シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

駒場東邦中学校

2019年01月掲載

駒場東邦中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.解答までの道筋を要領よく説明できることを大切にしている

インタビュー2/3

答えにいたるプロセスが大切

また、算数科入試問題全体を見ていますと、コンパクトな解答欄に合わせて自分の思考の過程を書く傾向が強いですね。

先生 この問題に関わらずですが、テストで「答えのみ」を解答できる生徒は多いです。しかし、自分の考えたことをきちんと言語化して相手にわかりやすく伝える力は、数学だけでなく社会に出てからも必要な力だと思っています。そのため問題作成する上でも、普段から自分の解答をわかりやすく伝えるような学習姿勢が身についているかどうかを試すようなものを作るようにしています。

駒場東邦中学校 校舎

駒場東邦中学校 校舎

論理的に説明する練習が大学受験につながる

授業内で挑戦しても面白そうな問題ですが、通常の授業ではどのようなことを意識されているのでしょうか?

先生 試験で説明を書かせることは必要だと感じています。大学入試を考えても、採点者が見て分からないものは伝わらないので点がもらえません。自分でわかっていることを「答案を通してアピールする」という観点は授業の中でも話しています。

授業中における生徒たちは説明を求めると積極的に答えてくれるのですか?

先生 それは様々です。積極的に数学に取り組む生徒だけではなく、面倒がる生徒、複雑な問題に苦手意識を持つ生徒、ケアレスミスを起こしやすい生徒など、いろいろなタイプの生徒がいます。ただ数学が得意でない生徒たちでも理解しやすいように、たとえば中学生なら自分で図形を作ってみて手を動かして視覚的に理解できる体験してみることを大事にしています。そのようにして興味持って楽しんでできるようにしないと、生徒もなかなか頭に入らないのではないかと思いますので、注意して心がけるようにしています。

中には授業の進度のずっと先までできる子もいますので、そのような子に対しては個別に問題を用意して渡すなどで対応しています。

数学を将来に活かす

卒業までに数学科としてはどんな力をつけて卒業してほしいとお考えですか?

先生 論理的に物事を考える力が身につきやすいのは数学の特徴かなとは思います。
また、本校では、文系理系問わず数まで一通り最低限必要なことはカリキュラムに組み込んでいます。今は役に立たないかもしれませんが、生徒たちが後で「やっててよかったな」と感じる瞬間があれば嬉しいなとは思います。実際「数Ⅲを学んだことが役に立った」と経済学部に進学した卒業生から聞いたこともあります。

先生 たとえば理詰めで物事を考えていかなければならない法学分野など、思考力を高めていくことは実は文系・理系問わず必要なことですから、社会に出てからを考えても、中高時代に数学に取り組むことは意義のあることだと考えます。

先生 今の子ども達が社会に出て活躍する頃には、AIなどで時代が大きく変わっているはずです。これまで私たちが認識している「当たり前」が通用しなくなるでしょう。そういう時代の中で「どう生き抜いていくか」を考えた時、おのずと試行錯誤や論理性が必要になるでしょう。問題にぶつかった時の問題解決能力を持っていくために、数学を学んでおくことは大事なことと思います。

中高一貫6年間あるといえども、文系でも数まで習得するのは、特に数学が苦手な生徒にとって大変ではありますね。

先生 何とか少しでも生徒の日常につながるように説明しようと意識はしていますね。数学は木の枝葉のように広がっていくので、先の部分がわからないとしても、根元に戻っていかなければなりません。どこからわからなかったのかはっきりさせるには相応の時間もかかります。ですから何かのせいにして学びをあきらめないで頑張ってほしいですね。

数学科主任

数学科主任

インタビュー2/3

駒場東邦中学校
駒場東邦中学校1957(昭和32)年4月、東邦大学の理事長であった額田豊博士が、当時の名門・都立日比谷高校校長の菊地龍道先生を招き、公立校ではできなかった夢を実現させるため、現在地に中・高を開校。71年に高校募集を停止し、完全中高一貫教育の体制が確立した。2017(平成29)年に創立60周年を迎えた。
神奈川、東京のどちらからも通学至便で、東大教養学部にも程近い都内有数の文教地区に位置。300名収容の講堂、6万9千冊の蔵書を誇る図書室、9室の理科実験室、室内温水プール、トレーニング室、柔道場、剣道場、CALL教室など申し分ない環境が整っている。職員室前のロビーには生徒が気軽に質問や相談をできるよう、机やイスを設置している。
先生、生徒、父母の三者相互の理解と信頼に基づく教育を軸に、知・徳・体の調和のとれた、科学的精神と自主独立の精神をもった時代のリーダーを育てることを目指す。年間を通じて行事も多く、とくにスポーツ行事などでは、先輩が後輩の面倒をよく見る「駒東気質」を培う。中1では柔道・剣道の両方を、中2・中3はどちらかを履修することになっている。
2004年から中学校では1クラス40名、6クラス編成に。「自ら考え、自ら行動する」習慣を身につけながら、各教科でバランスのとれた能力を身につけることが目標。英・数・理では特に少人数教育による理解の徹底と実習の充実をはかっている。中1・中2の英語と理科実験は分割授業。数学は中2(TT)・中3(習熟度別分割)・高1と高2(均等分割)の少人数制授業を行う。英語は、深い読解力をつけるために中3~高3までサイドリーダーの時間を導入。さらに高3ではネイティブ指導のもと自分の考えを英語で表現するコンプリヘンシブ・クラスなど独特の指導も展開している。文系・理系に分かれるのは高3になってから。中学生は指名制、高校生は希望制の夏期講習を実施する。
濃紺の前ホック型詰襟は、いまや駒東のトレードマーク。伝統的に先輩・後輩の仲がよく、5月中旬の体育祭では全校生徒が4色の組に分かれ、各色、高3生の指導の下、一丸となって競い合う。9月の文化祭は、多くの参加団体と高校生約200名で構成される文化祭実行委員会によって、一年かけて準備される。中学では林間学校、鎌倉見学、奈良、京都研究旅と探究活動が充実しており、高校の修学旅行は生徒によって毎年行き先が決められる。クラブは文化部16、体育部16、同好会15があり、兼部している生徒も多い。中学サッカー部・軟式野球部・アーチェリー部・囲碁部・陸上部・化学部・模擬国連同好会などは関東大会や全国大会に出場。アメリカ・台湾への短期交換留学制度もある。