シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

実践女子学園中学校

2019年02月掲載

実践女子学園中学校【理科】

2018年 実践女子学園中学校入試問題より

現在の地球には、名前がついているだけでも約100万種類のこん虫がいます。私たちの身の回りにも多くの種類のこん虫が存在しており、農業面や工業面などのさまざまな場面において、役立っています。

下線部について、農作業にこん虫を利用することにより、農作業の効率化を図っています。このことについて、各問いに答えなさい。

(問1)イチゴを栽培(さいばい)しているビニールハウスでは、その中にミツバチを放しがいにしているところがあります。何のためにミツバチを放しているのですか。その理由を答えなさい。

(問2)問1のように、こん虫を放しているビニールハウスでは、害虫であるアブラムシを取り除くときに殺虫剤(ざい)を使用すると、利用しているこん虫自体が死んでしまうなどの悪い影響が出てしまいます。害虫であるアブラムシを取り除くためには、どのようにすればいいと思いますか。あなたの考えを1つ書きなさい。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この実践女子学園中学校の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

(1)ミツバチがイチゴの花粉を集めることによって、イチゴが受粉し、効率よくイチゴの実をつけることができる。

(2)テントウムシをビニールハウス内に放つことで、害虫のアブラムシをテントウムシが食べ、アブラムシを取り除くことができる。また、テントウムシは植物や他のこん虫を食べることがないので、他に悪影響が出ない。

解説

(1)ミツバチは、花から蜜を集めて生活するこん虫です。ミツバチが花から蜜を集めるときには、花のおしべの花粉がめしべにつくため、花は受粉することができ、実ができます。このように、ミツバチを利用することによって、人が手を加えるよりも、効率よく花を受粉させることができるため、イチゴに実をたくさん実らせることができます。

(2)ナナホシテントウは幼虫も成虫もアブラムシを食べるこん虫です。このため、ビニールハウス内にナナホシテントウを放し、ナナホシテントウがアブラムシを食べることによって、アブラムシを取り除くことができます。さらに、アブラムシしか食べないナナホシテントウは、栽培している植物や、利用しているこん虫を食べることが無いので、悪い影響が出ないと考えることができます。

日能研がこの問題を選んだ理由

生物を農業面に役立てることについて考える問題です。子どもがテキストや教科書で目を向ける現象と、現在、世間で注目されている方法を結び付けていきます。その過程において、地球環境にまで結び付けることによって、学びの世界が、教科書から世界へと広がっていきます。

日能研では、問題が刺激となり、既知の枠を超えて、未知の内容へと考えを進めていくことや、その場で試行錯誤しながら、見慣れていないものと見慣れたものを結び付けていく過程を楽しむことが大切だと考えています。このような理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことに致しました。

SDGs17のゴールとのつながりについて

  • 18 SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS
  • 12 つくる責任 つかう責任
  • 15 陸の豊かさも守ろう
  • 14 海を豊かさを守ろう

学んだ知識と、現実社会の一場面との結びつきを考えたことはありますか?
農作物を食べるのが害虫、その害虫を食べる虫を「天敵昆虫」と呼んでいます。これは理科で学習する知識ですが、これを利用した農業が実際にあるのです。通常、多くの農家では、害虫を防除するには化学農薬を撒くのですが、害虫に薬が効かなくなってきます。また、農家にとって、薬を撒くことは重労働で大変です。健康被害の可能性もまったくゼロではありません。そこで、農薬の代わりに、この虫を食べる虫で害虫を退治しようという取り組みが、入試問題のテーマになっています。

「農薬を使わずに、天敵昆虫によって農作物を守る」施策は、「農薬=化学物質を使用しない」「生物のチカラ=生態系を利用する」という点で、「SDGs(持続可能な開発目標)の目標12「持続可能な消費生産形態を確保する」や、目標15「陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する」、目標14「持続可能な開発のために、海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」などへのつながりが見て取れます。

私学とSDGsのつながりについて詳しくはこちらから

日能研は、SDGs をツールとして使い、私学の活動と入試問題に光を当てた冊子をつくりました。
詳しくはこちらから