シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

横浜女学院中学校

2019年02月掲載

横浜女学院中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.問題点を考えたり解決したりするには、知識と理解が欠かせない。

インタビュー1/3

身近なことと結びつけて考える問題

出題意図からお話いただけますか。

吉田先生 説明文での100字の記述問題は、何かしら社会で問題となっている事柄をとりあげて、その解決策を考えてもらうという趣旨で出題しています。子どもが身近に感じられる、あるいは身近なことと結びつけて考えられるような内容を扱っている文章を探すところから始めて、問題を作っています。

今回は食の安全などについて書かれた文章で、本文では鮭を例にあげて述べていますが、鮭だけでなく「身近な○○も同じことだよね」とつなげて考えて欲しいと思いました。出典は、こういう文章を読んで考えることのできる生徒に入って来て欲しいというメッセージも込めて選んでいます。

解答の印象を教えてください。

吉田先生 解答のほとんどは外国産の野菜、肉、果物などを例にあげたものが多く、こちらが期待するほど広がりはなかったです。鮭を他のものに置き換えただけの解答が多く、残念ながらそれほど深い解答は見られませんでした。それ以外の解答で目立ったのはカップラーメンやお菓子です。「安いからつい買ってしまうけれど、塩分や保存料などが心配」などと書いている子がいました。

国語科主任/吉田 峻先生

国語科主任/吉田 峻先生

3分の1は例が出なかった

吉田先生 採点の仕方は3つのポイント(例をあげる・問題点を見つける・解決策を考える)×各3点です。9割以上書いていれば1点プラスして計10点となります。今回は「その食べ物が」とあるので、例が出ないとその問題点が挙げられない、問題点が挙げられなければ解決策も挙げられない、ということで、例がない解答には点数をあげていません。少し厳しく、全てが成り立っていないというふうに見なしています。例が出なかった子は3分の1くらいいました。

おもしろい解答はありましたか。

吉田先生 問題点や解決策が斬新な解答はあまりなかったです。ただ、例のあげ方でその児童の生活が見えてくるものがありました。例えば「私の通っている教会ではカップラーメンを100円で売っているけれど」と書き出している子がいました。自分の生活と今回の文章がつながったのだなと思いました。もちろん得点は他の子と同じですがいい解答だと思いました。ニュースや保護者から聞いた話をもとに、外国産の肉や野菜などを例にあげて書くよりも、自分の生活に問題があると思ってくれたということに喜びを感じました。

空欄の受験生はいましたか。

吉田先生 空欄はあまり見られませんでしたが、例だけしか書けていない子はいました。

もう少し深く考えさせたかった

問題点にはどのようなものがありましたか。

吉田先生 受験生は人体への問題点しか書いていませんでした。もう少し広い視野で捉えて欲しかったなという思いはあります。広いというのはグローバルという意味です。例えば、自然環境の問題などとつなげて書いてもらえると良かったです。個包装の問題なども出てくるかなと思っていましたが、それはなかったです。

女子は、文章の内容からはみ出してはいけないと思ったかもしれませんね。

吉田先生 食べ物を「安ければ良い」という基準で選んでしまう例なので、お菓子やカップラーメンという発想になってしまったのかもしれません。野菜が高騰していた時期ということもあり、「外国産の方が安いので選んでしまう」という解答が多かったです。もっと深く考えさせたい問題なのに、文章の例に近い解答が多く、そういう解答が10点満点になってしまった。そこは修正していかなければいけないと思っています。採点基準をもう少し工夫したり、もっと解答が広がるような問題にしなければいけないと考えています。

横浜女学院中学校 校内

横浜女学院中学校 校内

入試は知識と理解を問う問題が9割

入試ではどのような力を見たいと思っていますか。

吉田先生 基本的には知識と理解を問う問題が9割。つなげる力、表現する力、いろいろな問題を自分事として捉える力を問う問題が1割です。正直なところ100字の問題ができなくても合格するのですが、私たちはこの問題をメッセージだと思って出題しています。知識と理解は大事ですが「その先があるんだよ」という気持ちを込めてこの100字の問題を作っています。

両者に相関は見られますか。

吉田先生 知識と理解ができている子が100字もできているという傾向はあります。問いを100字の問題のヒントになるように作っています。「ここが問題だよね」「ここが問題だよね」と確認しながら問9に進む流れになっているので、知識と理解ができていなければ100字はできないということになります。それは入学後に学ぶことと同じです。知識と理解がなければ、先に何かをつなげたり、問題点を考えたり、解決したりすることはできないと考えています。

