シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

横浜雙葉中学校

2019年07月掲載

横浜雙葉中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.知識に縛られず、受験生が持っている本来の力を問うことも大切

インタビュー1/3

この問題を通して3つの力を問いたかった

まずは出題意図からお話していただけますか。

小市先生 この問題は3つの力を見たいと思って出題しました。

第1に物事を多角的に考える力です。現実の社会にも様々な課題があると思います。それに対する自分の価値観や考え方が当たり前であると思い込まずに、いろいろな視点で物事を考えてみることがとても大切です。そのため、この問題では自分の意見に関係なく賛成側と反対側に分かれるというルールを設定しました。

第2に相手の意見をしっかり聞く力です。現実の話し合いの中でも相手の考えを聞く時に、自分の考えというフィルターを通して相手の意見を聞くのではなく、まずは相手の言っていることをまっすぐそのまま受け止めることが大切です。そのため、この問題でも賛成側の意見を3つほど想定し、それに対する反論を求めました。まずはまっすぐに相手の意見を理解しないと答えに到らないという状況を設定したつもりです。

そして第3は、論理的に考えて反論を組み立て、わかりやすく表現する力です。なぜそう考えるのか、読み手に伝わるように説得力のある根拠を示すこと、また、わかりやすく表現することを求めています。難しい言葉を使う必要はありませんが、筋道を立てて表現するということを大事にしてほしいと思っています。

社会科主任/小市 晶子先生

社会科主任/小市 晶子先生

多くの受験生が反対の立場に立って書けていた

小市先生 多くの受験生が、反対の立場に立って書く、ということはよく出来ていました。ただ、中には設問とは違う角度からの解答(賛成側の意見1、2、3に対応していない解答)もありました。

3つの理由には偏りが見られましたか。

小市先生 2番が多かったです。作問をしている段階から、理由により反論のしやすさに差があることは想定していましたが、1番から3番までのどれを選ぶかについても受験生に任せてみようということになりました。1番、3番は反論するには難しいところがありますが、それらを選んだ解答の中にも説得力のある解答が少なからずありました。

賛成側の意見を並べる時に順番は考えましたか。

小市先生 実際にディベートをする時に賛成側が主張するとしたらこういう順番になるのではないかということを想像しながら並べました。

印象に残った解答はありましたか。

小市先生 全体的に、意欲的に取り組んでくれているという印象を受けました。他の記述問題よりも小さな字でぎっしりと書いてあるものも多く、受験生の、たくさん書きたいという気持ちが伝わってきました。考えることを楽しんでくれていることを実感できて嬉しかったです。

解答にはどのようなものがありましたか。

小市先生 例えば「当日、急に用事ができた場合は…」という解答や、「高齢や体が不自由などの理由で行けない人にとっては…」など、いろいろな状況を想像して、受験生自身の立場や自分が置かれている状況ではない、いろいろな人たちに思いを寄せている様子が伺えました。

横浜雙葉中学校 校舎

横浜雙葉中学校 校舎

論点がより明確な討論会にしたくて罰金を設定

「罰金」を設定した理由を教えてください。

小市先生 より論点のはっきりした討論会を設定したかったことが1つと、世界に視点を広げた時に日本のしくみは当たり前ではないという驚きを、入試を通して感じてもらえたらおもしろいと思い設定しました。

例えば「罰金制度を設けると、罰金を払うのが嫌で投票しに行く人が増えるかもしれないが、それでは本当に国民の意見が政治に反映されることにならないと思う」というような解答がありましたが、これはそもそも本当に投票率を上げるということが必要なのかという問いへとつながっていきます。投票率の数字を上げることが目的なのか、より良い社会をつくっていくことが目的なのか。良い意味で批判的に物事をみることにもつながったのではないかと思います。

受験生が持つ力をまっすぐに測れる問題を出したい

このような問題が生まれた背景を教えてください。

小市先生 「この問題を通して問いたかった3つの力」は、社会科の授業の中で大事にしていることです。それを問題として表現するためにどのような問題が適しているかというところから発想しました。ディベートを想定しつつ、小学生がイメージしやすいよう、ある程度のルールを設定した討論会という形に落ち着きました。

