出題校にインタビュー!
実践女子学園中学校
2019年02月掲載
実践女子学園中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
3.レポート作成を通して記述力を鍛える
インタビュー3/3
実験レポートは論文形式に準じて一から書く
入学後はどのように記述力を鍛えているのですか。
西崎先生 実験のレポートを課して鍛えています。穴埋め式ではなく一から自分で書きます。実験の1週間後が締め切りです。
レポートは予め教えた評価基準に沿って書きます。指導後は記述力が格段に上がります。
髙橋先生 評価基準は、学習達成目標を段階別に具体的に表わした「ルーブリック評価表」に提示しています。なぜこの実験器具を使うのか、なぜこの順番で操作するのかというようなことを、自分で考え、自分の言葉で表現します。
レポートの書式は、要旨以外は論文に則った構成です。タイトル、目的、方法、結果、考察、そして参考文献も載せます。どれか一つでも不十分があると評価が変わります。
また、レポートは根拠のある理論的な説明を求めています。知識の羅列ではなく理屈を添えます。問題集の解答を丸暗記したのでは理屈がわかっていないため、表面的な表現になりがちです。「丸暗記はやめよう」と口を酸っぱくして言っています。
西崎先生 さらに、グラフをかいて変化したところを分析するなどの発展課題も出します。
髙橋先生 定期試験にも文章記述問題を出します。完全解答できないと生徒は「どこが足りないのですか」と聞いてきます。「次はちゃんと書けるようになりたい」と思うようです。
生徒と教員のやり取りは中1から活発です。やり取りする中で考えが整理されるので、グループで話し合う時間も設けています。
理科・広報部副部長/高橋 良子先生
実験は結果よりも失敗した理由を考察することが大事
西崎先生 実験中に予想と結果があまりにも違うと、自らやり直す生徒が増えてきました。ただ漫然と実験をこなすのではなく、考えながらやっているとわかります。
実験に失敗はつきものですが、失敗したあとの生徒さんの様子はどうですか。
髙橋先生 「正解」をきちんと残したいのか、予想通りにならないと「失敗」を隠そうとします。予想通りの結果を出すことにこだわりすぎないこと。なぜ予想と違ったのかを考察することが大事です。
普段の授業とは違う活動ができる中3「理科ゼミ」
西崎先生 中3の「理科ゼミ」は、普段の授業ではできないような活動を、毎週土曜日の放課後に、1年間実施しています。希望制で今年度は28名が参加。多い年度で40名程度のときもあります。
外部の出前実験は各グループに講師が1名つきます。例えば、電気泳動実験によるDNA鑑定など3つの実験結果から“犯人さがし”をしました。
私が主催した実験は、火打ち石を使って火をおこしました。どう使えば火をおこせるか、ヒントを出しながら生徒たち自身で考えてもらいました。
金川先生 火花だけでは火をおこせないと気づくと、どうやって火をおこすか、用意されたいろいろな材料の中から自分たちで選んで試しました。予定時間(2時間)をオーバーしても夢中になってやっていましたね。
西崎先生 自分たちで考えて試行錯誤した結果、最後に火をおこすことができたときは感激していました。こうした活動を通して科学への興味・関心を喚起できればと思います。
実践女子学園中学校 理科実験室
現地に赴き生物多様性を学ぶ「沖縄自然体験教室」
西崎先生 理科ゼミの一環が、夏休みに実施する「沖縄自然体験教室」です。今年度で2回目、十数名が参加しました。
テーマは、沖縄らしい自然を観察して生物の多様性・生態系を学ぶことです。サンゴ移植、イノー観察(磯観察)、シュノーケリングを通して沖縄の海を体感し、指導員のワークショップを受けて自然環境への理解を深める3日間のプログラムです。
事前に同じ遠浅の東京湾の生物多様性を調べて、東京湾と沖縄の海の共通点・相違点を見つけます。生徒は「知りたい」という気持ちが強くなり、前のめりで学ぼうとする姿勢を見せていました。
実際にその場に足を運ぶからこそ気づくことがあります。生徒には広い視野を持ってもらいたいと思っています。
解剖でも「かわいい」「きれい」には興味津々
髙橋先生 実験は、6つある理科実験室(うち1室はメディア機能を持つ多目的室)をフル稼働させて、できるだけ取り入れるようにしています。中1は週3時間ですが、化学の授業は少なくとも週1回は実験を行っています。
本校では4分野を学ぶのは中2まで、中3は高校の内容を先取りして、化学と生物が各2時間になります。中3の実験は生徒が自分でできる内容が少なく演示実験が中心になりますが、高校ではまた自分たちで実験するようになります。
金川先生 高1の生物基礎では4人1組でブタの腎臓を解剖します。高2の理系クラスはブタの目も解剖します。できるだけ自分たちで手を動かして実物を見てもらうようにしています。
ブタの腎臓の解剖は、始めは嫌がって遠巻きに見ていた生徒も、最後は指でつついていましたから、案外、大丈夫なようです。
ブタの目の解剖も「どうしてもダメ」という生徒はこれまで2人くらいです。まぶた、筋肉、脂肪組織などが付いたまま渡すため始めは騒がしいのですが、眼球だけを取り出すとコロンとした丸さが「かわいい」と興味を示します。透明の水晶体を取り出したときには、「きれい!」と喜びます。
「かわいい」というのは女子らしい感想ですね。見た目が印象的だと食いつきがよさそうですね。
金川先生 解剖が終わると、「おもしろかった」「目のつくりがよくわかった」など、やってよかったと言ってくれました。
実践女子学園中学校 理科実験室
理科で学んだことは実生活に役立つ知恵となる
6年間どんなことを学んで卒業してもらいたいと思っていますか。
西崎先生 理科で身につけた方法論を実生活にも生かせるように、自分で考え判断できる力を養いたいと思います。先の見通しが立ちにくい現代は的確な判断力が一層求められますから、理科の学びを通して鍛えたいですね。
金川先生 進学先によっては理科の勉強が高校までの生徒もいますが、日常生活は自然現象にあふれています。現象を目にしたときに「そういえば、こんなことを習ったっけ」と思い出したり、実生活に役立ててもらえるといいなと思っています。
髙橋先生 卒業して「勉強しないから関係ない」と思ってほしくありません。そのためにも、実験ではなるべく身近な題材を取り上げて実生活と結びつけるように心がけています。私たちの生活の根底に科学があることを忘れないでほしいですね。
インタビュー3/3