シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

学習院女子中等科

2019年05月掲載

学習院女子中等科の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.学校や塾で学習したことは活きた知識に変えて蓄積しよう

インタビュー1/3

大学入試に出てもおかしくない問題

出題意図からお話いただけますか。

鈴木先生 このようにたくさん、それも見たことがないような項目に関する数字が並んでいる問題はあまり目にしたことがないかもしれません。資料から読み取るというと、その場ですべてを考え、思いついたことを上手に表現できれば良いと考えがちですが、出題の狙いは逆に「基本的な知識がコツコツと積み上げられているか」「ニュースや新聞などで報道されていることが、我々の現実の生活にどのように関わっているか」を問うものです。

例えば愛知県は、人口数では神奈川県や大阪府より少ないのに外国人人口は東京都に次いで第2位となっています。愛知県といえばやはり国内の工業の中心だからそこで必要とされている外国人労働者も多いのかな?逆に数値が低い秋田・鳥取・高知県といえば、人口増加率が低く高齢化が進んでいることで知られているので、こうした地域には多くの外国人を惹きつける就業や就学の場が少ないのかな?というふうに、ポイントが見つかればこれまで地道に習得してきた知識が自然に思い浮かべられるような問題を作成したいと考えました。さらに昨年度には、人手不足に対応して外国人労働者の受け入れを拡大させるために法律を改正したことが新聞やニュースで大きく取り上げられました。

こうした時事的な事柄に対する関心も持ってほしいという意図もあって様々な統計の中からこの項目を選びました。もちろん限られた時間の中でさまざまな考えを取捨選択し、一つの解答にまとめていくことは容易ではありません。大学入試に出てもおかしくない問題であると思います。受験生の皆さんご苦労様でした。

学習院女子中等科 校舎

学習院女子中等科 校舎

普段からこうした問題を解くことが大事

毎年、文章記述問題が出題されています。「知識を正確に身につけているか」や「理由や背景まで押さえて理解しているか」を試す問題が多い中で、今回は「資料を読み取ってわかることをもとに考える」という形式でした。また、今年の入試問題では「あなたの考えを述べなさい」という問いかけ方が多くありました。このような形式で出題したねらいを教えてください。

鈴木先生 「あなたの考えを述べなさい」という出題形式は中学入試全般で増えつつあります。だからといって採用したわけではなく、基礎的な項目を多く問うてきた従来の地理分野の問題も出題しています。ただ地名や産物を覚えればいいというわけではなく、現代社会を理解したり問題を解決したりするための活きた知識に変える練習として、こうした問題を解いてみること、解こうと努力することは大切であると思います。

数値が大きい都道府県についての解答が多かった

問題の正答率や、実際の受験生の解答(予想外の解答も含む)などについて、感想や印象に残っていることなどがあれば教えてください。また、この問題にかぎらず、記述問題全体にかかわることや入試問題全体への受験生の取り組み方についてでも結構です。

鈴木先生 実際の受験生の解答は数値が大きい都道府県についての解答が7割、小さな県についての解答が2割、両方に触れていた解答が1割程度でした。解答の中で特に多かったのは、大都市地域における日本人と外国人の生活習慣の違いに起因する社会問題の発生に関するもので、ゴミ出し時の近隣トラブルなど、日常生活の中で発生しがちな事案を例として挙げた解答が目立ちました。また治安の悪化などを心配する、どちらかというと個人的な意見も少なからず見られました。また問題文の「社会問題」という部分を先に考え、無理をして高齢化社会や宗教対立と絡めて解答を作り出そうとする例も見られました。

学習院女子中等科 学習院旧正門

学習院女子中等科 学習院旧正門

数値が高い県・低い県、両者を比較してほしかった

鈴木先生 一方で出題者として想定していた「日本の企業の労働力不足」や「就職・就学の機会が少ない」という解答はあまり見られず、ちょっと残念でした。
いずれにしても記述問題に取り組む際は、最初に思い浮かべた解答のイメージにのみ固執せず、時間が許す限りさまざまな角度から解答することができないかを探って欲しいと思います。今回の問題についていえば、やはり数値が高い都府県が目につき、そこに焦点を絞って解答を考えている受験生が多いことは先に述べましたが、数値が低い県もそれなりの問題を抱えているわけで、両者を比較して自分なりの考えを筋道立てて述べた解答に最も高い評価を付けるよう配慮しました。

