シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

大妻中学校

2018年12月掲載

大妻中学校【理科】

2018年 大妻中学校入試問題より

次の文を読んで以下の問いに答えなさい。
空気中には、水蒸気という形で水分が含(ふく)まれています。この空気のしめり具合、つまり空気中に含まれている水蒸気の割合を数値で示したものを湿度(しつど)と呼びます。また、空気1m3中に最大限に含むことのできる水蒸気の量を飽和(ほうわ)水蒸気量と呼び、この値は下の【参考資料】のように気温によって決まっています。さらに、飽和水蒸気量をこえ、含むことのできなかった水蒸気は水てきとなってあらわれます。

【参考資料】
気温(℃) 飽和水蒸気量(g/m3 気温(℃) 飽和水蒸気量(g/m3 気温(℃) 飽和水蒸気量(g/m3
-1 4.5 11 10.0 23 20.6
0 4.8 12 10.7 24 21.8
1 5.2 13 11.3 25 23.0
2 5.6 14 12.1 26 24.4
3 5.9 15 12.8 27 25.7
4 6.4 16 13.6 28 27.2
5 6.8 17 14.5 29 28.7
6 7.3 18 15.4 30 30.3
7 7.8 19 16.3 31 32.0
8 8.3 20 17.3 32 33.8
9 8.8 21 18.3 33 35.6
10 9.4 22 19.4 34 37.5

(問)あるウイルスが死滅(しめつ)するにはどのような環境(かんきょう)が必要かを調べる実験を行いました。このとき、下の表のような結果が得られました。この実験から分かることとして、このウイルスが死滅するには、どのような要因が関係していると考えられますか。「ウイルスが死滅するためには~が必要である。」にあうように簡単に答えなさい。

【実験結果】
  気温 湿度 ウイルス
条件1 30℃ 80% 死滅
条件2 30℃ 40% 死滅
条件3 30℃ 10% 死滅しない
条件4 5℃ 80% 死滅しない
条件5 5℃ 40% 死滅しない
条件6 5℃ 10% 死滅しない

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この大妻中学校の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

(ウイルスが死滅するためには)30℃以上の気温と40%以上の湿度の両方(が必要である。)
(ウイルスが死滅するためには)空気1m3中に12.12g以上の水蒸気がふくまれていること(が必要である。)

解説

あるウイルスが死滅するにはどのような環境が必要かを調べる実験から得られた結果をもとに、このウイルスが死滅することに関係する要因を明らかにしていきます。

実験で得られた結果をまとめた表のうち、気温に目を向けると、気温を30℃にした条件1~3ではウイルスが死滅した場合と死滅しなかった場合があったことが読み取れます。一方、気温を5℃にした条件4~6では、いずれもウイルスが死滅しなかったことが読み取れます。次に、条件1~3の湿度に目を向けると、湿度が80%のときと40%のときにはウイルスが死滅し、湿度が10%のときは死滅しなかったことが読み取れます。

これらのことから、30℃以上の気温と40%以上の湿度という2つの要因が必要であることが考えられます。

また、参考資料を使うと、空気1m3中にふくまれる水蒸気量を求めることもできます。気温が30℃のときに40%以上の湿度であることが、ウイルスが死滅する要因であると考えられるので、30℃のときの飽和水蒸気量が30.3g/m3であることをもとに、空気1m3中にふくまれる水蒸気量を求めると、30.3×0.4=12.12(g)となります。このことから、空気1m3中に12.12g以上の水蒸気がふくまれていることが必要であると考えることもできます。

日能研がこの問題を選んだ理由

実験から得られた結果を読み取り、ウイルスが死滅する要因を説明する問題です。

この問題は、実験から得られた数値を直接使ったり、実験から得られた数値と資料を結びつけて新たな情報を探したりと、色々な方法で考えることができます。このように、複数の要因からものごとをとらえたり、複数の要因を組み合わせることで、直接示されていない情報を探し出したりすることは、これまでにさまざまな発見をしてきた科学者達が行ってきた作業にも通じます。

この問題を通して、子ども達が目の前にある情報から、新たな情報を見つけ出したり、課題を解決するための下地となる知識を再確認したりすることで、日常生活の中で課題に出あったときに、自分なりに解決するための糸口を探る方法を知るきっかけになるでしょう。

このような理由から、日能研では、この問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。

SDGs17のゴールとのつながりについて

  • 18 SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS
  • 3 すべての人に健康と福祉を

ウイルスについて、どんなことを知っていますか?この入試問題から、何が学べますか?

ウイルスが死滅する条件を考える、この問題はSDGs(持続可能な開発目標)の目標3「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する」にもつながっています。ウイルスの性質を知ることが、ウイルスで苦しんでいる地域に向けての現実的な支援や貢献につながります。たとえば、その地域に電力などのインフラが整備されていない場合は、加湿器を送るよりもマスクを送る方がウイルスの拡大を防ぐ効果があるのです。

さまざまな社会問題を「自分ごと」として見ていく上で、まずは問題の原因について「知ること」「知識を得ること」が、具体的なアクションにつながっていくのです。

私学とSDGsのつながりについて詳しくはこちらから

日能研は、SDGs をツールとして使い、私学の活動と入試問題に光を当てた冊子をつくりました。
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