今回の「例が浮かばない」というのは知識ではありませんが、生活の中でいろいろなことを知ろうとしたり、触れていたり、大人とよくしゃべっていたりしているかどうかが関係してくると思います。学校説明会でも「100字の対策をして来てください」とは言いません。「書かないと得点にならないので、問われていることをよく考えて書きましょう」と話す程度です。まずは広く考えたり関心を持ったりすることを大事にして欲しいです。

漢字は国語力の基礎。しっかり学習しよう

知識と理解の部分では どのような勉強をしてきて欲しいですか。

吉田先生 配点はあまり高くないのですが「漢字が大事ですよ」ということはよくお話ししています。漢字が国語力の基礎だと思っているからです。書き順や部首、成り立ちを理解して勉強して欲しいです。本校でも生徒を指導している時に「その部首ならそんな意味であるはずがない」「部首から意味がわかるでしょう」と言うことがあります。高3でも熟語でつまずくことがあります。漢字の勉強は小学校のうちにしっかり学んでおくと、後々役立つと思うので頑張って欲しいです。

漢字問題の出題の仕方が独特ですよね。

吉田先生 漢字問題は短文を並べるような形にしていません。「言葉は使ってこそ」といつも言っていて、文の中で使えるようにしてほしいので、4、5行の文章の中で漢字の読み、書きの問いを作っています。また、1ヵ所、間違っている漢字を探して正す問題も出しています。

佐々木先生 間違いを正す問題では、漢字を正すのではなく全く別の言葉を書く子がいます。例えば、何年か前ですが「親会社」を「新会社」に直した子がいました。横浜女学院ではこういう問題が出るということを知っていて、慣れていないとできない問題ですよね。

ずっとこの形式なのですか。

佐々木先生 少なくとも10年ぐらいはそうです。

横浜女学院中学校 掲示物

横浜女学院中学校 掲示物

メッセージ性のある文を採用したい

問題文の選び方で工夫していることはありますか。

吉田先生 難しいものはなるべく選ばないようにしています。難しい文章の場合は問いを優しくしています。基本的には読ませたい文を選んでいます。受験生やその保護者にメッセージになるようなものを選びたいと思っています。

何年か前に、女の子が途中で歩くことを諦めそうになる物語を出したことがありました。その時は意図をもって文章を選んでいなかったのですが、その文章を(5回行っている入試の)後半の回で出したら、何回も本校を受験し続けていた受験生の保護者の方が「自分たちのことのようで励まされる思いがした」と言ってくださいました。それを聞いて、こういう風に受け取ってくださるんだと気づきました。そのように伝わるのであれば、励ましや物事を良い方向に向けることになる文章を採用したいと思い、そういう文章と出会えた時は、対象年齢が少し高めのものであっても選ぶことがあります。

難易度でいうと、2018年入試の文章はどの程度ですか。

吉田先生 どれもやさしめです。

国語は文章選びが大変ですね。

吉田先生 そうですね。本校は5回入試を行っているので、物語文と説明文、合わせて10作品が必要になります。入試を担当する数名の教員が何冊か持ち寄って選んでいます。

インタビュー1/3

横浜女学院中学校
横浜女学院中学校日本プロテスタント発祥の地、横浜山手の丘でキリスト教の教えを柱に校訓「愛と誠」の女子教育による人間教育を実践している。変化の激しい社会に対応ができる力を身につけるために「神様と人に愛されている存在として、自己受容力を高め、多角的かつグローバルな視野をもち、社会貢献を果たすことができる生徒の育成を目指し、「自らを知る」「隣人を知る」「世の中を知る」「自ら行動する」「隣人を愛する」「世の中に働きかける」の6領域とこれらを具体的に実践するための12コンピテンシーを設定し、すべての教育活動を実践している。
コンピテンシーとコンテンツを効果的に結び付けて学力を高めるために2022年度より1時間の授業を65分授業としている。月曜日から金曜日までは5時間、土曜日は3時間(国際教養クラスは4時間)の週6日制を実施。国際教養クラスでは、実際のグローバルトピックにアプローチするCLIL(内容言語統合型学習)を中学3年生より実践し、さまざまなテーマについて教科を横断して学び、「英語で」考える力を身につけている。また、第二学国語(中国・ドイツ・スペイン)も必修とし、言語を通じて文化に触れ、世界への視野を広げるチャンスとなっている。
学校行事や部活動においては、生徒が自ら進んでチャレンジしていく時間となっている。部活動は希望制だが多くの生徒が入部をしている。全国大会で上位入賞するチアリーディング部を始め、ダンス部やバドミントン部、吹奏楽部や書道部などが人気を集めている。学校行事では、体育祭、コーラスコンクール、なでしこ祭(文化祭)は、生徒運営委員を中心に自分の役割に取り組む経験、その責任を果たしていこうとする経験、仲間との大切な時間を過ごす経験など多くの学びを体験できる機会となっている。