海道の農家が平均で25haの耕地を経営しているということから、それを本当に理解しているかどうかまで考える問題がありました。

小市先生 言葉を覚えてわかった気になっている、ということが社会科の学習ではありがちなのですが、それではいけないと思っています。教科書の「北海道の農家は平均25ha(ヘクタール)ぐらいの耕地です。それは全国の農家の平均と比べておよそ10倍の広さです」という記述をみて「そうなんだ。わかった」と思うかもしれませんが、本当にわかっているのかなと思うのです。「25haって実際どのくらいの広さなんだろう」ということを自分でイメージする、考える。そこに踏み込んで、初めて自分の勉強になると思います。

この問題は、「こういう風に調べてみるとおもしろいよ」という提案的な意味合いも含んでいます。

横浜雙葉中学校 図書館

横浜雙葉中学校 図書館

日常の中に文章を書く機会がたくさんある

文章を書く力はどのように育てていますか。

小市先生 書くことは学校全体で大切にしています。LHRや総合学習の感想や振り返りを書いたり、日直は学級日誌に授業の記録に加えて、自分が最近考えていることや感じていることを1ページくらい書きます。生徒は「そんなに書けない」というのですが、求めれば書きますし、書き出したら止まらなくなります。子どもの中には表現したいことがたくさんあるのだなと感じます。

書いたものには目を通しているでしょうから、先生方は大変ですね。

小市先生 そうですね。みんなに読んでほしい文を見つけたら、学級通信や学年通信などに取り上げたり、社会科の内容であれば授業で取り上げたりしています。総合学習では、書いたことを小さなグループで発表し合うこともあります。他の子の感じ方、受け止め方を共有することで、ますます考えが深まることも多いと思います。

高学年になると自分の言葉で表現することが上手になる

6年間の積み重ねは大きいですね。

小市先生 自分の中でモヤモヤとしていることを言語化する作業を繰り返し行うため、高学年になると自分の言葉で表現することがとても上手になります。書くことだけでなく、学校生活の中には各自の意見の違いを超えて、1つのものを創り上げていかなければいけない場面が学校行事や部活動など、いろいろなところにあります。中学生の間は、意見がぶつかり、話し合いが進まないということもありますが、高2、高3になると、スムーズにできるようになっていきます。

一人一人が違うからこそおもしろい、そういう他者とともに生きていく素地を6年間の学校生活の中で育んでほしいと思っています。

横浜雙葉中学校 宗教室

横浜雙葉中学校 宗教室

インタビュー2/3

横浜雙葉中学校
横浜雙葉中学校1872(明治5)年、創始者である幼きイエス会(旧サンモール修道会)のマザー・マチルドが来日、横浜で教育活動を開始した。1900年に横浜紅蘭女学校を開校。その後、51(昭和26)年に雙葉、58年に横浜雙葉と校名を変更して現在に至る。2000(平成12)年には創立100周年を迎えた。
「徳においては純真に、義務においては堅実に」を校訓に、一人ひとりが自分を積極的に表現し、他の人と心を開いてかかわり、能力や資質を磨いて社会に役立てようとする「開かれた人」の育成を心がける。そのために「開かれた学校」を目指し、21世紀をたくましく生きるための知性と精神を伸ばす教育が行われている。
横浜港を見下ろす中区山手町のなかでも、最も異国情緒あふれる一角に位置する。隣接の修道院跡地に、聖堂・視聴覚室などを備えた高校校舎と特別教室があるが、03年には図書館やITワークショップなど、最新の情報技術やグローバル教育に対応した新校舎が完成。
45分×7時間授業で、主要教科は、男子の難関進学校なみに内容が濃く、進度が速い。特に英語はテキストの『プログレス』を軸に、中1から少人数の週6時間の授業や、外国人教師による英会話の授業など、非常に意欲的。数学は中1から数量と図形に分ける。中3から英・数は習熟度別編成となる。2期制なので、1年間は42週と公立中学の3学期制・35週より多い。定期テストは年4回だが、「小テスト」は随時各教科で行い、進度が遅れぎみの生徒には指名による補習も行う。高2から文系・理系に分かれ、幅広い選択制で進路に柔軟に対応。毎年東大に合格者を出すほか、難関私大にも多数の合格者を出している。医療系への進学者が多い。中3~高2の希望者にフランス語講座がある。
学校週5日制。年間を通じて朝の祈りやさまざまなミサ、講演会などといった宗教行事も多い。文化祭をはじめ多くの活動が、運営される生徒会を中心に計画される。クラブ活動は、文化部が20、運動部5のほか、聖歌隊、老人ホームなどでボランティアを行うTHE EYESという団体がある。テニス部、新聞部は全国大会にも出場する実績を誇る。しつけに厳しいといわれるが、教師たちは服装や持ち物検査は行わず、生徒たちが自分でけじめをつけて行動するよう求める。制服はジャンパースカート。02年から夏の準制服が登場。ブラウスは白と青、スカートは紺とチェックの2タイプずつで、組み合わせ自在。中3から高2の希望者が韓国、シンガポール、マレーシア、アメリカ、オーストラリアなどを訪れ交流するプログラムが続けられている。