出題校にインタビュー!
聖学院中学校
2018年12月掲載
聖学院中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
3.6年間毎朝の礼拝で自分自身と向き合う
インタビュー3/3
批判ではなく批評できるのは成長の証
授業はどのように進めていらっしゃいますか。
安達先生 私の授業は「今日は読解」というように明確に分けています。板書の内容を咀嚼してノートに書き留めてもらうこともあれば、読解したことを踏まえて自分の主張を表現することもあります。古文の授業は音読だけのこともあります。メリハリをつけることで生徒が授業に主体的に参加しやすくしています。
また、表現する際は、「相手意識」を持つように繰り返し話しています。自分本位になると、一からいきなり十に話が飛んでしまったりします。それでは読み手に伝わらないので、順序立てて説明するように指導します。
私は中3を教えています。自分の考えを論理的にまとめられるようになってきており、「批判ではなく批評をしよう」ということにも取り組むようになっています。
義務教育終了となる中3は、「なぜ学ぶのか」を改めて問い直す時期でもあります。論語の言葉は彼らの心に響くようです。経験を踏まえて人生観にも及ぶ鋭い視点を披露してくれると、生徒たちの成長を頼もしく感じます。
聖学院中学校/教室
毎朝の礼拝は心静かに「自分の賜物」を見つける時間
清水先生 本校の生徒は、「Only One for Others」として「自分の賜物を見つけ出す」ことがつねに問われます。
毎朝、始業前15分間の礼拝は、心静かに自分と向き合う時間です。神様が自分を生かしてくださっているという謙遜の思いと喜びを感じ、同時に、どんな大人になりたいか、どんな人生を歩んでいくかを考えます。
思春期の生徒にとって自分を見つめる作業は、短所に目が行きがちでつらいものです。答えは簡単には見つかりませんが、毎朝の礼拝を繰り返す中で自分の生きる意味を見つけていきます。
全生徒と教員が同じ場所、同じ時間に同じ話を共有
清水先生 礼拝は6年間で約1200回あります。聖書のメッセージが心に響かなかったり、何となく過ごすこともあるでしょうが、ときには心打たれる言葉があります。聖書の中のひと言が人生の支えになるのです。
毎朝、生徒全員、教員も含め約900名が講堂に集まって行います。礼拝を学年ごとから、全学年揃って講堂で行うようになって6年目になります。都内のミッションスクールでは珍しいでしょう。生徒も教員も、同じ場所、同じ時間に同じ話を聞くことに意味があると思います。
礼拝のメッセージを授業に取り入れる教員もいますね。
安達先生 クリスチャンの教員は自分の体験を話しながら聖書に収束させていきます。“お説教”にならないので生徒も受け入れやすいと思います。
清水先生 校長や私(副校長)、チャプレンをはじめ多くの教員の話に耳を傾けます。卒業生が中高時代の体験から、聖書のメッセージが自分を支えてくれた、変えてくれたといった話をしてくれることもあります。
聖学院中学校/講堂
「内なる賜物」を見つけて自分らしさを発揮
清水先生 生徒ののびしろは無限大です。中高6年間の男子の成長は目を見張るものがあります。
ある卒業生は、中1の頃、プログラミングに熱中して周りとほとんど話しませんでした。中2のときに担任の勧めで経済産業省主催の「U22プログラミングコンテスト」に応募し、経済産業大臣賞を受賞します。
そのプログラムは地震情報をいち早く通知するもので、東日本大震災の被災者をおもんぱかり、本学の「for Others」の精神を体現したものでした。
翌年も同賞を受賞すると、クラスメイトは彼を尊敬のまなざしで見るようになり、彼も自信を持つようになりました。高校では文化祭の手書きアンケートをiPad入力に切り替えて自動集計できるソフトを作成。自分の長所をみんなのために生かしてくれました。こうして在学中に好きなことを追求し、大学は情報系の学部に進学しました。
「できたこと手帳」で自己肯定感を高める
安達先生 現在、中3で試行的に行っているのが「できたこと手帳」の記入です。来年度から中学で取り組む計画です。日記をつけるように「今日できたこと」を記録して“見える化”することで、どれだけできたか把握できるし、自己肯定感を高めることにも役立っています。
毎日記入、提出して、担任がひと言コメントして返します。「おばあさんに席を譲った」など、どんな小さなことでも構いません。ひと言でいいのですが、「勉強した」というだけの記入には、どれくらい勉強したか、どの教科の、どんな内容かも書くように指示しています。
できたことを文章化できるように始めは教員が投げかけをします。そうするうちに、自分のことが少しずつに見えてくるようになります。ゆくゆくは新テストの「eポートフォリオ」(部活や学校外の活動成果など、高校生活のさまざまな活動の記録)の作成にも役立つのではないかと思っています。
聖学院中学校/生徒作品
教員はよき伴奏者として生徒の成長に寄り添う
清水先生 教員にお願いしているのは、生徒にとって、ときには先導したり、背中を押したりする伴奏者であってほしいということです。
安達先生 中1・中2には手取り足取り指導したり、大きな声を出すこともありますが、中3になると、そうしたことがずいぶん少なくなります。それだけ生徒が主体的に動けるようになってきたということでしょう。
中2の夏休みが明ける頃には、自分の意見を持ち、話すようになっていきます。つぶやいたひと言には、「どうしてそう思うのか?」と聞いていくと、ポツリ、ポツリと話すようになります。そうしたことが自分の主張としてまとまっていくのが中3の秋頃になります。
生徒たちには、他者と違っていい、違うからこそいいのだと胸を張ってもらいたい。それにはとことん自分と向き合い、己を知ることです。
インタビュー3/3