出題校にインタビュー!
学習院女子中等科
2019年05月掲載
学習院女子中等科の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
2.毎日の暮らしの中で社会を学ぶことを心がけよう。
インタビュー2/3
地理では記述問題の比重が高まっている
地理分野では、都道府県別の統計資料や、日本各地の部分地図を用いた問題がよく出題されています。地理分野の出題で大事にしているコンセプトをお聞かせください。
鈴木先生 さまざまな地理情報を「頭の中の地図」にいかに整理して書き込んでいくかを大事にしています。
具体的には、日本全体の大まかな形→都道府県の位置と形→地形→気候→代表的な都市→(都市と都市とを結ぶ交通網→)産物や地域特性など、段階的にいくつもの地図を書き、それを重ね合わせることにより「その地域の個性」を理解することが大切であると思います。そのため、単に「知っているかどうか」を問う形式は避けています。習ったことを思い出す中で正解にたどり着く(時にはパズルを正確に解きあげる)楽しみを理解してほしいです。
また近年は記述問題の比重が高まってきています。問題をよく読み、 どのようなことが求められているかを理解して解答に臨んでほしいです。正確に論旨を伝えるために主語や目的語を省略しないで解答することも重要です。
学習院女子中等科 本館
歴史では大筋の中で重要な出来事をとらえることが重要
歴史分野では、基本的な用語を書き込む問題や、出来事を年代の古い順に並べかえる問題が必ず出題されています。歴史分野の出題で大事にしているコンセプトをお聞かせください。
石川先生 基本的なことを理解しているか否かを問いたいと考えています。何年に何があったかなどの細かい知識よりも、それぞれの時代の重要な出来事が、時代の中でどのように広がっていったかを筋道立てて理解していてほしいというのが大枠の考え方です。
問題はどのように発想しますか。
石川先生 入試問題については普段から考えています。なるべく子どもたちの生活に身近で、広がりのあるテーマを探しているので、自然と時事問題に関わるものが多くなります。
普段の生活の中で学ぼう
石川先生 お金も歴史や経済など話題が広がりやすい題材の1つだと思います。例えば「昔は紙幣を金貨と銀貨に交換できた。それはなぜか」という問題を出しました。我々大人は紙幣を当たり前のように使っていますが、子どもの中には「紙幣という紙切れが、なぜ額面どおりに流通するのか」という疑問を抱いたことがある子がいると思います。そういう普段の生活の中で感じている疑問のようなものを、なるべく入試に生かしたいという思いで問題を作成しています。
過去には、博物館が照明を落としている理由を尋ねる問題を出しました。博物館に行くと展示ケースの中に古文書などが展示されています。見る側にとっては暗いのですが、文化財を守るためにそうした工夫をしているのです。普段から博物館や美術館に足を運んでいて、「なぜなのだろう」という疑問を持っていれば、それが役立つ問題です。
時事問題も同様に、普段からテレビや新聞を見て、社会の問題をご家庭の方と話す習慣があれば役に立ちます。机上の学習だけでなく、普段の生活の中にも学習する機会があるので、それを大切にしてほしいです。
学習院女子中等科 テニスコート
公民分野は難しく考えないで取り組んで欲しい
公民の問題では「無党派層が多い理由を書きなさい」という問題がありました。主体的な判断力を問うているのかなと思いましたが、どのような意図で出題したのですか。
柴﨑先生 無党派層の中には、積極的な無党派層と、昔からいる政治に無関心な無党派層がいると思います。どちらが正解ということではないので、どのような答えが出てくるのかなと楽しみでした。「無党派層」という言葉自体は新しいニュアンス(主体的に無党派を選ぶ)が強いと思うのですが、「政治への関心が薄れているから」「好きな政党がないから」という解答が多かったです。
こうした問題の場合、どこまで評価するかは、どのように答えているか、も基準にしています。つじつまが合っていない、文章がねじれている、意味がわからなくなってしまった…。そのようなことがなくて、子どもなりの論理が成り立っていれば評価することが多いです。ですから難しく考えないで取り組んで欲しいと思います。
その場で考えて答えられる出題の仕方を工夫
小学生の女子は政治分野が苦手な子が多いので、「難しく考えないで取り組んで欲しい」というメッセージを聞くと少し気が楽になると思います。
柴﨑先生 時事問題も毎年出しています。出題する理由を学校説明会でお話していますが、家庭で社会問題を話している、そういう雰囲気のご家庭の子女に入ってきていただきたい、という気持ちの表れです。
そのような意図があるため、最近は「あなたの考えを論じなさい」など、答えが合っている、合っていないではなくて、参加できるような聞き方をするように心がけています。知識を詰め込んでいなければ答えられないような問い方はしません。
学習院女子中等科 総合体育館 プール
時事問題は日常生活の延長線上にある
家庭で社会問題を話題にするのは難しいとよく言われます。
柴﨑先生 親子で話すことが難しくても、親御さんが社会的問題に関心があってよく話をされている、あるいは年長のご兄弟がいて話をしている。そういう環境の中で話を聞くということはありますよね。最近は新聞を取らないご家庭も多いのですが、できればそういうものに目を通して関心を持ってほしいです。時事問題は、そういう日常生活の延長線上にあると思っています。
採点は大変でしょうね。
柴﨑先生 時事問題は相場がわからないので、採点は大変ですが、それを覚悟の上で出題しています。中にはとてもしっかりとした答えを書いてくる子もいます。覚えてきたのではなく、自分の中にある知識を元にその場で考えて、満点を与えられるような解答をするので感心させられます。
インタビュー2/3