出題校にインタビュー!
日本女子大学附属中学校
2019年01月掲載
日本女子大学附属中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.上辺だけの理解ではなく、深く掘りさげて意味を理解することが大事。
インタビュー1/3
結びつけて考える力を問いたかった
この問題の出題意図からお話ください。
國澤先生 学校や塾で勉強したことが、実際の社会や自分たちの将来にどう結びつくのか。そういう発想を持っている児童に入って来てほしいと思っています。この問題も「結びつける」ということを意識して作りました。
工夫したのは、1つの答えを導き出すのではなく、多少答えに広がりを持たせたところです。そのため、社会問題が複数ある資料を用いました。高齢化や人口減少などは、小学生でも知っている知識だと思いますので、グラフからそういうキーワードを読み取った上で、キーワードと自動運転技術の発達に結びつけて、それが実際の社会や自分たちの将来にどのように役立つのかを考えてほしいと思いました。
社会科/國澤 恒久先生
高齢化と結びつけた解答が多かった
國澤先生 正答率は高かったです。高齢化と結びつけた解答が圧倒的に多く、人口減少と結びつけた児童はごく少数でした。しかも、人口減少という言葉は思いついたものの、事故が減ると人口の減少も止まるなど、歯止めをかけるという発想になっている児童が目立ちました。
峯岸先生 (入試から発表まで)時間に限りがありますので、難しいかもしれませんが、今思うと、「思いついただけ書きなさい」という問題にしてもよかったかなと思います。
言葉の意味を深く理解することが大事
國澤先生 自動運転技術も含めて、覚えた語句の内容をどの程度自分なりに理解しているかを問いたいという気持ちも少なからずありました。過去に「流域面積とは何か」を聞いたことがあります。その時は4つの選択肢から選ぶ問題でしたが、普段から表面的な知識を得てよしとするのではなく、深く学ぶということを大切にしてほしいという思いもあって出題しました。
自分で調べるのもよし、教員に質問するのもよし。本当の意味をきちんと掘り下げて理解しているかを入試でも聞いてみたいですし、入学後も、「その言葉を説明してみて」ということがよくあります。
日本女子大学附属中学校 花壇
チコちゃんのように疑問をもつことを大切に学ぼう
國澤先生 中1の授業を受け持った時、最初に話すのが地名です。本校の最寄りの駅は「読売ランド前」ですが、駅前によみうりランドは存在しません。では「なぜそのような駅名なのか」という疑問を持てるかどうか。そこに注目しています。小田急線には、他にも「~前」という駅名があります。そういう例を出しながら「何か共通点はないか」と考えてみます。すると、見つけ出した「共通点」にあてはまらない例外があることにも気付きます。そこからまた「どうしてだろう?」と考えます。興味は次から次へと広がっていきます。
興味のタネはそこら中に落ちています。そういうことに気づかせていくことが大切だと思っています。素朴な疑問に「何?」「なぜ?」と切り込む“チコちゃん”が人気ですが、そういう疑問をもつことが勉強を楽しくする最大の肝だと思います。
公民ではニュースで興味関心を引き出す
峯岸先生 公民の授業では、ニュースになったことをすぐ取り上げると、生徒の反応がとてもいいです。「おもしろいよ」ということが伝わると授業に活気が出ます。
生徒さんは授業に積極的にかかわりますか。
峯岸先生 最初のうちは「この先生はどういう正解を求めてこの質問をしているのだろう」と思うようで、様子見の生徒が目立ちますが、そうではないということがわかってくるとさまざまな意見や考えが出て来ます。
日本女子大学附属中学校 図書室
女子校だから個性を出しやすい
峯岸先生 女子校は、女子しかいないので、そのうち女子しかいないということを意識しなくなります。完全に個性なのです。だからどんどん前に出て来ます。
自然とそうなるのですか?
峯岸先生 最初はできない子のほうが多いですね。場数を踏んでできるようになります。
國澤先生 本校に入ると、「あなたはどうしたいの」「あなたが何を考えているか、聞かせて」と聞かれることが授業でも自治活動でも多くなるので、臆することなく前に出て来ます。
峯岸先生 個性があるのでそれぞれですが、自分を出せるように訓練しています。
地図はイメージでとらえてほしい
2018年は隣り合っている県だけを切り取って出題しています。ビジュアル重視の問題づくりを意識されているのでしょうか。
國澤先生 本来、地図は絵の情報だと思うのですが、女子には地図を文字の情報として覚えようとする傾向が見られます。地名よりも、海岸線の形はどうなのか。島の大きさはどうなのか。その位置関係などを問いかけたいという意識はあります。頭の中で日本地図がイメージできているかということです。
過去に、本州の日本海側の県の特徴を読み解くような問題を出したことがありました。日本海側というざっくりとしたイメージをつかめていれば解ける問題でしたが、試験監督をしていると、日本海側の県を書き出している児童を見かけました。「あと1つ、どこだったかな」という感じでペンが止まっていたのですが、その問題はそういうことをする必要がまったくありませんでした。その時もイメージを大事にしてほしいという思いを強くしました。
峯岸先生 地理は正答率が低いです。
日本女子大学附属中学校 掲示物
自分なりのイメージをふくらませよう
峯岸先生 歴史も、まずは年号より順番を覚えてほしいと思っています。先生に「大事な年号だから覚えてね」と言われたら、「なぜ、その年号を覚えなければいけないのか」というところを考えて学んでほしいです。
國澤先生 並べ替えの選択肢が4つあるなら、その4つで物語ができなければおかしいのです。並べ替えの問題でまったく関連性のない年号は出さないので、そういう理解の仕方をしてほしいです。
各時代のイメージをもつということですね。ピンポイントの知識というよりも、広い知識を求めているのでしょうか。
國澤先生 そうですね。
峯岸先生 物事にはいい面もあれば悪い面もあります。見方によって変わるので、いろいろな方向から物事を見て、自分なりのイメージをふくらませてほしいです。あいまいなところは、中学、高校、大学と学ぶ中で解き明かしていけばいいのです。
地理の海岸線を問う問題は、難しかったでしょうね。
國澤先生 それも歴史と同じで、いろいろな見方ができるという考え方をベースにしています。地図というと陸地を見がちですが、海目線で見たらどうなるか。そういう視点で作りました。
日本女子大学附属中学校 校内
必ず学んだ知識で解ける問題を出している
國澤先生 定期テストも知識を問うだけではありません。視点を変えて、考えなければいけない問題を出しています。例えば地理では、授業で見せていない資料を出すことがあります。必ず学んだ知識で解ける問題を出しているので、初見で驚くことはあっても、じっくり考えて、その壁を超えられれば大丈夫、というスタンスは入試も同じです。
峯岸先生 今回、取り上げていただいた問題は、最後の問題でしたがよくできていました。ただ、最初に出ていたらどうだったでしょう。個人差はあると思いますが、解きやすい問題から並べて、受験生が戸惑わないような配慮はしています。
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