シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

市川中学校

2019年03月掲載

市川中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.SSH(スーパーサイエンスハイスクール)としての数学科の取り組み状況について

インタビュー3/3

数学より理科の方が人気??

SSH(スーパーサイエンスハイスクール)も入っていますが、数学科とSSHとの関係はいかがでしょうか?

秋葉先生 SSHとしても数学の課題研究を設置しているので、数学科も課題研究の時間には参入して指導しています。ただし数学を選択する生徒は10人前後と、少々寂しい状況です。ほかの学校も同じように苦労されていると伺っています。

理科のほうでは実験を日ごろからやっているので、研究が何なのか特にわからなくても実験すれば研究できるというのが生徒の中にもあるようです。ところが、数学に関しては問題集を解くことが数学だと思っている生徒も多いので、数学を研究すると言われても何をしたらいいのか想像しづらいのではないかと思いますね。

具体的にはどんな研究をしていくのですか?

秋葉先生 分野はそれぞれバラバラですし、グループを作って活動をするということは数学ではあまりないため、個人で興味ある問題を見つけてきて、1年かけて取り組んでいくという感じです。教員側も「これをやりなさい」と提示することはしません。中にはネタが決まるまで半年ぐらいかかる子もいます。

具体的には、先行研究の論文を渡して読ませたりしながら、わかっていることは何なのか?わからなくて自分がチャレンジしたいものは何なのか?をはっきりさせて取り組ませていきます。取り組んでいる題材は、整数論もあれば幾何、統計と、生徒によって取り組むものはいろいろですね。

そのような生徒の進路はどのようになっているのでしょう?

秋葉先生 彼らの中で、数学科を進学先に選んで行こうとする子はほとんどいません。やはり多くは化学、物理、生物に進んで行きますから、年間2~3人いればいいレベルです。数学が好きでも物理系に行ってしまう子は多いですね。

市川中学校 自習室

市川中学校 自習室

物事の基本を理解することが重要

最後に小学生の間にどのように過ごしていったらよいかについて教えていただけますか?

秋葉先生 この質問は非常に難しいのですが、数学科としてこのような算数や数学を学んでほしいと思うことに、我々としては伸びしろがある状態でこの学校に入ってきてほしいなという希望があります。限界までやってきてしまい、すでに伸びしろがない形で入ってきても、その後伸びることはありません。そのためには物事の基本を理解してもらいたいです。

そのような基本の理解や判断する力は、普段どのようなことをしていると身に付くものでしょうか?

秋葉先生 よく生徒には「わからないことを楽しんで」と言います。普通はわからないから嫌になると思うのですが、わからないから勉強するわけです。物事に疑問に持ったり、わからないことがスタートになったりするので、それは大事にしてほしいと思います。できるものばかりやらないでほしいですね。

原口先生 私は、わかっていることを別の角度から見る、というのを小学校の時にやってほしいなと思います。グループワークは小学校でもやっていると思うのですが、自分はこのように思っているのだけれど、他の人はこのように思っている。そんな時に「そっちでも本当にできるの?」という感覚はこの先も非常に役に立つと思います。

もちろん中学でもグループワークはやりますし、違う意見から見いだせることもたくさんあります。一人の視点からだけでは難しいものも、複数の視点で見ているから出てくるものもあると思いますので、そういうものをいきなり中学生になってからやろう、と言われてもなかなか厳しいでしょう。でも小学生の時にその感覚を養ってもらったとしたら、その力はすごく役に立つと思います。他の人の意見が自分と違っていてもいいので、自分と違うからこそ、そこから得られるものがあるんだ、とぜひ知ってもらいたいですね。

市川中学校 コミュニティープラザ

市川中学校 コミュニティープラザ

インタビュー3/3

市川中学校
市川中学校1937(昭和12)年、市川中学校として開校。47年、学制改革により新制市川中学校となる。翌年には市川高等学校を設置。2003(平成15)年には中学で女子の募集を開始し、共学校として新たにスタート。同時に新校舎も完成させた。女子の1期生が高校へ進学する06年には高校でも女子の募集を開始。昨年4月には校舎の隣に新グラウンドが完成。2017年には創立80周年を迎えます。
創立以来、本来、人間とはかけがえのないものだという価値観「独自無双の人間観」、一人ひとりの個性を発掘し、それを存分に伸ばす「よく見れば精神」、親・学校以外に自分自身による教育を重視する「第三教育」を3本柱とする教育方針のもとで、真の学力・教養力・人間力・サイエンス力・グローバル力の向上に努めている。
効率よく、密度の濃い独自のカリキュラムで、先取り学習を行っていく。朝の10分間読書や朝7時から開館し、12万蔵書がある第三教育センター(図書館)の利用などの取り組みが連携し、総合して高い学力が身につくよう指導している。中学の総合学習はネイティブ教師の英会話授業。2009年度より、SSH(スーパーサイエンスハイスクール)指定校となる。授業は6日制で、中1、中2の英語7時間、中3数学7時間など主要科目の時間数を増やす。ほかに夏期講習もあり、中1・中2は英・数・国総合型講習を実施。高校では、高2で理文分けし、高3ではさらに細かく選択科目等でコースに分かれて学ぶ。授業の特徴としては、インプット型の学習で基礎力を育成するともに、SSHの取り組みとして、研究発表、英語プレゼンなどを行う「市川サイエンス」、対話型のセミナーである「市川アカデメイア」、文系選択ゼミの「リベラルアーツゼミ」といった発表重視のアウトプット型の授業展開を実施している。自らの考えを相手に伝える表現力を、論理的に考え、それを伝わりやすい文章で表現するスキルとしてアカデミック・ライティングといい、「読めて、書ける」を目指し「課題を設定する力」、「情報を正確に受け取る力」、「それを解釈・分析する力」、「自分の考えをまとめ・伝える力」を育てる。
高1の各クラスごとに3泊するクラス入寮は創立当時から続く伝統行事。クラブは中高合同で活動する。行事は体育祭、文化祭のほか、自然観察会、合唱祭、ボキャブラリーコンテストなどもある。夏休みには中1、中2で夏期学校も実施。中3でシンガポールへの修学旅行を実施。また、希望者を対象にカナダ海外研修(中3)、イギリス海外研修(ケンブリッジ大学、オックスフォード大学中3・高1)、ニュージーランド海外研修(中3・高1)、アメリカ海外研修(ボストン・ダートマス高1・高2)が実施されている。生徒のふれあいを大切にしているが、カウンセラー制度も設けて生徒を支えている。