シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

学習院女子中等科

2019年05月掲載

学習院女子中等科【社会】

2019年 学習院女子中等科入試問題より

(問)下の表は日本に居住している外国人(在留外国人)の数を都道府県別にまとめたものである。この表からわかる社会問題についてあなたの考えを述べなさい。

北海道 32408 石川県 13877 岡山県 25944
青森県 5121 福井県 13842 広島県 49068
岩手県 6627 山梨県 15636 山口県 15566
宮城県 20405 長野県 34142 徳島県 5639
秋田県 3793 岐阜県 51029 香川県 11636
山形県 6723 静岡県 85998 愛媛県 11745
福島県 12977 愛知県 242978 高知県 4332
茨城県 63491 三重県 49178 福岡県 72039
栃木県 39896 滋賀県 27375 佐賀県 5755
群馬県 55137 京都府 57639 長崎県 10218
埼玉県 167245 大阪府 228474 熊本県 13582
千葉県 146318 兵庫県 105613 大分県 12023
東京都 537502 奈良県 11921 宮崎県 5783
神奈川県 204487 和歌山県 6407 鹿児島県 9101
新潟県 15859 鳥取県 4385 沖縄県 15847
富山県 16948 島根県 8041    

法務省「平成29年末現在における在留外国人数について」より作成(単位 人)

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この学習院女子中等科の社会の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

(例1)在留外国人は、大都市のある都道府県に集中している。たとえばゴミの出し方など、言葉の問題や習慣のちがいにより、外国人と日本人の間でトラブルが発生する場合が考えられる。

(例2)三大都市圏に含まれる都道府県などは在留外国人数も多いが、地方はそれほど多くない。そのため、地方では外国人の力を借りた活性化が行いづらい状況にあると考えられる。

解説

(例1)表を見ると、人口の多い三大都市圏に外国人が多くいることがわかります。たとえば、同じ集合住宅に住む日本人と外国人の間で、意思の疎通を図ることができず、トラブルが生じてしまうことが考えられます。

(例2)地方には、少子高齢化による人口減少で、働き手が不足しているところが多くあります。人手不足が深刻な地域では、労働力として外国人が必要とされています。しかし、地方に住んでいる外国人は少なくなっています。

※表から読み取れる情報をもとに筋道を立てて社会問題について考えられていれば、例以外の内容でも正解になります。

日能研がこの問題を選んだ理由

近年、訪日外国人旅行者が増え続けています。また、出入国管理法の改正によって外国人労働者の受け入れ拡大が決まり、今まで以上に多くの外国人が日本にやってくることでしょう。このような中で、2019年度の中学入試でも、外国人旅行者や外国人労働者について取り上げた問題が数多く出されました。

学習院女子中等科の入試では、都道府県別の在留外国人数が書かれた表から社会問題を読み取り、自分の考えを記述する問いが出されました。表には多くの数値が書かれており、表のどの部分に目を向けるのかによって、見えてくる社会問題も異なってきます。子どもたちは、ニュースや新聞などで見聞きしたことをもとに、目を向ける部分を自分で探し、表を読み取って自分なりの考えを記述していったことでしょう。

日本国内において外国人とのやりとりが増える中で、文化や習慣のちがいなどから、これまで以上にさまざまな問題が起こると考えられます。そして、こういった問題が起きたときには、客観的な情報をふまえ、さまざまな視点を持って問題を把握しながら、自分なりに解決策を考えたり、時には相手に伝えたりする力も、今後求められてくることでしょう。学習院女子中等科の問題は、こういった力がまさに試されていると感じたため、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことにしました。

SDGs17のゴールとのつながりについて

  • 18 SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS

都道府県別の在留外国人の数をまとめた資料から、どんな社会問題が見えてくるでしょうか?
たとえば、大都市に住む外国人と過疎地域に住む外国人の職業の違い(それぞれ外国人がどんな職業を担っているのか、その理由はなぜか)に目を向けるなら、目標8「すべての人々のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい雇用)を推進する」、また人口の中の外国人の割合に目を向けるなら、目標11「都市と人間の居住地を包摂的、安全、レジリエントかつ持続可能にする」……というように、資料のどこに目を向けるかによって、SDGs(持続可能な開発目標)の17の目標とのさまざまなつながりが見えてきます。

私学とSDGsのつながりについて詳しくはこちらから

日能研は、SDGs をツールとして使い、私学の活動と入試問題に光を当てた冊子をつくりました。
詳しくはこちらから