シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

麗澤中学校

2019年05月掲載

麗澤中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.「わかったつもり」にならず疑問を持つ

インタビュー3/3

数学は「行ったり来たり」が頻繁

室谷先生 わかりやすく説明できる生徒は「例え」が上手ですが、一般論でも説明できます。具体と抽象を行き来しながら説明できるので説得力があります。
また、数式を日本語に訳して文章化できるようになると、その逆、文章説明を数式化できるようにもなります。
数学は「行ったり来たり」が頻繁です。圧倒的に多いのは、図を数式に、数式を図に変換することですが、言語化は疎かになりがちです。他者が集う学校は、言語化を鍛えるのに持ってこいの場です。

麗澤中学校 メディアセンター

麗澤中学校 メディアセンター

わからなかったら、まずわかっている仲間に聞く

室谷先生 私は、わからないところがあったら、教員に聞く前にわかっている仲間に聞くようにと言っています。語彙力がほぼ同等で似たような言い回しを使う同級生なら、知っている言葉で説明してくれるからです。
教員から聞くと、「そうなんだ」とわかったつもりになり疑問を持ちにくい。けれど、同級生から聞くときは少しでも疑問に思えば突っ込みやすいし、「この子がわかるなら自分もわかるはず!」と聞こうとします。
クラス全員がわからなければ、それは教える側の責任です。もう一度説明します。教え合いが定着し、私のところに質問に来る生徒は激減しました。

平易な言葉に置き換える力が鍛えられる

室谷先生 教えていると説明につまることがあります。「わかったつもり」になっていたこと、本当はわかっていなかったところに気づき、理解を深めることができます。時間はかかりますが、着実に自分の足で学び進むことができていると実感できます。
高2の生徒を見ると、誰でもわかるような言葉を使おうとしています。わからない相手に対して、自分が知っている言葉をそのまま使うのではなく、相手が知っている平易な言葉に置き換えて、試行錯誤しながら説明しています。
教え方は、始めのうちは私の真似をしていますが、自分なりに消化できると、生徒らしいわかりやすい言葉を選んで説明できるようになります。

麗澤中学校 中央広場

麗澤中学校 中央広場

説明ができる生徒は「わかったつもり」にならない

説明上手な生徒さんの共通点はありますか。

室谷先生 語彙力によらず、わかりやすい言葉を選ぶことができています。彼らは、「わかったつもり」にならず、教わったことを自分が消化できるまで納得しません。また、わからない生徒のつまずきを察知できるのは、教わったことを自分のものにしようと試行錯誤しているからです。
公式を教えると「そうなんだ」とすぐにわかったつもりになる生徒がいますが、新しいことはそう易々と理解できはしません。自分の知っている言葉に置き換え、自分の土俵に持ち込むことができてはじめて「わかった」と言えるのです。授業では安易に「なるほど」と思わせないで、「なぜ」と疑問を持たせるように心がけています。

板書した生徒の解答を代表添削

授業では「数学的に説明する力」をどのように鍛えているのですか。

室谷先生 中1から「書く」ことに慣れさせます。定期試験でも言葉で説明することを求める文章題を出しています。
挙手制で、生徒が板書した証明問題の解答を添削することもあります。言葉の選び方や表現など「ここは惜しいね」と指摘すると、生徒は「間違いではないけれど、ベストじゃないんだ」「こちらの言い回しの方が数学らしいんだ」ととらえて、数学的な表現を磨いていきます。代表添削される生徒も、外部模試を見るとかなり書けるようになっています。

三宅さん 私は昨年まで麗澤大学で学生の就職支援を担当していました。学生を見ていて、中学・高校から自分の考えを自分の言葉で伝える力があればと感じていました。
この問題のように、「自分の言葉で語れる力」を中高6年間で鍛えることができれば、自分らしく輝けるようになるのではないでしょうか。立地が隣接していますから、中・高・大で連携して相乗効果を生み出したいと思います。

入試広報部次長/三宅 哲治さん

入試広報部次長/三宅 哲治さん

教科書を愛読書のように読み込み苦手を克服

室谷先生 私はよく「教科書を端から端までよく読んで」と言っています。本校では教科書を徹底的に活用します。教科書は実によくできています。入試問題を作るにあたり算数の教科書を読み返すのですが、「こんなおもしろいことが書かれているんだ」という発見があります。

私は昨年度、数学受験が必須だけれど数学に苦手意識を持っていた生徒を教えました。彼らにまず伝えたのは、「数学を敵対視しないで」ということ。好きにならなくてもいいから、毛嫌いしないでと言いました。そして、数学の教科書を辞書と思って手元に置いて読み込むように勧めました。生徒は傍らに4冊の数学の教科書を置いて、授業中に質問するようになりました。
その内の一人が大学入試本番を終えて、自信を持って解答してきたという報告をしてくれた時に、教科書を読み込む効果と生徒の成長を実感しました。

数学を通して課題解決の手順を身につける

室谷先生 よく「数学は実生活に役立つのか」と言われますが、数学を通して、疑問の発見や問題解決の手順など社会人として求められる力を養うことができます。
課題解決の手段は条件を度外視すればいろいろなアイデアを出せるでしょうが、現実にはいろいろな制約があり、解決の難易度は高い。数学の問題には条件が設定されていますから、問題を解くことで条件下で考える力が鍛えられます。
教員は黒子でいい。生徒自身でたくさんのことをつかみ取れるように、生徒と向き合っていきたいと思います。

麗澤中学校 中学職員室前

麗澤中学校 中学職員室前

インタビュー3/3

麗澤中学校
麗澤中学校1935(昭和10)年、法学博士の廣池千九郎により、現在の麗澤大学の前身・道徳科学専攻塾が開校。2002(平成14)年に麗澤中学校が新設され、同じキャンパスに大学・高校・中学校・幼稚園がそろう総合学園となった。
創立者が学問的に体系づけたモラロジーに基づく「知徳一体」を教育理念とし、「感謝の心」「思いやりの心」「自立の心」を育てることを教育方針に掲げる。
麗澤教育のシャワーを浴びて巣立った卒業生たちは、様々な領域で活躍の場を広げている。6年間を「自分自身をみつめ、発見する」「興味・関心を深め、進路につなげる」「進路を選択し、道を拓き夢を実現する」の3段階に分け、それぞれリサーチ、実践体験、情報処理、再構築、そして成果をプレゼンテーションする作業を基礎から学ぶ。
とりわけ、2003年から始まった「言語技術教育」は、全ての学問領域で必要となる「聴く・話す・読む・書く」を総合的に鍛える麗澤ならではの教育。中高一貫カリキュラムの1年から4年次を通して、グローバル社会で通用するものの考え方、そして、自らの考えを主張できる発信力を研鑽していく。
「よりよく学ぶためには自然の中で心を癒すことが必要」という創立者の信念に基づき、47万平方メートルの広大な校地は緑豊かで自然がいっぱい。グラウンド3つ、体育館2つ、テニスコート6面、ラグビー場(人工芝)、武道館、寮(高校のみ)、メディアセンターや9Hのゴルフコースなど施設は申し分なし。