シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

清泉女学院中学校

2019年06月掲載

清泉女学院中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.世の中の動きにリンクした作品を選ぶ

インタビュー2/3

世の中の動きに興味・関心を持とう

この問題の次に、文中に出てくる「黒主山」という山鉾の写真を提示して、関係する「京都市内で七月に行われる祭り」を選ぶ選択問題があります。社会科の時事問題のようですね。

瀧先生 祇園祭は毎年ニュースで取り上げられます。日本人として知っておいてほしいですね。ちなみに、これは3期の問題ですが、1期の社会科で祇園祭の問題を出しました。
評論文は社会の課題をテーマにしたものを取り上げるようにしています。今、世の中でどんなことが起こっているのか関心を持ってほしいですね。小学生なりにアンテナを張って、情報をキャッチできるようにしましょう。

清泉女学院中学校 聖堂

清泉女学院中学校 聖堂

評論文では言語情報を図に抽象化する出題も

3期入試は、この問題の他にも教科横断的な思考を試す出題がありますね。「ものの見え方と見方」がテーマの評論文には、人間がものを見る仕組みの図が出てきます。

瀧先生 その問題も私が作問しました。図の空欄に当てはまる言葉を本文から抜き出して図を完成させます。言語情報(本文)から非言語情報(図解)への抽象化です。
こうした頭の使い方は、算数の図形問題でしていると思います。算数に限らずいろいろな教科でやってほしいですね。

教科横断的な問題を作るにあたり、他教科の先生と話し合うことはありますか。

瀧先生 ものの見え方と見方の図は、理科の教員にチェックしてもらい、本文の内容と食い違いがないように直しました。理科の教員は「おもしろそうだね」と好意的な反応でした。教科の枠を超えた教員間の情報交換が増えていると感じます。

「日本語ならジャンル不問」は国語科ならでは

3期の評論文のテーマ「ものの見え方と見方」は哲学的な部分があり、小学生にはちょっと背伸びした内容に思いました。素材文選びで大切にされていることは何ですか。

瀧先生 日本語で書かれたものは国語科の範疇だと思っています。いかにも国語科らしい文章ばかりに偏らないように、人文科学・社会科学・自然科学のいろいろなジャンルから選ぶように心がけています。物事を多角的に見られるようにというねらいもあります。
小説の素材文は、受験生と同年代の人物が登場するものを選び、共感力や他者に寄り添う姿勢を見ています。

清泉女学院中学校 賞状・トロフィー

清泉女学院中学校 賞状・トロフィー

漫画と評論の内容を結びつけるユニークな問題も

瀧先生 文章記述も必ず出題します。相手に伝わる文章が書けるかどうか、すなわち、おかしな文末になっていないか、主語と述語のねじれがないか、主語があるかなどをチェックします。
「あなたの考えを答えなさい」という自由記述を出すこともあります。ポイントが合っていれば表現が多少拙くても許容しています。
2期入試の評論文では、本文の内容に関連した4コママンガ『ののちゃん』を取り上げ、文章記述(理由の説明)を出題しました。評論文と漫画(セリフ)という表現方法が異なるものを結びつけ、いつもと違う頭の使い方をしてもらいました。

語彙力を伴う漢字の書き取り問題

瀧先生 将来どんな道に進んでも、まず資料等をきちんと読めなければなりません。ですから中学入試でもいろいろなジャンルの文章を取り上げています。初めて読むテーマでも食らいついて読んでほしいですね。
「読む力」の一環として語彙力も意識して聞いています。本校の漢字の書き取りは、「善後策」のように語彙力を伴うものを出題しています。漢字そのものは難しくありませんが、小学生があまり使わないような言葉も出します。小学生の柔らかい頭でいろいろな言葉を獲得してほしいですね。

清泉女学院中学校 図書館

清泉女学院中学校 図書館

インタビュー2/3

清泉女学院中学校
清泉女学院中学校1877(明治10)年に創立の聖心侍女修道会(本部はローマ、世界20か国に44の姉妹校)により、1938年、前身の清泉寮学院創立。47年に横須賀に中学、翌年高校を設立。63年に現在地に移転し、2023(令和5)年に創立75周年を迎える。進学率のよさから「鎌倉一の女学校」の座を堅持している。
大船駅西側の丘陵地帯、栄光学園と谷ひとつ隔てた玉縄城跡に位置する。緑の芝生が美しい7万m2もある敷地には、観覧席がある体育館、2面の広いグラウンド、コンピュータ室、憩いのスペースのカフェテリアなどがあり、充実した施設・設備を完備。02年には修道院を改修した新校舎ラファエラ館が完成、美術室や音楽室、少人数授業対応の教室など設備が一新された。
「神の み前に 清く 正しく 愛深く」をモットーに、より良い社会をつくるために積極的に貢献する人の育成を目指している。ほかのカトリック校に比べると、「校則」や校内の雰囲気は驚くほど自由で、利益や結果よりも目に見えない精神的価値を大切に考える。
完全中高一貫を生かした独自のカリキュラム。大学受験を強く意識し、英語と数学は中1から習熟度別授業を実施。理科は実験・観察が重視され、社会では新聞・ニュース番組・映画など現実感のある教材を活用している。高2から文系・理系の2コース選択制になる。理系に数学演習などを設置したり、文系国公立大学受験者向けの授業(選択)を追加したりと、大学受験対策がより充実しさらなる飛躍を目指している。医療系にも強い。
入学後、5月に富士山麓で1泊2日のライフオリエンテーションキャンプが行われ、建学の精神と友人への親しみを養う。中2の夏休みのライフオリエンテーション、理科野外学習、清泉祭(文化祭)、体育祭、合唱祭、クリスマスミサなどの行事がある。ボランティア活動も盛んで、さまざまな福祉活動に参加。23あるクラブは参加率90%以上。なかでも、音楽部は全国大会で高く評価されており、2019年にはRIGA SINGS(1st International Choir Competition & Imants Kokars Choral Award)にて総合グランプリ(全団体中1位)を受賞。
生徒が主体となって活動する有志団体も多く、「清泉ピースプロジェクト」「AI(人工知能)倫理会議」など他校を招待して特色ある取り組みを行う。模擬国連大会に参加する生徒も多数おり、校内や他校での大会だけでなく、国際大会にも出場。