シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

フェリス女学院中学校

2019年04月掲載

フェリス女学院中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.これからの大学入試や社会に対応するには情報を整理する力や適切に発信する力が必要

インタビュー2/2

読解・表現・文法が国語の3本柱

メタ認知(自分自身を客観的に認知する能力)や他者理解を、授業の中でどのように意識していますか。

先生 授業には3つの柱があります。1つは読解。1つは表現。もう1つは文法です。中学1年生の国語にも、国語講読、口語文法、国語作文の授業があります。
「読解」の目当ては虚心坦懐にテキストを読むことです。たとえば夏目漱石の「坊っちゃん」について、「この物語の舞台はどこか」という質問をすると「松山です」と答える人が多いのですが、そんなことはどこにも書かれていません。「四国辺」としか書かれていないのです。あるいは「父親から兄と差別されて育った」と読み取る人がいますすが、きちんと読むと「親父は頑固だけどもそんな依怙贔屓はせぬ男だ」と書いてあります。一方「母は兄許り贔屓にして居た」とも書いてあります。これらの文章から父母への違いを明確に読み取れるわけです。
論理的な読解の第一歩、言葉にこだわるということだと思うのです。そして、論理性というものを自分の中に育てていく「文法」が必要です。同時に感性を養うことも必要です。論説文の言葉には論者の感性があるため、この言葉の裏には何があるのかを考える時に、読み手の感性も必要なのです。

先生 そして、国語の授業の目的は論理力と同時に想像力を育てるところも大きいのではないかと思います。想像を広げるということは、社会生活においても必要なことだからです。社会や他者を想像できないと嫌がることを平気でします。こうしたら社会や他者はどうなるかということを少しでも想像できれば、分別のある行動が取れるのではないでしょうか。想像力を育むということは国語科の大切な使命であると考えています。

フェリス女学院中学校 授業風景

フェリス女学院中学校 授業風景

作文はクラスを2分割して少人数授業を実施

先生 作文の授業にも力を入れていて、中学校1年生ではクラスを2分割して少人数で行っています。情報を整理して適切に発信する力を養いたいのです。
おそらくこれからの大学入試もそうした力を重視するようになっていくと思います。エッセイが重視されている欧米型の思考が入って来て、エッセイの割合が大きくなると思います。

先生 これからポートフォリオなどが本格的に導入されますが、あれは自分でエッセイを構成する力や書く力がなければ大学入試や今後の社会に対応していけないと思います。

先生 つまり「こういう学びをしました」「こういう探求をしました」「部活ではこういう活動をやりました」それだけでは評価されないと思います。これから求められるのは「部活で経験したことが、これからの自分の人生にとってどのような意味があるのか」を伝える力です。

フェリス女学院中学校 双方向の学び

フェリス女学院中学校 双方向の学び

家庭で本を読む環境を豊富に整えてほしい

先生 経験の少ない小学生にとって何が力になるかというと読書です。子どもがもっとも社会に対して目を見開くことができるのが本の世界なのです。実体験をしていなくても、本を読むことによりまさにメタ体験をすることができます。本を読むということは大人になるということなのです。

先生 保護者の方にお願いしたいのは、ご家庭で本を読む環境を豊富に整えてほしいということです。昔は家庭に世界文学全集や百科事典がありました。インターネットの時代になって百科事典は書店から姿を消しましたが、時間のある時に百科事典や文学の名作をめくるのは楽しいものです。そういう意味でいうと、学校の図書館は大切だと思います。ただ、そこで過ごせる時間は限られているので、保護者の方がお子さんと一緒に公共の図書館や書店に足を運んでくださるといいと思います。

先生 私が出版業界に声を大にして言いたいのは「リアルな書店を潰さないでくれ」ということです。私は本屋が好きで、学生時代は暇さえあれば神田の古本屋街を歩いていました。自分の体験上、本が並んでいれば専門分野以外の本も手に取ります。それにより自分が興味を持っている以外のことにも興味を持つのですが、リアルな書店に行くことのない今の学生にはそれがないのです。自分の専門に関する情報収集能力は高いのですが、少し外れると知らないことが多く、これは致命的な弱点と言えます。ですから、例え自分の家に本を置けなくても、本に触れることができる環境を整えることが非常に大切だと思います。

フェリス女学院中学校 図書館の風景

フェリス女学院中学校 図書館の風景

辞書を引くことを大切にしている

先生 私は辞書も大切にしたいと思っています。あやふやな状態で読み飛ばすことなく、わからない言葉があればすぐに辞書を引いて正確な意味を知るということですね。それができていればアウトプットする時に表現の幅がすごく広がると思います。
辞書もやはり紙がいいです。紙の辞書を使えば、引きたい言葉の周りに派生語がたくさん出てくるからです。それが思わぬところで役に立つこともあります。

先生 周辺のものにまで興味を持つことができると、1つの深みになります。今後の大学入試でも自分が求めていたものと違うものを、どれだけ自分の中に蓄えているかが鍵になると思います。

インタビュー2/2

フェリス女学院中学校
フェリス女学院中学校フェリス女学院の教育理念“For Others”は、誰か特定の人によって提案されたものではなく、関東大震災後に、誰が言い出すともなくキャンパスに自ずとかもし出され、フェリス女学院のモットーとして自然に定着したものだということです。フェリス女学院では、“For Others”という聖書の教えのもと、「キリスト教信仰」・「学問の尊重」・「まことの自由の追求」を大切にしています。そして、生徒一人ひとりが、6年間の一貫教育を通して、しなやかな心を育み、つねに与えることができる、“For Others”の精神を持った者へと成長することをめざしています。校章には、盾に創設時の校名Ferris SeminaryのFとSの二文字がデザインされています。盾は外部の嵐から守る信仰の力を表し(「エフェソの信徒への手紙」6章16節)、白・黄・赤の三色は信仰、希望、愛(「コリントの信徒への手紙一」13章13節)を表しています。
外国人墓地や歴史的な建造物の多い異国情緒あふれる地域にある、落ち着いた雰囲気の学校です。創立者メアリー・E・ギターがこの地に開学して以来の歴史が、校舎を包む木々などから感じられます。2000年の創立130周年において新校舎建築となり、2014年には新体育館、2015年夏には新2号館が完成しました。中高の図書館には、図書・視聴覚資料・雑誌・新聞などの94,000点を超える資料があります。授業の課題制作や調べものや自習のほか、昼休みや放課後にも多くの生徒が利用しています。書庫は開架式で、図書を手に取って自由に選ぶことができます。
クラブ活動がたいへん盛んで、同好会、有志も合わせると約60近い団体が活動しています。中学生では、ほぼ100%の生徒がクラブに参加しています。ほとんどのクラブが中1から高2まで一緒になって活動し、同学年だけでなく、先輩・後輩という他学年との人間関係が築かれています。中3からは、クラブ以外でも、気のあった仲間同士で同好会や有志を結成して文化祭に参加するなどの活動もあります。