シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

大妻中学校

2018年12月掲載

大妻中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.習得した知識や経験を暮らしの中で活かしてほしい

インタビュー2/3

自ら進んで論理的に考え、深めていく力をつけさせたい

中高時代に身につけさせたい力を教えてください。

鶴田先生 生活の中で起こるさまざまな問題、事物、現象について、自ら進んで論理的に考え、深めていくことができるということは、非常に重要だと思っています。特にテクノロジーの進歩に倫理的な視点が追いついていないということなど、正解のない問いにいかに自分なりの折り合いをつけていくのかといった分野においては、特に必要だと思います。また、多角的、多様なものの見方、例えば、空間軸、時間軸におけるミクロ的、マクロ的な視点を持つなど、偏らないとらえ方ができることも重要だと思っています。

そうした目標をもって、入試の問題づくりと同じコンセプトで授業を行っています。実際はなかなかコンセプトどおりにいきませんが、高い理想をもって授業に取り組んでいます。自ら追求、考察するために必要な、土台となるレベルの学力はつけさせたいと思っています。また、習得したものを自分だけのものにしておかず、身近な人、社会、自然に対してかかわりを持ちながら活かしていけると良いと思っています。

大妻中学校/図書室

大妻中学校/図書室

週1、2回実験で興味関心を引き出す

鶴田先生 特色としては、設備を活かして実験を多く取り入れていることです。実験室は4つ(物理1、化学2、生物1)あります。中学生は時期にもよりますが、週1、2回実験に充てています。すべての実験ではありませんが、レポート提出もさせています。生徒は、座学よりも実験のほうが楽しいので興味・関心を引き出せていると思います。

実験レポートの書き方も指導されていますか。

鶴田先生 最初に指導しています。準備、方法などを書き記すことも大事ですが、考察をもっとも大事にしています。「正しいか間違っているかは別として、まずは自分で考えてみよう」という話をよくします。

レポートから成長は見られますか。

鶴田先生 全員が同じレベルで上がっているというわけではありませんが、繰り返しやっていく中で、表現の仕方、思考の仕方は変わっていきます。

大妻中学校/実験室

大妻中学校/実験室

タブレットで写真や映像を見せる機会も多数

鶴田先生 理科としてタブレットを100台以上保有し授業に活用しています。

どんな時にタブレットを使っていますか。

鶴田先生 実際にできないけれど見せたい実験や、行けない場所を見せたい時に写真や映像を活用しています。今年度から中1~高1に1人1台タブレットを導入したので、教材づくりも進めているところです。

各教科で積極的に活用していこうという方向なのですね。

長谷先生 そうですね。各教員が考えて授業で活用しています。タブレットで予習したノートの写真を撮り、それを私のところに送ってくると、40人分を一覧できます。それを生徒に送り返して分類させたり、どういう予習がいいのかを考えさせたり、いろいろやりようがあるのでおもしろいですよ。

五感を揺さぶる体験で理科への興味を引き出す

理科を好きになってもらうための工夫があれば教えてください。

鶴田先生 やはりおもしろいと思ってもらわないと、一方的な詰め込み学習になってしまうので、子どもたちが科学的なもの、自然的なものに興味を持てるよう、身近な題材をテーマやコラムとしてはさんだり、五感に通ずるような体験をさせたりすることを意識して行っています。

例えば、唾液の実験ではクエン酸をなめさせます。強烈に酸っぱいですよね。「これが梅干しなどに含まれているクエン酸だよ」と言うと、「だから梅干しは酸っぱいのか」と関心が高まります。ちょっとしたことですが、さわりのところに日常生活を噛み合わせると反応がいいです。実験レポートから生徒の気づきを拾って授業で話をすることもあります。

大妻中学校/実験室

大妻中学校/実験室

授業中や実験中にコミュニケーションをとる

理科が苦手生徒さんもいると思います。どのように対応していますか。

鶴田先生 普段の授業において、あるいは実験している間に巡回しながらコミュニケーションをとっています。また、授業の中でどう考えるのかをうまく誘導できるようにサポートしています。生徒のほうから質問してくる子もいますが、理解が浅い生徒に対してはこちらから当てたり、個別に対応したりしています。

