シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

大妻中学校

2018年12月掲載

大妻中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.常識とされている事柄にも疑問の目を持とう

インタビュー1/3

身近な題材をテーマに作問

出題意図からお話いただけますか。

鶴田先生 受験生の興味を引けるように、身近にものを題材に取り上げることが作問する際の1つテーマになっています。今回の問いでは、気温、湿度、水蒸気量という観点から風邪をテーマに扱ってみました。風邪は夏場にひくことは少ないですが、冬場は多く、その冬場での風邪対策の1つとして加湿器を用いることがあります。

この風邪対策における加湿器使用の目的は、主に湿度を上昇させることにあると認識されがちですが、空気中に含まれている水蒸気量が重要であるということを気づかせたいという思いがありました。また、その気づきを、冬場に受験期のある受験生の日常生活に活かしてもらえるとより良いと思いました。

記述問題にしたのは、問題文、表などを的確に読み取り、自らの考察内容を論理的に発信できる力を見たいという思いがあったからです。

理科主任/鶴田 一司先生

理科主任/鶴田 一司先生

正解した受験生は問題文をよく読んで解答していた

この問題の正答率を教えていただけますか。

鶴田先生 この問題は約6割でした。どの問題も6割程度の正答率を目指して作問をしていますので、適度な難易度だったと思います。

調整はしたのでしょうか。

鶴田先生 自由解答にすることもできましたが、やや難しい問題かなと思ったので、設問を工夫し、解答欄に誘導するような言葉を入れました。

「30度以上の気温と40%以上の湿度の両方」という答えと、「空気1m3中に12.12g以上の水蒸気がふくまれていること」という2つの解答が考えられると思いますが、1つ目の解答を書いた受験生はいましたか。

鶴田先生 作問の段階から1つ目の答えが出るということは予想していました。人数的には一握りでしたが、条件をより深く読み取って1つ目の答えを書いている受験生がいました。両方とも○にしました。全体を通して、(受験生は)よく問題文を読んで解答していたように思います。

誤答についてはいかがでしたか。

鶴田先生 条件にうまく合致していない、あるいは気温だけを言及している。そういう傾向が見られました。資料の読み取りが甘く、そのことに関してうまく表現できてなかったということだと思います。

大妻中学校/校舎

大妻中学校/校舎

日頃の学習と日常の出来事を結びつけて考えよう

入試問題全体の出題コンセプトを教えてください。

鶴田先生 入試説明会等でもお話させていただいていますが、基本的に5点あります。これらは、授業で大事にしていることと同じです。
1つ目は「基礎的・基本的な知識の獲得が重要であること」。諸々の問題に対して、自分で考えたり考察したりするには、やはり最低限の基礎知識が必要だと思います。
2つ目は「時事や身の回りの自然に興味・関心を持ち、その事柄を探求していくことができること」。この問題もそうですが、日頃の学習と日常の出来事を結びつけて考えることが必要だと思います。
3つ目は「与えられた条件を的確に読み取り、多面的・多様的に考察しつつ、論理的に考えを組み立てられること」。一面的なもののとらえ方ではなくて、いろいろなものの見方ができると、理科の学習に限らず、社会に出てからも通用する力になると思います。
4つ目は「自分の考えを言葉や図、グラフなどを用いて適切に伝えること」。自分の考えを相手(読み手や聞き手)がわかりやすいように発信する力も、中高大と学びを進めていく上で、また、社会に出てからも役立つ力になると思っています。
5つ目は「粘り強く追求し、最後までやり遂げること」。これは何事にも言えることですが、簡単に投げ出すことなく根気よく作業して、最後までやり遂げることが大切だと思っています。

本やニュースから問題を発想することが多い

これらのコンセプトをどのように活かしていますか。

鶴田先生 大問は4問で、物理・化学・生物・地学、それぞれが出題します。ですから、それぞれに基本的な問題と、思考力を問う問題、あるいは時事を問う問題など、上記のコンセプトにつながる問題を入れられるように工夫しています。

作問をする時にどのように発想していますか。

鶴田先生 自然科学が好きなので、フィールドに出たり、本を読んだり、ニュースを見たり…。そういうことをしている時に、教育者の視点で入試や授業の素材として使えるのではないかと思うことはあります。

作問をする時の素材選びはどのように行っていますか。

鶴田先生 身近な自然現象、時事などを注視し、その内容をもとに子どもが5つの事柄を育むことができるものはないかと試行錯誤しています。

大妻中学校/図書室前の掲示

大妻中学校/図書室前の掲示

インタビュー1/3

大妻中学校
大妻中学校1908年に大妻コタカが創立した家塾が前身。校訓『恥を知れ』は、自分自身を戒める言葉。自律と自立を大事に、「リーダーシップを持って活躍できる品性を兼ね備えた教養ある女性」の育成に取り組む。創立からの理念と共に、時代の要請に応える教育を大切にしている。
6年間を中学1年、2年の「基礎力養成期」、中学3年、高校1年の「充実期」、高校2年、3年の「発展期」の3つに分け、学習内容を効率的に編成して、生徒の幅広い進路に対応する。
「基礎力養成期」では、安心できる環境の中で、自己肯定感を持ち、目標に向かって頑張ることのできる集団へと育てることを目指す。「充実期」では、「働くこと」「学ぶこと」の意味を考え、高校進学に向けて意識を高めていく。自分らしい生き方とは何かなど、将来の職業や社会への貢献などについて考える。「発展期」では、自分の将来像をより明確化し、具体的な進路を探っていく。「問題解決能力」「自己表現力」「発信力」を強化して、具体的な進路の決定と目標達成へ向かっていく。内部進学率は2~3%で、卒業生の大半が他大学へ進学する進学校として定着している。
また、クラブ活動や行事も盛んに行われていて、書道、マンドリン、バトントワリングなど、全国大会で活躍する部もある。袴姿にはちまきの応援団も登場する体育祭、中学生による研究発表、各部による発表、舞台演技など、全校で盛り上がる文化祭、イギリス、アメリカ、オーストラリアへの海外研修や、情操教育の一環としての芸術鑑賞など多くの行事がある。
教員と生徒との距離が近く、職員室前のラウンジは吹き抜けになっており、話しやすい環境がある。また、担任と生徒との1対1の面接週間というのもある。