暗記することがあまり得意ではない受験生の中にも、例えば社会のいろいろな出来事について考えることが好きだったり、論理的に物事を考えられたりする子がいるのではないかと思っています。そういう本来持っている力をまっすぐに測れるような問題を出したいという思いをもってこの問題を作りました。

ただ、80点の配点のうちの多くは従来通りのオーソドックスな問題で構成しています。コツコツと丁寧に勉強することが基本であり、そうして身につけた正確な知識は中高の学びの土台として不可欠なものだからです。その上で、今回の問題のような、思考力や表現力の素地を持っている受験生にある程度の配点をする問題も入れています。

横浜雙葉中学校 校内

横浜雙葉中学校 校内

真面目にコツコツ勉強してきている生徒が多い

入学した生徒さんは、どちらのタイプが多いのでしょうか。

小市先生 真面目にコツコツ勉強してきている生徒が多いように思います。また、歴史や今の社会でおこっている様々な出来事に高い関心を持っている生徒が多いです。もちろん社会科が好きな生徒、社会的なものの見方や考え方が得意な子ばかりではないと思うので、生徒同士がお互いに影響を与え合いながら6年間の中で育ってほしいと思っています。

何か工夫をされていますか。

小市先生 授業では興味関心を引き出すことが第一歩だと思っています。難しいテーマだけでなく、「世界ってこんなにおもしろいんだ」「こんな生活をしている人がいるんだ」「こんな環境があるんだ」「歴史ってこんなドラマチックなんだ」と、純粋に心がワクワクするような題材をたくさん蒔くようにしています。

また、グループワーク、調べ学習、発表など様々な形の授業を通して、社会的なものの見方や考え方を育てていきたいと思っています。

インタビュー1/3

横浜雙葉中学校
横浜雙葉中学校1872(明治5)年、創始者である幼きイエス会(旧サンモール修道会)のマザー・マチルドが来日、横浜で教育活動を開始した。1900年に横浜紅蘭女学校を開校。その後、51(昭和26)年に雙葉、58年に横浜雙葉と校名を変更して現在に至る。2000(平成12)年には創立100周年を迎えた。
「徳においては純真に、義務においては堅実に」を校訓に、一人ひとりが自分を積極的に表現し、他の人と心を開いてかかわり、能力や資質を磨いて社会に役立てようとする「開かれた人」の育成を心がける。そのために「開かれた学校」を目指し、21世紀をたくましく生きるための知性と精神を伸ばす教育が行われている。
横浜港を見下ろす中区山手町のなかでも、最も異国情緒あふれる一角に位置する。隣接の修道院跡地に、聖堂・視聴覚室などを備えた高校校舎と特別教室があるが、03年には図書館やITワークショップなど、最新の情報技術やグローバル教育に対応した新校舎が完成。
45分×7時間授業で、主要教科は、男子の難関進学校なみに内容が濃く、進度が速い。特に英語はテキストの『プログレス』を軸に、中1から少人数の週6時間の授業や、外国人教師による英会話の授業など、非常に意欲的。数学は中1から数量と図形に分ける。中3から英・数は習熟度別編成となる。2期制なので、1年間は42週と公立中学の3学期制・35週より多い。定期テストは年4回だが、「小テスト」は随時各教科で行い、進度が遅れぎみの生徒には指名による補習も行う。高2から文系・理系に分かれ、幅広い選択制で進路に柔軟に対応。毎年東大に合格者を出すほか、難関私大にも多数の合格者を出している。医療系への進学者が多い。中3~高2の希望者にフランス語講座がある。
学校週5日制。年間を通じて朝の祈りやさまざまなミサ、講演会などといった宗教行事も多い。文化祭をはじめ多くの活動が、運営される生徒会を中心に計画される。クラブ活動は、文化部が20、運動部5のほか、聖歌隊、老人ホームなどでボランティアを行うTHE EYESという団体がある。テニス部、新聞部は全国大会にも出場する実績を誇る。しつけに厳しいといわれるが、教師たちは服装や持ち物検査は行わず、生徒たちが自分でけじめをつけて行動するよう求める。制服はジャンパースカート。02年から夏の準制服が登場。ブラウスは白と青、スカートは紺とチェックの2タイプずつで、組み合わせ自在。中3から高2の希望者が韓国、シンガポール、マレーシア、アメリカ、オーストラリアなどを訪れ交流するプログラムが続けられている。