シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

芝浦工業大学附属中学校

2019年06月掲載

芝浦工業大学附属中学校【理科】

2019年 芝浦工業大学附属中学校入試問題より

(問)(図)は、ウミガメが食料としているクラゲの写真です。近年、ウミガメが海洋にただよっているビニール袋(ぶくろ)をクラゲとまちがえて食べてしまい、それが原因で死んでしまうことが問題となっています。
ウミガメをそのような被(ひ)害から救うためにどのようなビニール袋をつくればよいと思いますか。あなたの考えを50字以内で答えなさい。ただし、ビニール袋として通常使用できる便利さは失わないものとします。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この芝浦工業大学附属中学校の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例
  • ウミガメが消化でき、水にはとけずに海水にだけとける物質を使ってビニール袋をつくる。
  • ビニール袋に、毒を持っている生物に似せた色や模様を印刷し、クラゲとまちがえないようにする。

など

解説

ウミガメを救う手段として、一般的には、海にビニール袋を流出させないための方法や、ビニール袋を使わないようにするための方法が検討されますが、この問題では、「どのようなビニール袋をつくればよいか」が問われています。したがって、仮に海に流出したとしても、ウミガメに被害が及ばないようにするためのビニール袋を考える必要があります。

ウミガメがクラゲとまちがえないためにどうすればよいか、ウミガメが食べてしまったとしても害がないようにするためにはどうすればよいか、など、方向性はいくつも考えられるでしょう。

また、「ビニール袋として通常使用できる便利さは失わないものとします」という条件があるため、普段の生活でビニール袋を使う場面を思い浮かべて、自分の考えたアイデアを実現したときに不具合が起こらないかどうかを検討する必要があります。

日能研がこの問題を選んだ理由

クラゲとまちがえてビニール袋を食べてしまうウミガメを救うために、どのようなビニール袋をつくればよいのか、自分なりの考えを説明する問題です。

子どもたちは、どのようなビニール袋をつくればよいのかを、問題文に示された情報や、これまでに学んできたことを結び付けながら、筋道立てていきます。また、自分の考えを説明することによって、他の考えに興味や関心が広がったり、新たな答えをつくり出したりすることにも目が向いていきます。

この問題に取り組むことによって、子どもたちが環境保全や生態系に興味や関心を持ち、今後さまざまな未知の課題に出あったときに、課題を「自分ごと」としてとらえていくきっかけになることでしょう。

このような理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。

SDGs17のゴールとのつながりについて

  • 18 SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS
  • 12 つくる責任 つかう責任
  • 14 海を豊かさを守ろう

「プラスチック汚染」について、どのくらい知っていますか?たとえばプラスチックごみの9割が、リサイクルされていないこと。毎年800万トン以上のプラスチックがゴミとして海に流れ込んでいること。すでにその数は銀河系の星の数より多く、2050年には魚の量より多くなると予測されていること。そして、一部は紫外線・海流・波で、マイクロプラスチックと呼ばれる細かい破片となり、有害物質が付着しやすくなり、鳥や魚がエサと間違えて食べ、その魚を私たちが食べていること……。

環境をテーマにした入試問題は、これまで社会的な視点からアプローチするものが多かったのですが、この問題は理科(科学)的な視点からアプローチしています。「プラスチック汚染」は、まさに目標14「海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する」に向けて、第一線の科学者や研究者たちが取り組んでいる課題のひとつ。科学者と同じ目線で考えることを通して、「海洋汚染に関心を持ってほしい」というメッセージを感じることができます。

私学とSDGsのつながりについて詳しくはこちらから

日能研は、SDGs をツールとして使い、私学の活動と入試問題に光を当てた冊子をつくりました。
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