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清泉女学院中学校
2019年06月掲載
2019年 清泉女学院中学校入試問題より
- 問題文のテキストを表示する
次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。
彼女と姉の通う洲崎(すざき)バレエ教室は三条通室町(さんじょうどおりむろまち)西入る衣棚町(ころものたなちょう)にあって、三条通に面した四階建の古風なビルであった。彼女たちは土曜日になると、ノートルダム女子大学の裏手にある白壁(しらかべ)に蔦(つた)のからまった自宅から母親に送り出され、地下鉄に揺(ゆ)られて街中の教室へ通ってきた。
地下鉄烏丸御池駅(からすまおいけえき)からバレエ教室までの道のりは難しいものではなかった。三条烏丸の南西に聳(そび)えたつ煉瓦造(れんがづく)りの銀行の角を曲がって、三条通をまっすぐに進んでいけば、やがて左手に目指すビルが見えてくる。
迷うはずもない一本道であるにもかかわらず、彼女は用心深く、姉にぴったりと寄り添(そ)って歩いた。繰り返し辿(たど)るその道を、彼女は「ここで右へ曲がる」というように、自分の身の振(ふ)り方として覚えこもうとする癖(くせ)があった。姉が少しでも違(ちが)う動きをすると、彼女は不安になってしまう。通い慣れているはずの場所が、ふいに見知らぬ場所のように見えてくるからだ。
(略)
(森見登美彦著 『宵山万華鏡』〈集英社〉より一部改変)
(問1)(A)の位置にある「銀行」の地図記号として正しいものを、次の中から一つ選び、記号で答えなさい。
(問2)― 線「洲崎(すざき)バレエ教室」はどこにあると考えられますか。図の中の(a)〜(d)からもっともふさわしいものを一つ選び、記号で答えなさい。
中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この清泉女学院中学校の国語の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)
解答と解説
日能研による解答と解説
解答
(問1)(エ)
(問2)(b)
解説
(問1)地図記号に関する知識が必要となります。(エ)の「銀行」の地図記号は、旧式のてんびん計りに用いられた分銅の形で、1万分の1の地形図で使われています。ちなみに、(ア)は「警察署」の地図記号(交差した警棒の形を丸でかこんだもの)、(イ)は「消防署」の地図記号(昔、火を消す道具として使われた「さすまた」の形)、(ウ)は「税務署」の地図記号(そろばんの玉の形)、(オ)は「博物館」の地図記号(博物館や美術館などの建物の形)です。
(問2)「洲崎バレエ教室」がある場所や、「洲崎バレエ教室」に行くまでの道のりに関する情報を、文章中から読み取ります。まず、「洲崎バレエ教室は三条通室町西入る衣棚町にあって、三条通に面した四階建の古風なビルであった」という情報から、明らかに(d)はふさわしくないとわかります。続けて、「三条烏丸の南西に聳えたつ煉瓦造りの銀行の角を曲がって、三条通をまっすぐに進んでいけば、やがて左手に目指すビルが見えてくる」という情報から、残りの(a)~(c)のうち、(b)がもっともふさわしいと結論づけられます。
- 日能研がこの問題を選んだ理由
設問では、「地図記号」や「地図」といった、社会の学びと深く関連した非言語情報と、「文章」から読み取った言語情報とを関連づけます。
今、世の中で求められているのは、科目や学問の専門分野の枠をこえて、さまざまな問題に向き合う力だと言われ、科目を横断する学びの重要性が増してきています。
その意味で、社会の学びと国語の学びを融合した清泉女学院の設問は、これからの学びの形を体現していると言えます。
以上のことから、この設問に取り組むことで、子ども達は「他者と情報を共有するために必要な要素を理解すること」や「情報を筋道立ててとらえること」を、社会や国語で学んだことと結びつけながら体験することができると考え、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。