活きた知識を問いたい

すべての都道府県を掲載しているので、どの情報に着目するかが重要です。必要な情報を自分で見つけ出す情報処理能力も試そうとしている問題だと感じました。塾では人口の多い県ベスト3、ワースト3などを教えますが、そういう知識も役に立ちそうな問題だと思いました。

鈴木先生 そうですね。本校の地理や歴史は、以前からコツコツと学習してきた受験生の努力が報われるような問題を出題しています。暗記するだけではすぐに忘れてしまうので、学校や塾で学習したことを地図に落とすなど活きた知識に変えて、蓄積したさまざまな情報を生かして解答に結びつけてもらいたいという意図があります。ベスト3、ワースト3の都道府県を白地図に色分けして塗ったりすると、それまで気付かなかった何かが見えてくるかもしれません。

無答はありましたか。

鈴木先生 ほとんどありませんでした。困っても「高齢化が進んでいる」「外国人が少ない」など、社会問題を切り口にした解答が書けるので、何かしらは書こうとする努力が認められました。

学習院女子中等科 近衛騎兵連隊之跡の碑

学習院女子中等科 近衛騎兵連隊之跡の碑

インタビュー1/3

学習院女子中等科
学習院女子中等科1847(弘化4)年、京都で開講された公家の学習所がその起源。1885(明治18)年に華族女学校開校、創立130年を越える。1906年学習院と合併し、学習院女学部となる。1918(大正7)年に学習院から女学部が分離して女子学習院となる。1947(昭和22)年、宮内省の所管を離れ、私学として現校名に。1999(平成11)年から高校募集停止。
重要文化財でもある鉄製の正門を入ると、四季折々の自然が望める6万6千m2の広大な敷地に女子中・高等科と女子大学の校舎がある。理科・芸術科・家庭科は科目ごとの専用教室があり、コンピュータ室や、2つの体育館、温水プール、テニスコートなど施設も充実。沼津游泳場など校外施設もある。官立から普通の私立として再発足してから70年を越える歴史をもつ。「広い視野、たくましい創造力、豊かな感受性」を教育目標とし、世界的視野に立って、広く国際社会に貢献できる積極的な女性の育成をめざす。同窓会には皇族妃殿下が名を連ねるが、校内は気取らず明るく活発な雰囲気。
実験や実習を多く取り入れた授業を展開。特に創造性に富む表現力、情報を的確に伝える論理的構成力を育てるため、国語の作文、理科や社会のレポート作成などに力を入れる。中1の国語(古文・表現)、中1の数学(数量)・中2の数学(図形)では1クラスを2分割。英語はすべての学年で少人数制の授業。帰国生を除き、すでに英語を学んでいる初等科からの進学者と中等科入学生は中1時に分けて指導し、中3からは習熟度別授業を行う。高等科ではドイツ語・フランス語も履修できる。高2で文系・理系のコース制を導入。高3では卒業レポートを作成。60%程度が学習院大学・学習院女子大学へ推薦入学するが、最近は国公立大や早慶上智大への合格者も伸びている。海外の大学への進学者も増えている。
校長を科長、ホームルーム担任を主管と呼び、あいさつは、常に「ごきげんよう」である。「ことば」の尊重とともに芸術教育も盛ん。道徳の時間には、正式な作法教育も取り入れている。林間・臨海学校、運動会、文化祭、学芸会、スキー教室など行事も多い。クラブは文化部20、運動部11、同好会3と活発。特にテニス、ブロックフレーテ・アンサンブルは好成績を収める。運動部1と文化部1、または文化部2の合計2つまで入部可。オーストラリアの姉妹校メソディスト・レディーズ・カレッジで英語を学ぶ研修旅行や中3・高2・高3希望者対象のイギリス・イートン校でのサマースクールがある。