出題校にインタビュー!
フェリス女学院中学校
2019年04月掲載
フェリス女学院中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.文章を正しく読んできちんと理解すること。それは他者理解にも通じる大切な力
インタビュー1/2
深みのある文章を選んだ
出題意図からお話しください。
先生 本校の国語科が大切にしているのは、文章を正しく読んできちんと理解するということです。この問題も、岡田暁生という人の文章をただ単に情報としてインプットするだけでなく、しっかり咀嚼し、そこに書かれている複数の情報をもとに主体的な考えを作って、それを自分の言葉で表現する力を問うています。
問題文には大人同士でも話題にできるような、読み応えのある文章が多いと思いますが、素材選びで意識されていることを教えてください。
先生 入試とはいえ受験生に読んでもらう文章なので、深みのある文章を選ばなければいけないと思っています。深みのある文章とは、読むだけでなく考えなければ理解できない文章という意味です。現在進行中の高大接続改革でも正解が一つではない、あるいは正解のない課題に立ち向かう力が求められています。それともつながりますが、読めば一つの方向性が見える文章ではなくて、考えなければ方向性が見えてこない文章を選ぶようにしています。
ただ、特定の傾向の文章を出題しているわけではありません。受験生には広くいろいろな本を読んで欲しいと思っています。
選択問題の選択肢も、読んだだけでは選べないくらい精密に作られていますよね。
先生 問題を作るということは、こちらがその文章をどう読んでいるかということを問われているのと同じです。作家の野上弥生子さんがインタビューされた際に、アナウンサーにこう言いました。「あなたね、質問するということは答えるということなのよ」と。つまり質問そのものに質問する側の思想や考え方などが表明されるので、我々もそこに緊張感を持たなければいけないと思っています。

フェリス女学院中学校 校舎
新鮮な感性を大切にしたい
今回の問題文では筆者の意見が新鮮でした。子どもたちも良い点、悪い点を考えたことがなかったのではないでしょうか。
先生 問題文の中に着信メロディの話が出てきます。音楽を中断することへのためらいというのが、すごく新鮮な視点だったのではないかと思います。
ただ、作者の主張を探るよりも、自分がこの文章から何を読み取ったのかが大切です。もちろん作者の意図は大切で、そこから離れて読むことはできませんが、それに縛られてしまってはおもしろくありません。最近の文学受容理論は「作者の意図が絶対なのではなくて、読者が意味を持ち寄ることのほうが大切だ」とされています。その通りであり、我々は新鮮な感性を大切にしたいと思っています。
問いたかったのは多角的な見方ができるかということ
なぜ、良い点、悪い点を聞いたのですか。
先生 複数の視点を持つ(偏らない見方をする)ということがとても大切だからです。自分が良いと思うものだけでなく、他人が良いと思うものも受け入れた上で、自分の意見を持つということです。大学入学共通テストのプレテストの国語の問題にも記述問題が出てきますが、必要とされているのは雑多な情報の中から取捨選択をして、複数の情報を統合する力です。

フェリス女学院中学校 登校風景
対話を理解できる力を身につけよう
先生 良い点、悪い点をあげるということは、どれだけ他人の立場に立てるかということにつながるのではないかと思います。ディベートでもディスカッションでも、相手の主張を理解できなければ単なる言葉の応酬になってしまいます。どれだけその人を理解できるかということは、どれだけその人の立場に立てるかということ。こじつけかもしれませんが、本校の理念「For Others」はそういうことだと思うのです。
今はセンター試験をはじめさまざまな試験で対話の問題が出題されます。今年の京都大学の入試問題でも大岡信と谷川俊太郎の対話の一部が問題文に出題されました。対話は片方だけの理解では成り立ちません。Aさん、Bさん、両方の主張を理解できなければ対話を理解できないのです。つまり普段の生活の中でも人の話をよく聞いて、多角的なものの見方ができる。そういう力を養うことが、高大接続改革の中でも必要になるのではないかと思います。
考えているかどうかが採点基準の1つ
採点の基準を教えてください。
先生 詳しいことはお話しできませんが、1つ言えることは、自分の頭で考えているかどうかです。いろいろな要素があると思いますが、きちんと考えていれば文章に表れると思います。
耳から情報を得られる時代です。自分で考えなくても文章を書けてしまうので、小学生を教えていて、ここ10年くらい真摯に文章を書く子が減っているように思うのですが。
先生 それは世の中全体の傾向だと思います。他校の先生方からも同じようなことを聞きます。自分で考えなくても、いろいろなところから言葉を取って来てパッチワークのようにつなぎ合わせれば文章を書けてしまうので、小・中学生に限らず、大学の卒論や学会などの研究発表にも「あなたの主張は?」と聞きたくなる論文が増えています。

フェリス女学院中学校 礼拝
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