シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

横浜女学院中学校

2019年02月掲載

横浜女学院中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.国語ではツールとしての日本語を学ぶ時間が増えていく方向

インタビュー2/3

使うための日本語と知性と感性を培うための国語を学ぶ

入学後の授業について教えてください

吉田先生 ツールとして使うための日本語と、知性と感性を培うための国語。その2つを教えなければいけないと思っています。普通に授業をすると国語に傾きますが、ツールとしても使わなければいけないと思うので、人の表現を聞く、読む、自分の表現をする(話す、書く)。その両方をやっています。具体的には教科書を読むだけでなく、協働して学ぶことを意識的に増やしています。

学年が上がるにつれてできるようにしていることと言えば「論理スピーチ」です。英語でよく行うプログラムなのですが、高3では1つの評論文を読んだ後に、テーマに基づく意見をこちらで1つ用意して、それに賛成か反対か、その理由も含めて2人組で話をさせるということを行っています。そこでも必ず例を挙げて考えを述べるルールを作っています。

「論理スピーチ」に必要な力を養うために、中1の段階ではどんなことから始めるのですか。

吉田先生 テーマを与え、調べる時間や原稿を書く時間を設けて、最終的にプレゼンまで持っていくというようなことをしています。プレゼンを行う場合は、スピーチの内容を原稿にまとめて覚えなければいけません。そういう準備の時間を、学年が上がるごとに少なくしていくというイメージですね。

横浜女学院中学校 体育館

横浜女学院中学校 体育館

ESDでの学びにより明らかに評論は読みやすくなっている

取り組みに対する生徒さんの反応はいかがですか。

吉田先生 中学生まではスピーチしやすいのですが、高校生になるとスピーチしづらくなる傾向が見られます。高2あたりから評論文が急に抽象的になるので、身近なことや自分の知っていることと結びつけ、例をあげることが難しいのです。

本校では2016年からESD(Education for Sustainable Developmentの略:一人ひとりが、世界の人々や将来世代、環境との関係性の中で生きていることを認識し行動を変革するための教育)に取り組んでいます。現在の高3は、私が以前担当した高3よりも人権を守ることや、弱者を救済することが大事であることをESDを通してわかっているので、当時の高3と比べると評論文の背景にある価値は理解しやすくなっていると思います。そのため、評論文を読む力は明らかに向上していると思いますが、一方で高2、高3は例を挙げることに手こずっています。

横浜女学院中学校 掲示物(ESD報告会)

横浜女学院中学校 掲示物(ESD報告会)

評論文攻略のために地歴公民との連携を模索

何か手立てを講じているのですか。

吉田先生 私は今、「論理スピーチ」を扱っていて民主主義や資本主義を自分事として捉えられない子が多いように感じています。例えば筆者が、民主主義とはどういうものかをわかっている前提で書いていると、文章をしっかりと理解できず、例が浮かばないということがよく起きます。そこで自分事にすることと、いろいろなことにつなげて考えることをキーワードに、地歴公民の先生方とお互いに理解し合いながら進めていくことを考えています。

例えば民主主義をテーマにした評論文を扱う時に、地歴公民と連携が取れていれば、生徒に「授業でやっているよね」と話すことができます。やっていなければこちらで補うこともできますし、あらかじめ社会科にインプットしておいてもらうこともできます。

単に国語が得意というだけでは、評論文のハードルを超えられないということですね。

吉田先生 そうです。本を読むことが好きと言っても物語が多いと、民主主義や資本主義のような話になると全く例が出てこない子が多いです。問題集を一生懸命やっても、そこはクリアされる問題ではないので、もう少し意識的に、学校でインプットさせなければいけないところだと思います。

社会科とのコラボは始まっているのですか。

吉田先生 クロス授業という考え方は3年くらい前から持っていましたが、今、改めて連携の必要性を感じて動き出したところです。

他教科と連携し、評論のテーマに関係のある事柄を深掘りする

社会科以外との連携も考えていますか。

吉田先生 民主主義を例に出しましたが、理科的な内容も理解していないと評論は読めません。そこは何らかの形でやっていかなければいけないと思います。
さらに連携を広げて、職員室では他教科の先生に「これってどうなの?」と話しかけています。