職員室前のスペースで生徒さんと先生が対面している姿が見られましたが、わりとフランクな感じですよね。

長谷先生 生徒は職員室の中にも入ってきますよ。担任から生徒への伝達事項を、担当の生徒が聞きに来て伝える、ということが慣例になっていて、毎日、たくさんの生徒が情報を得るために職員室に来ています。職員室がガラス張りでオープンな雰囲気ですが、スイッチ1つでスモークガラスになります。試験期間などはスモークガラスにして区別しています。

生徒の主体性を重んじる校風

生徒さんが伝達事項を伝える、というのはおもしろいですね。間違いは起こりませんか。

長谷先生 生徒が伝える場面にはもちろん担任もいます。間違いがあればその場で正すので問題ありません。できることはすべて生徒がやる学校なのです。
先日、高3の生徒にインタビューしたら、「先生と生徒は対等」と言っていました。それは、先生がいろいろと言いながらも、「決めるのはあなたたちだよ」と言われて育ってきた。だから自分たちもそのつもりでいるという意味だそうです。しっかり育っています。

大妻中学校/創立者 大妻コタカ像

大妻中学校/創立者 大妻コタカ像

基本的に生徒を尊重する

先生方は、失敗を恐れずに見守る、というスタンスなのですね。

鶴田先生 もちろん失敗もありますが、その中にもいい要素が隠れています。失敗から次につなげたり、又、いい要素が出て来た時を見逃さず、褒めてあげると、いいこととはどういうことかを実感し、それがその子にとどまらず、周りにも伝わっていきます。生徒が、自分たちで意思決定をしながら学校生活を運営していくという雰囲気を、こちらがサポートしながら調整していくようなイメージですね。

先生と生徒が対立することもあるのでは?

鶴田先生 場合によってはありますが、基本的に生徒を尊重します。生徒が自発的に考え動くことが大切だと思っているので、こちらの考えを押し付けることはありません。教員に考えを求めてくるようではまだまだだと思います。

インタビュー2/3

大妻中学校
大妻中学校1908年に大妻コタカが創立した家塾が前身。校訓『恥を知れ』は、自分自身を戒める言葉。自律と自立を大事に、「リーダーシップを持って活躍できる品性を兼ね備えた教養ある女性」の育成に取り組む。創立からの理念と共に、時代の要請に応える教育を大切にしている。
6年間を中学1年、2年の「基礎力養成期」、中学3年、高校1年の「充実期」、高校2年、3年の「発展期」の3つに分け、学習内容を効率的に編成して、生徒の幅広い進路に対応する。
「基礎力養成期」では、安心できる環境の中で、自己肯定感を持ち、目標に向かって頑張ることのできる集団へと育てることを目指す。「充実期」では、「働くこと」「学ぶこと」の意味を考え、高校進学に向けて意識を高めていく。自分らしい生き方とは何かなど、将来の職業や社会への貢献などについて考える。「発展期」では、自分の将来像をより明確化し、具体的な進路を探っていく。「問題解決能力」「自己表現力」「発信力」を強化して、具体的な進路の決定と目標達成へ向かっていく。内部進学率は2~3%で、卒業生の大半が他大学へ進学する進学校として定着している。
また、クラブ活動や行事も盛んに行われていて、書道、マンドリン、バトントワリングなど、全国大会で活躍する部もある。袴姿にはちまきの応援団も登場する体育祭、中学生による研究発表、各部による発表、舞台演技など、全校で盛り上がる文化祭、イギリス、アメリカ、オーストラリアへの海外研修や、情操教育の一環としての芸術鑑賞など多くの行事がある。
教員と生徒との距離が近く、職員室前のラウンジは吹き抜けになっており、話しやすい環境がある。また、担任と生徒との1対1の面接週間というのもある。