今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!
駒場東邦中学校
2019年01月掲載
2018年 駒場東邦中学校入試問題より
- 問題文のテキストを表示する
図1のように5×5四方のマス目の中央が塗(ぬ)りつぶされ、残りのマスに1から24までの番号が順番に書かれたカードがあります。また、1から24までの番号が1つずつ書かれたボールが入っている袋(ふくろ)があります。この袋の中からボールを1つ取り出し、ボールに書かれた番号と同じ番号のマス目を塗りつぶすという作業を繰(く)り返します。一度取り出したボールは袋には戻(もど)しません。カードのたて、よこ、ななめのいずれか一列の番号が全て塗りつぶされたとき「終わり」とし、作業を終了します。
例えば図2、図3のように取り出すと「終わり」となります。
(問)作業を19回繰り返したとき、1が書かれたマス目は塗りつぶされず、さらに「終わり」となりませんでした。このような場合は全部で何通りあるか求めなさい。またそれらの中の1つを具体的に答えなさい。ただし、塗りつぶされずに残ったすべての数字に໐をつけなさい。
中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この駒場東邦中学校の算数の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)
解答と解説
日能研による解答と解説
解答
7通り
例
解説
この5×5四方のマス目には、たて5列、よこ5列、ななめ2列の合計12列があり、どのマス目も「たて1列、よこ1列」の合計2列の上か、「たて1列、よこ1列、ななめ1列」の合計3列の上にあります。
塗りつぶされないマス目(以下「Aマス」と呼びます。)は24-19=5(個)です。
この12列すべての上にAマスがあるように配置します。
1が書かれたマス目は、「たて1列、よこ1列、ななめ1列」の合計3列の上にあります。よって、残りの9列(=12-3)すべての上に残り4個のAマスがあるように配置します。
9を4個の数の和で表すと9=2+2+2+3より、1が書かれたマス目と同様、「たて1列、よこ1列、ななめ1列」の合計3列の上にあるマス目にAマスを少なくとも1個配置する必要があります。
そのような、3列の上にあるマス目は、下の図より、「9と16」が書かれたマス目です。
そこで、9と16について、
①9だけAマスにする
②16だけAマスにする
③9と16の両方ともAマスにする の3つの場合に分けて考えます。
①「9だけAマスとする配置」を考えます。
下の図より、12、21、17、22、14、19、24のマス目から、残りの6列すべての上にAマスがあるように3個を選びます。
(12、17、24)、(12、22、19)、(21、17、14)の3通りです。
②次に「16だけAマスにする配置」を考えます。
下の図より、8、22、13、23、10、14、24のマス目から、残りの6列すべての上にAマスがあるように3個を選びます。
(8、13、24)、(8、23、14)、(22、13、10)の3通りです。
③最後に「9と16の両方ともAマスにする配置」を考えます。
下の図より、22、14、24のマス目から、残りの4列すべての上にAマスがあるように2個を選びます。
(22、14)の1通りです。
以上より、全部で3+3+1=7(通り)の場合があります。
(参考)これら7通りは次のようになります。
- 日能研がこの問題を選んだ理由
何やら長めの問題文。いざ読んでみると、「5×5のマス目」「真ん中が塗りつぶされている」「1~24が書かれている」といったことが書かれています。さらに読み進めていくと、この問題で考えていくのが“ビンゴ”であることがわかります。パーティーゲームのビンゴを題材に、算数と結び付けて研究してみよう、というわけです。
今回は紙面の関係でポスターに掲載していませんが、(1)では4回で『終わり』となるときの、(2)では5回で『終わり』となるときの、塗りつぶされた数字の組み合わせは何通りなのかをそれぞれ考えます。(3)が19回目ですから、単純な状態から複雑な状態を考えていく流れになっていることがわかります。
今回紹介した(3)は、19回目のようすを考えます。真ん中の1マスと合わせて、25マス中20マスが塗りつぶされたときのようすを考えるということです。実際に真ん中と合わせて20マス塗りつぶしてみましょう。気を抜くとすぐに『終わり』になってしまうことが実感できるはずです。
「あちらを立てれば、こちらが立たない。」
そんな状況ですから、思いつくままに調べようとすると、とても“すべて”を調べ上げることはできません。そこで、秩序立てて調べるということが必要になります。これは子ども達が「場合の数」の学習を通して学んできた考え方です。
身近な題材であるビンゴの中に潜む秘密を、算数で学んできた考え方で紐解いていく。この問題は、そんな問題といえるのかもしれません。
「思いがけない身近なところにも、算数と結び付くものはある。」
そんなことを伝えてくれる問題といえるでしょう。このような理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことに致しました。