シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

日本女子大学附属中学校

2019年01月掲載

日本女子大学附属中学校【社会】

2018年 日本女子大学附属中学校入試問題より

(問)瀬戸内海沿岸には自動車工場があります。近年、自動車産業は「自動運転技術」の開発に力を注いでいます。
自動車の自動運転技術が発達することは、次の資料から読み取れる日本社会の課題に対して、どのように役立ちますか、あなたの考えを述べなさい。

(資料)日本の将来人口の動き

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この日本女子大学附属中学校の社会の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

(例1)
高齢者が増えていくと、高齢ドライバーによる事故も増加しそうだが、自動運転技術が発達すると未然に事故を防ぐことができる。

(例2)
働く人の減少によって、人手不足で廃止されるバスが増えそうだが、自動運転のバスができれば地域の交通網を維持できる。

解説

資料からどのような課題を読み取ったのかと、自動運転技術の発達がその課題解決のためにどう役立つのかの2点が伝わるように記述することがポイントとなります。
自動運転技術は、「走る・曲がる・止まる」という自動車の動きを制御(コントロール)する技術です。「自動で走ること」や「自動で止まること」が、日本社会の課題に対してどのように役立つのかを考えましょう。

日能研がこの問題を選んだ理由

近年、自動車の自動運転技術の開発が進み、運転支援システムが装備された自動車もめずらしくなくなってきました。また、自動運転技術を積極的に活用することで、現在抱えている課題を解決したり、くらしをより便利にしたりすることはできないかと試行錯誤する動きも広がりつつあります。こうした世の中の動きを中学入試問題に反映したのが、日本女子大附属中のこの問題です。

この問題のおもしろさは、資料から何を読み取るか、そこからどのような日本社会の課題を思い浮かべるかで、さまざまな答えが考えられることです。資料からは、「総人口が減少する」、「65歳以上の人口の割合が増える」、「15~64歳の人口の割合が減る」という3つのことが読み取れます。これらの現象から想起する課題と、自動運転技術を用いる場面や自動車の種類をどう設定するかによって、発想の幅に広がりがでます。

現在、政府は完全自動運転の実現に向けて整備を進めようとしています。検討課題も多くありますが、自動運転車が公道を走行する未来もそう遠くないのかもしれません。自動運転技術の利用方法を考えることは、進化するテクノロジーと人とのかかわりを模索する視点を得ることにもつながります。子どもたちが入試問題を通じてこの視点を得ることは、さまざまなテクノロジーと共存する未来を生きていくうえでも有意義だといえるでしょう。

このような理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。

SDGs17のゴールとのつながりについて

  • 18 SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS
  • 9 産業と技術革新の基盤をつくろう

日本の将来人口に関する資料から、何が読み取れますか?読み取った情報と自動車の自動運転技術を結びつけると、何が見えてきますか?
現在の自動運転は、限定的な運転支援にとどまっていますが、将来的には完全にドライバーの操作が必要なくなることが期待されています。
自動運転技術の進化が、人間の生活や自動車産業にどんな利害をもたらすかについて考えることは、SDGs(持続可能な開発目標)の目標9「強靭(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る」にもつながっています。
この入試問題をきっかけに、さまざまなテクノロジーの進化や産業のイノベーションと、持続可能な未来との相関について考えてみませんか?

私学とSDGsのつながりについて詳しくはこちらから

日能研は、SDGs をツールとして使い、私学の活動と入試問題に光を当てた冊子をつくりました。
詳しくはこちらから