シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

大宮開成中学校

2019年03月掲載

大宮開成中学校【社会】

2019年 大宮開成中学校入試問題より

(問)飢餓と貧困をなくすことを使命とする国連の世界食糧計画(WFP)によると、世界では9人に1人が飢餓に苦しんでいます。また、5歳未満で亡くなる子どものうち、約半数は栄養不良が関係しています。
もしあなたが国連の食糧問題の担当者だとしたら、日本の中学生に対してどのような活動をしますか。50字以内で書きなさい。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この大宮開成中学校の社会の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

例1:途上国の小規模農家には飢餓で苦しむ人も多いことを伝え、支援方法としてフェアトレード運動を紹介する。(49文字)

例2:日本から出る大量の食品ロスやその原因を伝え、食品ロス削減のために自分ができる取り組みを考えてもらう。(50文字)

解説

飢餓に苦しむ人を減らし、世界中のすべての人が十分かつ適切な食糧を手に入れられる状態をつくるためには、大きく2つのアプローチがあります。1つは、飢餓が起こっている国や地域を支援する方法です。そしてもう1つは、飽食で大量の食品ロスを生んでいる自分たちの社会を見直すことで、世界の食糧配分のバランスを変えていく方法です。アプローチの方向性を決めたら、そのための具体的な活動を考えましょう。

日能研がこの問題を選んだ理由

食糧問題は、2019年の中学入試でたびたび取り上げられていたテーマのひとつです。そのなかでも、この大宮開成中の問題は、受験生が考えやすいようにステップを踏んでいる点と、問題に込められているメッセージが印象的でした。

問題の前半は、世界では9人に1人が飢餓に苦しんでいることや、5歳未満でなくなる子どもの約半数が栄養不良であることが書かれています。この問題文を読んだ受験生には、「世界全体でみると、飢餓は決してめずらしいことではないのだ」という危機意識が芽生えたことでしょう。飢餓の深刻さを知ることは、解決すべき食糧問題を具体的に想像する際の手助けになります。言い換えると、「国連の食糧問題の担当者」という未知の立場に、受験生が自分自身を置くためのステップになっているともいえます。

こうしてマインドセットを終えた受験生は、いよいよ食糧問題を解決するために活動内容を考えます。そこでカギとなるのは、活動の対象が「日本の中学生」ということです。一見、飢餓とはあまり関係がなさそうな日本の中学生に対して、どのような活動をすれば、飢餓への関心を高めたり、自主的に問題を解決する姿勢を育んだりできるのか。自分の外側にあると思われがちな問題を、自分ごととして引き寄せるチカラが求められます。

今、世界が抱える問題の多くは、一部の国や地域だけのものではなく、世界各国が互いに協力し合わないと解決できないものへと変化しています。そのため、国家間で協力体制を築くことはもちろん、同じ地球にくらす一人ひとりの意識も大切になっています。「国連の食糧問題の担当者」という設定には、これからの国際社会を生きる一人として、当事者意識を持ちながら、世界の問題にかかわり続けてもらいたいという学校のメッセージが込められているのではないでしょうか。

以上の理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことに致しました。

SDGs17のゴールとのつながりについて

  • 18 SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS
  • 1 貧困をなくそう
  • 2 飢餓をゼロに
  • 3 すべての人に健康と福祉を
  • 12 つくる責任 つかう責任

「なったことのない人(国連の食糧問題の担当者)」になって、「なったことのない人(日本の中学生)」へ向けての施策を考える——この入試問題では、他者の立場に立って、多角的なアプローチを考えるチカラが問われています。
さあ、どんな活動をすれば、少しでも問題解決に近づくことができるでしょうか?「飢餓の状態を知らせる」「具体的に援助する方法を伝える」「日本で起こっている食品ロスについて啓蒙する」などなど。この問題で求められるアクションプランを考えることは、SDGs(持続可能な開発目標)の目標1「あらゆる場所あらゆる形態の貧困を終わらせる」や、目標2「飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養の改善を実現し、持続可能な農業を促進する」、目標3「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する」、目標12「持続可能な消費生産形態を確保する」などにもつながっていくでしょう。

私学とSDGsのつながりについて詳しくはこちらから

日能研は、SDGs をツールとして使い、私学の活動と入試問題に光を当てた冊子をつくりました。
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