今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!
横浜女学院中学校
2019年02月掲載
2018年 横浜女学院中学校入試問題より
- 問題文のテキストを表示する
次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。(字数制限のある問いは、句読点や記号も1字に数えます。)
(略)
安いことはいいことかもしれませんが、それでは食べものを選ぶほんとうの基準が何なのかという判断力を失ってしまう危険があるのです。これはサケだけの問題ではなく、ほかのいろいろな食べものでも、その判断を失えば取り返しのつかないことがおきる可能性があるからです。
(略)
(小泉武夫『いのちをはぐくむ農と食』岩波書店)
(問)― 線部「これはサケだけの問題ではなく、ほかのいろいろな食べものでも、その判断を失えば取り返しのつかないことがおきる可能性があるからです」とありますが、「安ければいい」という基準で選んでしまう食べ物の例とその食べ物の問題点をあげて、「取り返しのつかないこと」がおきないようにするにはどうすればよいか、あなたの意見を100字以内で書きなさい。
中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この横浜女学院中学校の国語の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)
解答と解説
日能研による解答と解説
解答例
たとえばパーム油を使った安いパンや菓子は、アブラヤシの農園が増えて熱帯林が伐採される可能性がある。野生動物に影響して生態系が破壊されないよう、適切な事業者による原材料を使っている企業の製品を選びたい。(100字)
解説
設問にある「取り返しのつかないことがおきる可能性」は、たとえば人体への影響、生態系への影響などが考えられます。(1)食べ物の例を挙げること(2)その食べ物が人体や自然環境にもたらす問題点が明確であること(3)適切な解決策を書くこと が求められます。
- 日能研がこの問題を選んだ理由
この設問に取り組むには、文章で示された世界の問題をとらえた上で、自分の身の回りのことや知識と結びつけて問題点を明確にし、解決策まで考えようとする姿勢が必要だと思われます。
食べ物が人体や自然環境にもたらす問題点とその解決策を考えることは、横浜女学院中学校のESD教育への取り組みの表れだと感じられました。
また、SDGs目標14「海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する」を始めとした「世界の未来を変えるための目標(SDGs)」とのつながりも強く、子どもたちが現代社会の課題を自分のこととして考えるきっかけになると思われます。
さらにそれを100字以内でまとめようとすることで、伝えるための構成や表現に意識を向ける必要性も実感できます。
以上のことから、子どもたちはこの問題に取り組むことで、科目の枠を越えた「持続可能な社会を作るための思考力」「未来を変えるための表現力」が必要だというメッセージを受け取れると考え、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことに致しました。
SDGs17のゴールとのつながりについて
食べ物を選ぶとき、どんなことを大切にしていますか?
鮮度、価格、産地、安全性、栄養価……。選ぶ基準は多様。食べ物について、どこに関心を向けるかによって、「食べ物を選ぶ」ことは、SDGs(持続可能な開発目標)のさまざまな目標につながっていることが見えてきます。
たとえば、価格の安さ。確かに安さは魅力ですが、安ければ何でもいいのでしょうか?海外から輸入した食品が安いとします。でも、健康被害の心配はないのでしょうか?(目標2「飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養の改善を実現し、持続可能な農業を促進する」)あるいは、輸入品ばかり買うことで、国内の産業が衰退する可能性もあります(目標12「持続可能な消費生産形態を確保する」)。また、海産物を大量に捕獲できるので安くなるとしたら、資源が枯渇する可能性はないのでしょうか?(目標14「持続可能な開発のために、海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」)そもそも日本では「食べ物を選ぶ」ことができるけれど、他の国では?(目標1「あらゆる場所あらゆる形態の貧困を終わらせる」)——このように、「食べ物を選ぶ」ことは、いろいろなつながりを持っているのです。
毎日、食べている「食べ物」が、自分の口に入るまでのプロセスに目を向けて、考えてみてください。
私学とSDGsのつながりについて詳しくはこちらから
日能研は、SDGs をツールとして使い、私学の活動と入試問題に光を当てた冊子をつくりました。
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