シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

聖学院中学校

2018年12月掲載

聖学院中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.社会問題を「自分ごと化」する視点を持つ

インタビュー1/3

本文全体を俯瞰できる力を試す問題

安達先生 2020年度の大学入学共通テスト(新テスト)の出題傾向が徐々に見えてきました。中学受験も新テストに沿った出題になってきています。
この問題は、本文全体を俯瞰して、何を伝えようとしているのかをとらえてもらおうと作問しました。本文を読むことで、「知る」とは、「おもんぱかる」とはどういうことか、読解問題を一つひとつ解いていくことで全体のテーマをつかむことができます。この問題が解けるということは、本文を理解できているといえます。

国語科/安達 哲也 先生

国語科/安達 哲也 先生

シエラレオネが抱える問題に思いをよせる

安達先生 本文を読んで獲得した視点は現代社会の問題にも応用できます。本文は筆者の戦争時の体験が語られていますが、文中に書かれていない「シエラレオネが抱える問題」という別の状況に応用して考えてもらいました。
シエラレオネがどんな国か、受験生は知らないでしょう。私も知りませんでした。「知らないから」と思わず、シエラレオネのような遠い国のことにも思いをよせてもらいたいと思います。

今の子どもたちが将来、中心的に関わるのは中国をはじめとする東アジア、東南アジアになるでしょうが、やがてはアフリカとの関わりも強くなるでしょう。小学生が思い浮かべる「世界」の範囲を超えているかもしれませんが、だからこそ知ろうとしてほしいですし、おもんぱかってもらいたいと思います。
自分は何ができるかを考えることは、本校の教育理念「Only One for Others」(オンリーワン・フォー・アザーズ/他者のために生きる個人)にも通じます。

清水先生 「何ができるか」を考えてもらうのが本校の入試の特徴です。途上国に対して「かわいそう」とか「よくない」といった上から目線ではなく、途上国の現実を客観的に受け止めて、自分ごととして考える人物になってもらいたいですね。

自由記述の最低条件は設問の要求に応えること

安達先生 解答状況は少なからず無答があったことも含めて予想通りでした。ボランティアや募金活動、「調べる」といった答えが多く、小学6年生なりに考えて表現しようとしていたことが伝わってきました。
ボランティアは一応正解にしましたが、シエラレオネの問題に対して小6ができるボランティアは考えにくい。設問文で「今のあなた」に傍点を振ったのは、小6の等身大の意見を求めているからです。

ヒントは設問文にあります。提示されたデータは2013年時点のものです。「最新のデータを調べる」という解答は、設問文をきちんと読めているといえます。本文はもちろん、設問文もきちんと読むようにしましょう。

副校長/清水 広幸 先生

副校長/清水 広幸 先生

おもんぱかったから出てくる「祈る」という答え

安達先生 小6ができることとしては、シエラレオネが抱える問題を「知る」ことが、はじめの一歩なのかなと思います。どんな感染症が平均寿命を短くしているのか、内戦の原因は何かを調べるといいでしょう。
大変目を引いたのが「祈る」という解答です。しかも複数人いて、とてもうれしかったです。このようにこちらの予想を超える、キラリ光る答案があると出題した甲斐があります。

おもんぱかったことがわかる解答ですね。

安達先生 「知る」だけでは出てこない、当事者に心を寄せたアクションだと思います。この問題は、本文をどれだけ読み取ることができたか、すなわち、どれだけおもんぱかることができたかを測ることができます。

「表現しよう」と意欲が伝わる文章記述は評価する

この問題の解答は端的な文章になりますが、国語科として受験生に求める文章記述力とはどのようなものですか。

安達先生 自由度が高い問題は素直な自分の気持ちを表現してもらえればと思います。
理由などを答える問題は、主語・述語の関係や「てにをは」の使い方が正しいことも大切ですが、重要視するのは、本文をどう解釈し、自分の考えを表現しようとしているかです。伝えようという意欲は読み手に何かしら通じるものです。「てにをは」の使い方が怪しかったり、漢字でなくひらがなでも、しっかり読み取れている、伝えようとしている答案は評価します。

聖学院中学校/教室

聖学院中学校/教室

インタビュー1/3

聖学院中学校
聖学院中学校米国の宣教師H・H・ガイ博士が1903年(明治36年)に設立した神学校を母体に、聖学院は1906年(明治39年)、石川角次郎を初代校長とする中学校を開校。以来、一貫してキリスト教精神に根ざした“唯一無二の人間教育”を実践し、2002年には3カ年にわたる教育会議を経て「聖学院教育憲章」を策定しました。創立100年の節目を経て、その“原点”へ立ち帰る教育指針を掲げた聖学院は今、“世界水準”の教育プログラムを駆使し、次代を担う若者の育成に力を注いでいる。
日々の学校生活の中で、自ら学び、学び続ける力を育むと同時に、仲間と共に学び、体験を共有できる場をたくさん用意され、21世紀型スキルといわれるアクティブラーニング(仲間との共同学習形態)を授業の中や体験学習、総合学習、行事、プロジェクトなどに取り入れている。また、毎朝15分の礼拝と聖書の授業を中心に、さまざまな機会を通してキリスト教精神を学び、オンリーワン・フォー・アザーズ(他者のために生きる個人)の教育を実践している。Project Based Learning(PBL)を用いた学習プログラムとして、文化祭における「記念祭実行委員」と中2夏期学校「北アルプス蝶ヶ岳登山」の2つの行事から始めて少しずつ取り組みの範囲を広げる。
ANABASE(マナベイス)は本校OBの大学生チューターによる学習・進路・学校生活サポートスペース。生徒は放課後いつでもチューターへ学校生活や進路のことなど相談したり、学習サポートを受けることができる。また、中学棟教室や校外の勉強合宿などの出張型MANABASEも積極的に取り組んでいます。中1・2対象の「定期テスト対策勉強会」や高II対象の「理科課題研究実践サポート」など、チューターはさまざまな学習に関わります。生徒たちにとって中高6年間を同じ環境で過ごした先輩たちがいるMANABASEはとても心強い存在だ。
新潟県糸魚川市での中3農村体験は30年以上続く伝統行事である。タイ研修旅行やアメリカホームステイなど、さまざまな国への海外研修も豊富である。クラブでは、鉄道研究会が人気である他、自動車、レゴ&ハンディクラフトなどユニークなクラブも。剣道・卓球・バドミントン・高校ゴルフなど運動系のクラブ活動も盛んである。