シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

品川女子学院中等部

2019年04月掲載

品川女子学院中等部の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.自分たちで考え、話し合い、解答を導く

インタビュー3/3

考察は疑問、仮説、検証の「型」にならって思考する

レポートの考察はどのように指導されているのですか。

石渡先生 生物の考察は、疑問、仮説、検証の3つの「型」にはめていきます。例えば花のつくりの観察は、まず疑問に思ったことを挙げて自分なりの仮説を立てます。次に実際に調べて、自分の仮説が正しかったかどうか検証します。調べる中でわかったことも考察に加えます。
疑問点の目の付け所は生徒によって様々です。ユニークな、オリジナリティーがある着眼点は、授業で紹介してみんなで共有します。着眼点がおもしろいのは、よく観察している証拠です。よく観察しているのは、「どうなっているんだろう?」とおもしろがっているからでしょう。「こんなところに気づいたんだ」と感心します。

品川女子学院中等部 図書室

品川女子学院中等部 図書室

iPadの即時共有の利点を授業に活かす

石渡先生 実験後のレポートのやり取りを、Webベースでやることもあります。
本校は中1の6月から1人1台iPadを所有します。教員と生徒の双方にメリットがあるものにはうまく活用したいと思っています。私が積極的に使っているのは、生徒にデジタルツールの使い方の見本を示したいという思いもあります。
レポートはアンケート作成・集計ツールの「Google フォーム」を使って作成。スケッチの撮影・添付にも便利です。授業中に作成したスライドは、その場で集めてみんなで共有します。スライドショーのようにプロジェクターに次々映すと、「これはいいね」など批評しながら盛り上がります。

正解のない問いに向き合い議論する場を設ける

石渡先生 生物は学年が上がると、実生活上の正解がないテーマに向き合うようになります。出生前診断の是非などがそうです。
例えばハロウィンの仮装を入口に、体の“加工”はどこまで許容されるかという議論に発展。カラーコンタクトはほとんどがOKでしたが、ピアスはどうか、タトゥーや美容整形、臓器移植はどうなのか。正解がない問いに意見が分かれました。そうした議論する場をできるだけ設けるようにしています。
正解のない問いの議論は理科以外の知識も必要になります。生物は議論を深掘りしていくと倫理的、哲学的な問いに踏み込むようになり、教科横断的な思考力が鍛えられます。

品川女子学院中等部 掲示物

品川女子学院中等部 掲示物

すぐに話し合いができるのは「品女らしさ」の1つ

前田先生 化学の実験の考察は、班単位の話し合いを中心に考えながら進めるようにしています。教員が説明する場面は特に低学年は少なく、自分たちで考えないと進まないようにしています。化学や物理は正解がある問いを取り上げることが多いので、ヒントを与えると正解にたどり着くことができます。脱線しそうになれば助言しますが、こちらが思うよりも生徒は自分たちで考えて解決できています。

石渡先生 生徒に「話し合って」と言うとすぐにそうできるのは、いろいろな教科で話し合う機会が多いからでしょうね。
教員も、話し合いは活発です。
昨年、教員有志で勉強会を立ち上げました。いろいろな教科の教員30名ほどが集まり、授業事例の紹介やICTの活用、教員としてのマインドなどについて話し合っています。他教科の授業事例を聞くと学ぶことが多く刺激を受けます。指導力のレベルアップにつながればと思っています。

教員の関心ごとを生徒に紹介、学ぶ楽しさを伝える

石渡先生 高1の夏休みに、高2の文理選択や進路選択の参考になればと、有志の教員が興味関心のあることを話す特別講座を設け、昨年は、生物、物理、社会科、国語科の教員が話をしました。
私は高校の教科書ではあまり扱わない生物の行動学や進化学について紹介しました。時間割の教科・科目の枠組みに当てはまらないような内容を心がけています。
勉強は受け身の姿勢では長続きしません。生徒の興味・関心を高め、モチベーションが上がるように、刺激を与えていきたいと思っています。

品川女子学院中等部 制服

品川女子学院中等部 制服

インタビュー3/3

品川女子学院中等部
品川女子学院中等部1925(大正14)年に荏原女子技芸伝習所が開設。戦後、品川中学校・高等学校となる。1990(平成2)年には制服を新しくし、1991年に現校名に。2004年には高校募集を停止し、完全中高一貫体制に移行。受験にも十分対応できるシステムで学力の向上をはかる。創立100周年を迎える2025年には新校舎が完成する。
新校舎は学年ごとにフロアを分けており、廊下が広く、さまざまな活動ができる。
「世界をこころに、能動的に人生を創る日本女性の教養を高め、才能を伸ばし、夢を育てます」というミッションのもと、社会の問題を発見し、多様な人を巻き込みながら解決に向けて一歩踏み出す「起業マインド」を育てる。そして、「28歳になった時に社会で活躍できる女性を育てる」という「28プロジェクト」に取り組んでいる。総合学習での企業訪問や起業体験は、学習への動機付けともなっている。平日の補習・講習と年4回の担任面談で、きめ細かい進路指導をおこなっている。
コミュニケーション能力の育成や、国際社会で活躍するための基礎となる英語能力の育成に力を入れ、英検指導もおこなう。完全中高一貫体制で、独自のシラバスに沿って高2までに無理なく大学進学に対応できる学力を身につけ、高3で進路に応じた選択科目や演習によって実践的学力を養成する。中学では基礎力を鍛えるため、補習や講習もきめ細かい。高校生は20:00まで学校で自習が可能。
国際化教育プログラムも充実しており、海外留学生のうけ入れ、オーストラリア、イギリス、ニュージーランドの姉妹校への留学、中3の修学旅行(ニュージーランド)などで「生きた英語」「異文化」を学ぶ。宿泊行事、合唱祭、文化祭、体育祭、芸術鑑賞、校外学習など行事も多種多彩。茶道・華道・着付けの指導もある。クラブは38あり、バトン、ダンス、吹奏楽部などが部員が多い。利用者の多い図書館の蔵書は42,000冊。