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麗澤中学校
2019年05月掲載
2019年 麗澤中学校入試問題より
- 問題文のテキストを表示する
(問)初めて分数の足し算をする子どもに対して\(\frac{1}{3}+\frac{1}{4}\)の計算方法を説明してください。
中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この麗澤中学校の算数の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)
解答と解説
日能研による解答と解説
解答例
\(\frac{1}{3}+\frac{1}{4}\)なので、「3等分したピザ1切れ(\(\frac{1}{3}\))」と「4等分したピザ1切れ(\(\frac{1}{4}\))」を合わせると考えます。
このままでは、1切れあたりの大きさが違うので足せません。
3と4の最小公倍数は12なので、ピザを12等分している様子を考えます。こうすると、1切れあたりの大きさがそろいます。これらの分数は\(\frac{1×4}{3×4}=\frac{4}{12}\) 、\(\frac{1×3}{4×3}=\frac{3}{12}\)と分母と分子に同じ数をかけることで作れます。
よって、\(\frac{1}{3}+\frac{1}{4}\)は「12等分したピザ7切れ」と等しいので \(\frac{7}{12}\)とわかります。
解説
分数は、「分母」と「分子」という2つの数を組み合わせて表します。
「分母」は「何等分したか」を表し、「分子」は「そのうちの何個分か」を表します。例えば、「\(\frac{1}{3}\)」は「等しく3個に分けた1個分」を表します。
分数の足し算(引き算)について考えていきます。
ここでは、丸いピザを切り分けるイメージをします。
例えば、5等分したピザ1切れと5等分したピザ2切れを合わせると、5等分したピザ3切れ分になります。これを式で表すと、\(\frac{1}{5}+\frac{2}{5}=\frac{3}{5}\)となり、分母が同じときは、分子どうしを足し算して、和を求めていることが確認できます。
では、「3等分したピザ1切れ(\(\frac{1}{3}\))」と「4等分したピザ1切れ(\(\frac{1}{4}\))」を合わせると、どうなるでしょうか。「半分よりちょっと大きいぐらいかな」ということぐらいはわかりそうですが、先ほどのように、分子どうしを足し算して、和を求められそうにありません。
(\(\frac{1}{3}+\frac{1}{4}=\frac{2}{7}\)とならないことは、この様子からもわかります。)
分母(何等分したか)が違う分数を足すときは、分ける数(分母)をそろえる必要があります。これを「通分」といいます。
\(\frac{1}{3}\)は「等しく3個に分けた1個分」なので、「等しく6個に分けた2個分(\(\frac{2}{6}\))」、「等しく9個に分けた3個分(\(\frac{3}{9}\))」、「等しく12個に分けた4個分(\(\frac{4}{12}\))」、…はすべて同じ大きさを表しています。(下図参照)
これらの分数は、\(\frac{1×2}{3×2}=\frac{2}{6}\)、\(\frac{1×3}{3×3}=\frac{3}{9}\)、\(\frac{1×4}{3×4}=\frac{4}{12}\)、…のように、分母と分子に同じ数をかけることで作れます。
同じように、\(\frac{1}{4}\)は「等しく4個に分けた1個分」なので、「等しく8個に分けた2個分(\(\frac{2}{8}\))」、「等しく12個に分けた3個分(\(\frac{3}{12}\))」、「等しく16個に分けた4個分(\(\frac{4}{16}\))」、…はすべて同じ大きさを表しています。(下図参照)
通分するときは、この性質を利用して分母をそろえます。(最小公倍数でそろえることが一般的です。)
\(\frac{1}{3}+\frac{1}{4}\)=\(\frac{4}{12}+\frac{3}{12}\)・・・・・・分母をそろえると、\(\frac{1×4}{3×4}=\frac{4}{12}\)、\(\frac{1×3}{4×3}=\frac{3}{12}\) になります。
=\(\frac{7}{12}\)・・・・・・分母が等しいので、分子を足して和を求めることができます。
この足し算の様子を、ピザの図を使って表すと次のようになります。
- 日能研がこの問題を選んだ理由
\(\frac{1}{3}+\frac{1}{4}\)の計算方法という、中学受験生であれば当たり前のように知っていることを、初めて学ぶ子どもに対して説明するという問題です。普段、当たり前のように行っている計算も、いざ「計算方法を説明しなさい」と問われると、何をどのように説明すればわかってもらえるのかわからない、と思う人も多いのではないでしょうか。
この問題から2つのメッセージが読み取れます。一つは、「一つひとつの意味について、本質まで踏み込んで考えてほしい」というメッセージです。ただ操作の仕方を覚えてあてはめるのではなく、その操作の意味は何か、どのような仕組みがあるのかと、踏み込んで考えることの大切さを伝えています。当たり前のようにしていることも、いざその意味まで踏み込んで考えることはそれほど簡単なことではありません。当たり前の奥にある本質を意識して学ぶことが大切だよ、という学校の思いを感じます。
そして、もう一つは、「どのように表現すれば相手が受け取れるのかを考えてほしい」というメッセージです。中学受験生は、採点者であるその学校の先生へ向けて、自分の考え方を、答案用紙に書くという手段で表現しています。しかし、この問題では「初めて分数の足し算をする子どもに対して説明してください」と問われています。普段とは違う、“初めて学ぶ子ども”に対する説明だからこそ、まず何から説明すればよいだろう、どのように説明すればよいだろう、と悩んだ受験生も多かったのではないでしょうか。麗澤中では、世界で語れる「ことば」を持とう、というアドミッションポリシーを掲げています。グローバル社会だと言われている現代では、多様な文化、価値観を持った人々とコミュニケーションをとる場面が多くあります。そのような場面で、円滑にコミュニケーションをとる際に必要な力の一つは表現力です。「初めて学ぶ子どもに対する説明」を問うたこの問題は、学校が掲げている理念と結びついた問題であるといえます。
このような理由から、日能研ではこの問題をシカクマルシリーズに選ぶことに致しました。