シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

市川中学校

2019年03月掲載

市川中学校【算数】

2019年 市川中学校入試問題より

太郎くんの通っている学校からは、白か黒のどちらか一色で塗(ぬ)られたビルとタワーがたくさん見えました。いま、ビルとタワーについて次の3つの情報がわかっています。

  • 高さが50m以下であるものはすべてビルです。
  • 白いタワーは1つもありません。
  • ビルとタワーは少なくとも1つずつあります。

このとき、次の問いに答えなさい。

(問)下の(a)~(f)のうち、3つの情報全部にあてはまるものをすべて選び、記号で答えなさい。

問題文 図1

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この市川中学校の算数の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

(c)、(f)

解説

3つの情報と4種類の建物をもとにして、考えられることを整理します。

情報1 高さが50m以下であるものはすべてビルです。
この情報から、高さが50m以下のタワーはないことがわかります。
ただし、この情報を読んで、「高さが50mより高いものはすべてタワーである。」と判断することはまちがいです。この情報は、高さが50mより高いビルについては言及していません。
情報2 白いタワーは1つもありません。
この情報から、見えた建物の中には、下の図のようなものはなかったことがわかります。
解説 図1
よって、見えた建物は「白いビル」「黒いビル」「黒いタワー」の3種類とわかります。
解説 図2
情報3 ビルとタワーは少なくとも1つずつあります。
この情報から、「すべてビルである。」「すべてタワーである。」ということはなかったとわかります。

以上の情報をもとにして、改めて(a)~(f)の図を見たときに、それぞれの情報を満たしているかどうかを考えます。

解説 図3

これより、3つの情報全部にあてはまるものは(c)と(f)に決まります。

日能研がこの問題を選んだ理由

「3つの情報全部にあてはまるもの」ということから、情報と矛盾するものがあるかどうかを調べることが第一歩となるでしょう。調べるにあたって、書かれている情報を、そのまま文字通りにとらえるだけでなく、「ということは…」と自ら言い換えることで、情報に広がりを持たせることが必要になっていきます。しかし、言い換えるためには、もとの文の意味を正確に読み取る必要があります。

たとえば、「高さが50m以下であるものはすべてビルです。」という情報を、『高さが50mより高いものはすべてタワーである。』と言い換えたとすると、この言い換えは、正しくありません。もとの情報からは、高さが50mより高いビルがあるかどうかはわからないからです。このように、情報を言い換えるときには、常に論理性がつきまといます。

また、情報を読む、言い換える、図を確かめて「この図は、この情報を満たさない。」と根拠を持って判断・決定する、といった一連の流れからも、論理的に物事をとらえることに焦点を当てているように思われます。

正確に読み取る力や根拠を持って判断する力は、算数・数学における論理的思考と強く結びついていて、さらに国語的な要素も持ち合わせているといえます。このことは、今後、子ども達がさまざまな未知の課題や困難に出会ったときに、今までに学んだことがらを、科目を超えて使い、自分自身で乗り越える術とも直結しているといえるでしょう。

このような理由から、日能研ではこの問題をシカクマルシリーズに選ぶことに致しました。