英語科とは評論のテーマが重なることがあります。例えば「英語の評論でAIは出てる?」「出てるよ」とか。「シンギュラリティ(技術的特異点)を教えた?」「まだ教えてない」「だったら国語でやるね」というような会話を、意識して増やしているところです。

横浜女学院中学校 職員室

横浜女学院中学校 職員室

ESDに取り組み大学で学びたいことが鮮明になってきた

志望理由や小論文で評価される大学の推薦入試でも、威力を発揮したのでは ありませんか。

佐々木先生 成果につながったかどうかはわかりませんが、書く材料には困らないですよね。目的を持ってESDに取り組んでいるので、生徒たちは書きやすいと思います。「高校時代にESDに取り組んで来てこういう関心を持ったので大学でこういう学びがしたい」ということが書けます。それは今までと大きく異なるところです。

吉田先生 もともと海外セミナーに力を入れていたので、国際系に進みたい子は多いんですよね。以前は「海外セミナーで海外に行った」という程度の理由づけでしたが、今は「多文化と関わるとこういう問題がある。だからこういうことについてもっと詳しく知りたい、解決策を知りたいと思った」などというところまで書けるようになりました。こちらが手を入れる前にそこまで書けるようになったので、手応えを感じています。

大学入試の国語は英語の入試と似通う?

大学入試センターが行った試行調査についてはどのような見解をお持ちですか。

吉田先生 ツールとしての日本語の部分が多くなりましたね。私は国語ではなくなっていくのだなと思いました。日本語的だと思います。日本語のテストになっていくようなイメージを持ちました。

実用的な?

吉田先生 そうです。国語的な文章は国語の授業がなければ読まないと思います。放っておいたらやらないことをやらせるのが学校だと思うので、もっとたくさん国語をやりたいというのが本音です。

著作権の問題などを見て、読み方が変わるような気がしました。先生方からご覧になって、どのような印象をお持ちですか。

吉田先生 英語の入試によく似てると思いました。英語はまさにツールなので、読み方は変わると思います。英語の教員と話すと、同じような問題が出ていると言っていました。英語はツールなので、きちんと伝えるなど、ツールとして使いこなす力が必要になると思います。

横浜女学院中学校 図書室

横浜女学院中学校 図書室

インタビュー2/3

横浜女学院中学校
横浜女学院中学校日本プロテスタント発祥の地、横浜山手の丘でキリスト教の教えを柱に校訓「愛と誠」の女子教育による人間教育を実践している。変化の激しい社会に対応ができる力を身につけるために「神様と人に愛されている存在として、自己受容力を高め、多角的かつグローバルな視野をもち、社会貢献を果たすことができる生徒の育成を目指し、「自らを知る」「隣人を知る」「世の中を知る」「自ら行動する」「隣人を愛する」「世の中に働きかける」の6領域とこれらを具体的に実践するための12コンピテンシーを設定し、すべての教育活動を実践している。
コンピテンシーとコンテンツを効果的に結び付けて学力を高めるために2022年度より1時間の授業を65分授業としている。月曜日から金曜日までは5時間、土曜日は3時間(国際教養クラスは4時間)の週6日制を実施。国際教養クラスでは、実際のグローバルトピックにアプローチするCLIL(内容言語統合型学習)を中学3年生より実践し、さまざまなテーマについて教科を横断して学び、「英語で」考える力を身につけている。また、第二学国語(中国・ドイツ・スペイン)も必修とし、言語を通じて文化に触れ、世界への視野を広げるチャンスとなっている。
学校行事や部活動においては、生徒が自ら進んでチャレンジしていく時間となっている。部活動は希望制だが多くの生徒が入部をしている。全国大会で上位入賞するチアリーディング部を始め、ダンス部やバドミントン部、吹奏楽部や書道部などが人気を集めている。学校行事では、体育祭、コーラスコンクール、なでしこ祭(文化祭)は、生徒運営委員を中心に自分の役割に取り組む経験、その責任を果たしていこうとする経験、仲間との大切な時間を過ごす経験など多くの学びを体験できる機会となっている。