シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

日本女子大学附属中学校

2019年01月掲載

日本女子大学附属中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.いろいろな方向から見て、考えて、全体像をふくらませよう。

インタビュー2/3

中学時代に大切なのは基礎をつくること

國澤先生 社会科的な内容は、知識や経験を重ねていくうちにおもしろくなっていきます。だとしたら、中学段階で何をしなければいけないか。そう考えると2つのことが浮かびます。1つは学ぶための基礎となる知識をきちんと押さえること。もう1つは興味関心をもつ姿勢です。中学校の授業ではどこに関心を向ければいいかを示しながら、その姿勢を育むことに力を入れています。

峯岸先生 中学時代は木に例えると根っこの部分だと思います。見えない部分をしっかり育てて幹を太くすることが大事で、きれいな花を咲かせるのは社会に出てからでいいと思います。

國澤先生 そういう考え方なので、中学校では高校1年生の内容を先取りしていません。時間があれば、1つの事柄をさらに掘りさげます。

広報部主任/峯岸 憲一先生

広報部主任/峯岸 憲一先生

おもしろい授業を常に探求

國澤先生 基礎知識を押さえるために、講義形式の授業が中心にならざるを得ないのですが、その流れの中で「なぜなのか」「どうしてなのか」ということを常に投げかけています。小学生の段階で流れを知っていれば、「なぜこうなったかわかる?」というかたちで掘りさげていくという作業がしやすく、全分野で行っています。

峯岸先生 作品を掲示・展示する時には、社会科に限らず、全員の作品を掲示・展示します。それを見ていると、どの教科も2、3年前と違うことをやっていることがわかります。陶芸を入れてみたり、美術と国語のコラボ授業を実施してみたり…。絵を見て博物館に行き、好きなものを探して発表するなど、そういう一歩が踏み出しやすい環境なので、教員にとってはおもしろいですし、そのおもしろさが生徒にも伝わっているのではないかと思います。

3年間の学習の集大成として取り組む年間研究

峯岸先生 全教科が「楽しさをわかってほしい」という思いをもって取り組んでいますので、生徒はいろいろなもの・ことに触れる機会があります。その中で、「今の関心はこれかな」というものを調べたり、まとめたりしながら、自分で追求することの楽しさをわかってもらった上で、3年生の「年間研究」(卒論)につなげています。

年間研究のテーマは自由なので、ジャニーズ、化粧品、ディズニーランドなど、研究の概念を覆すようなテーマでもかまいません。ディズニーランドもただ行くのではなくて、なぜディズニーランドが流行っているのかを考察するのは立派な研究ですから、そういう芽を各教科で作っています。

日本女子大学附属中学校 年間研究(卒論)

日本女子大学附属中学校 年間研究(卒論)

オリジナルのライティング・リテラシーが手引き

テーマの絞り込みが難しいと思います。そこは先生方が引き出していくのですか。

峯岸先生 年間研究には担当の教員がつきます。その教員がアドバイスしていきます。

國澤先生 日頃から調べ学習をするにしても、スピーチするにしても、「私」を大事にしています。社会科では文化をテーマに「私が興味をもったこと」を調べさせています。

峯岸先生 テーマの見つけ方、インタビューの仕方やアンケートの取り方など、基本的なことは「ライティング・リテラシー」という冊子にまとめて配布しています。本校の場合、一枚の紙にまとめることが多く、レイアウトの工夫、出典の出し方などを各教科で教えていました。

教え方が異なると生徒の負担になる可能性があるため、統一して「ライティング・リテラシーの何ページを参考にしながらやっていこう」というような進め方をすることにしたのです。冊子にしたことで、「先輩たちがやっているのはこれか」「自分たちは、来年(再来年)それをやるのか」というように、3年間の活動を見通せるようになりました。

日本女子大学附属中学校 冊子「ライティング・リテラシー」

日本女子大学附属中学校 冊子「ライティング・リテラシー」

人の作品に刺激を受けて工夫が生まれている

峯岸先生 基礎を理解した上で、掲示されている先輩の作品を見ながら、まとめ方、見せ方を自分で考えていく生徒が増えています。

國澤先生 本校は一番上の階が1年生なので、2年生や3年生のフロアを毎日のように通ります。憧れの上級生の作品を見たいという気持ちから、よく来ています。私は今、中3を担当していますが、扉をつけたり、じゃばらにしたり…、立体的な見せ方をする生徒もいます。今はそれが流行のようで、学年が上がるにつれて明らかに取り入れる生徒が増えてきました。人の作品をヒントに、次の自分のレポートに活かしていくのでおもしろいです。

インタビュー2/3

日本女子大学附属中学校
日本女子大学附属中学校1901(明治34)年、成瀬仁蔵によって創設された日本女子大学校の附属高等女学校を前身とする。48(昭和23)年、新制・日本女子大学の設置とともに附属中学校となった。78年に目白校地から、附属高校がすでにあった川崎市生田の現在地に移転。2001(平成13)年に創立100周年を迎えた。
多摩丘陵の自然を生かした緑豊かなキャンパスは、人との交流を期待して、各教室棟を結ぶモール(廊下)などやゆとりの空間を多くとったユニークな設計。カフェテリアや、中庭のもみじ劇場は、昼休みの憩いの場になっている。1800名収容の大ホール、温水プール、コンピュータ演習室などを備えた西生田成瀬講堂もある。
創立以来、建学の精神を「信念徹底・自発創生・共同奉仕」の三綱領に示し、生徒の個性を尊重し、創造性を豊かにし、高い徳性を養うことを目指している。「自ら考え、学び、行動する姿勢を育てる」ことを重視しているだけあって、生徒たちは学習に積極的に取り組み、問題解決能力を身につけていく。一人ひとりが主役となり、全員で学校生活を作り上げているため、校風も伸びやかで明るい。
自分自身の学習方法を発見して生涯学んでいく姿勢を育て、心身の健康をはかり、創意と思考力をもった情操豊かな中学生を育成することを目指す。併設大学への進学が中心となるためカリキュラムはハードではないが、英・数・国・理の一部では1クラス2分割授業を取り入れている。英語では実際に使える語学力、理科では実験・観察を重視。読む・書くを中心とした国語教育には定評がある。音楽・美術・体育・家庭科でも複数教員による授業を導入し、バイオリンが必修となっている。英・数・国の補習が朝・昼・放課後に行われている。併設大にない学部受験者には、併設大との併願が可能。
学級活動やクラブにおいて、生徒の自発的な活動を奨励しているため、文化祭や運動会などほとんどの行事は中学生だけで企画・運営されている。中1の三泉寮(軽井沢)、中2の校外授業(東北)など、宿泊をともなう行事をとおして自然に親しみ、静かに自己を見つめ、規律ある団体生活の真意を学ぶ。中3では希望者制で裁判傍聴などもある。そのほか、スキー、スケート教室や古典芸能、音楽鑑賞会なども行われている。クラブは文化系16・運動系10あり、なかでもコーラス部は東日本大会入賞の実績がある。天文部は校舎に備えられた天文台を活用している。制服は紺のセーラー服だが、高校からは私服。