シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

芝浦工業大学附属中学校

2019年06月掲載

芝浦工業大学附属中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.理系の学校ならではの特徴として実験・観察を体験できる機会が豊富

インタビュー2/3

理由まできちんと考え、答えられる回答が求められる

入試全般における問題作成意図についてお聞きします。どのような方針で問題を作られているかを教えてください。

西元先生 この出題でもあるように思考力を問う問題、単に知識だけを問う問題も大事ですが、普段の授業の中でなぜその操作を行うのか、という理由などを考えて答えられるかどうか、理解しているかどうか、さらには表現できるかどうかが重要と捉えています。知識として知っているけど書けないという受験生も、文章が並んでニュアンスが伝われば得点になることもあります。

題材としてですが、時事問題などはきちんと勉強してきなさいとは言うのですが、実際には得点差が出にくかったりします。受験生全体の得点率と合格者の得点率の差がでにくいものでなく、理科としては点数の差が大きくなるような出題を心がけるようにしています。

竹内先生 問題については、ガス給湯器などといった割と身近なものを出題することが多いですね。常に身の回りのものにアンテナを張り、それを自分のものとして身につけられるかどうかは重要ですね、また知識の点と点をきちんと線にできる、論理性を持った生徒かどうかを計るような問題構成にしています。

問題は先生方で持ち寄って作成する感じですか?

竹内先生 そうですね、夏休みは会議室で缶詰になって作問を行いました。問題を持ち寄る際には、結果的に何年か前と同じ問題が出てくることは多々あります。物理の問題はかなり偏りがちで、浮力やレンズ、つり合い、回路といったところが多くなります。それはどの学校も同じような感じなのかなとは思います。一応過去の問題は分析した上で、なるべく固まらないようにしようとは考えていますね。

理科主任/西元 進哉先生

理科主任/西元 進哉先生

SDGsの理念はすでに持っていた?

最初に話の合ったSDGsに絡ませた問題を出そうと思ったのは今年からですか?

竹内先生 そうですね。あえて意識して、というのは今年からです。本校の場合はかなり前から身近な問題を意識して出題しているので、特に意識はしているわけではないのですが、自然とSDGsに沿った問題を作っていたのだと思います。SDGsに関してはわざわざそこに意識を置いてやっているわけではないのですが、結果としていろんな活動がSGDsに関わっていることは多いです。学校全体では特別行っているわけではありませんが身近なところからきちんと科学を考えてもらおうと思っています。

あと、科学につよい生徒は、学校に入ってから伸びてくるので、広く興味を持ち常にアンテナを張っているのかな?ということを確かめる上でも生活に身近な問題を出題していこうと思って作成しています。学校で習うことが生活の中でどういうところと関連があるのか?ということですね。

芝浦工業大学附属中学校 しばうら鉄道工学ギャラリー

芝浦工業大学附属中学校 しばうら鉄道工学ギャラリー

1人1台タブレットを保有しICT教育に活用

「理科が好き」「理系に進みたい」という生徒が多く入学してきていると思いますが、芝浦工業大学附属中学高等学校の特徴はどんなところにあると思いますか?

西元先生 ひとつは、豊洲への移転とともにICTやアクティブラーニングの導入をはじめました。今まで使っていた黒板をホワイトボードに替えてそこにプロジェクターで投影できる形にしたんです。あとはいろいろなソフトウェアですね、授業の補助的なソフトウェアを利用して、授業で活かせるようにしていきながら、反転授業的なものを少しずつ取り入れるようにしているところです、ようやく見た目でも形を変えてきたかなという印象ですね。

あと、それにともなって生徒全員にキーボード付きのタブレットPCを購入してもらっています。本校は全館でWi-Fiがつながっていますので、校内どこでも利用することができます。アプリを利用して実験資料を配布したり、実験レポートを提出させたり、ICTはそのような形で有効に使っています。

生徒はタブレットなどのIT機器を入学後問題なく普通にいじれるのですか?

竹内先生 普通に利用できていますね。ある意味、我々より使える生徒が多いのではないか?という印象です。家に持ち帰りも可能ですが、閲覧制限などはかけてはいます。

理科教育という意味では、実験・観察の体験分野を重要視していまして、中3では実験だけの時間としての「サイエンス・テクノロジーアワー」というのがあります。これは生徒の成長に大きくつながるものがありまして、自分で見たものをレポートに書いて出してもらうものです。理科実験自体がアクティブラーニングなので、特に意識しなくても実験・観察を多くすることで結果的にアクティブラーニングになっていますね。

頻度として中学生だと週4時間理科があるうち必ず1回から2回は実験を行っています。高校になると講義が多くなりますので数は減りますが、中学の学習をベースにして発展した実験も行っています。

解剖などの実験は行ったりするのですか?

竹内先生 以前はやっていたのですが、社会の流れの中でなるべく実験動物は使わないということからやらない方向になっています。その代わり、DNAの抽出や遺伝子組み換えといった生命科学的な実験を増やしています。

芝浦工業大学附属中学校 生物実験室

芝浦工業大学附属中学校 生物実験室

インタビュー2/3

芝浦工業大学附属中学校
芝浦工業大学附属中学校1922年4月、旧国鉄で働く若者達に中等教育の機会を提供したいという思いから、前身である東京鐵道中学が開校。第二次大戦中には東京育英中学へと名前を変え、戦後の学制改革で東京育英高等学校に再編。その後、1953年に経営が芝浦学園へ移され、現在の芝浦工業大学高等学校へと移行した。1982年には、板橋区坂下に移転。そして、2017年4月1日、豊洲校舎へ移転。高校は共学となった。2021年度からは中学も共学となっている。
中高大一貫教育によって理工系人材を育成することを目標に、科学技術に対する興味関心、理系の基礎学力・思考力、そして国際性や粘り強さなどの資質を育てている。「ほんとうにそれは正しいのか?」「別の考え方や方法はないのか」と常に自問する態度を重視し、そこから検証を加えて自分なりの価値判断を行い、最後に他者を納得させ、共感させ、感動させる表現力を手にする。大学や実社会で活躍する為に求められる批判的精神を大切にしているのだ
豊洲校舎は、芝浦工業大学のメインキャンパスの近くであり、他に例を見ない規模の連携教育が行われる。また、近隣にある企業・研究施設・体験施設・展示会場などが豊富に存在し、これから求められる学びに最適の状況だ。世界で活躍する技術者・研究者の卵の育成という本校の教育目標を実践するための校舎と、それを支える周りの環境に恵まれている。
理系ではなく理工系教育を重視し、「ショートテクノロジーアワー」では、各教科と科学技術との関わりを学び、中3「サイエンス・テクノロジーアワー」でサイエンスの面白さ、深さを学ぶ。中1の「工学わくわく講座」から高3「大学先取り授業」など、併設大学との連携講座が充実している。また、2021年度より新カリキュラムが始まり、テクノロジー系とグローバル系2つの探究がスタートした。「理工系の知識で社会課題を解決する」人材育成を目指している。最新のICT設備や大型機械も使えるファクトリー、さらには、「しばうら鉄道工学ギャラリー」など、芝浦工業大学附属中学高等学校ならではの設備・施設も魅力的だ。