シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

聖学院中学校

2018年12月掲載

聖学院中学校【国語】

2018年 聖学院中学校入試問題より

次の文章を読み、後の問に答えなさい。

自分たちとはちがうくらしをしている人たちの存在を知ったその瞬間(しゅんかん)から、遠い国のその人たちは、もうわたしたちの見知らぬ人ではありません。それ以前にはなにひとつ知らなかった相手であったとしても、その人たちが同じ地球上で同じ時を生きていることを知った瞬間から、自分とつながりのある存在として、その人たちをもう無視して過ごすことはできない。ほんとうはそうであるべきなのです。

「知る」ということは、じつはこんなに重い意味を持っているのです。知ったからには、知っ たことに対して責任が生まれます。なんらかの働きかけも求められるのです。

 (中略)

さっきもお話ししたように「知る」という行為は想像力や思いやる力を同時にはたらかせながら行うものです。けれど、いまわたしたちがしている「知る」のなかにはぬくもりがありません。ただ情報として処理しているだけです。

そうなると、どんなにたくさんのニュースをテレビや新聞で見聞きしても、見知らぬ人の話はどこまでも他人事でしかありません。

「ほかの人の痛みは、その人の痛みであって、わたしにはまるで関係がない」

と思うことになれてしまえば、たとえば戦争も「ここ」にないかぎり、自分が解決に乗り出すべき問題として自覚されることさえなくなってしまいます。

(日野原重明『十歳のきみへ ―― 九十五歳のわたしから』冨山房インターナショナル)

(問)アフリカに「シエラレオネ」という国があります。WHO(世界保健機関)のデータによると、2013年の時点で内戦や貧困、感染症(かんせんしょう)などで平均寿命が46歳という世界で最も短い国とされています。
このことを知って、今のあなたはシエラレオネに対してどのような働きかけをしますか。
今のあなたにできることを考えて答えなさい。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この聖学院中学校の国語の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

最新データを調べてみる。
内戦の原因を調べてみる。
現地に行ってボランティアをする。

解説

問題に取り組むにあたり、「シエラレオネ」という国を「知る」こと、そして、「シエラレオネ」の過去、現状、将来を「おもんぱかる」ことが大切です。自分の暮らす国、地域との違いなどをふまえたうえで、「シエラレオネ」に起きているであろう問題に目を向けてみましょう。そして、その問題に対して自分ができることは何であるのかを考えていきます。「シエラレオネ」が、自分の暮らす地域、環境として異なる場所であるからこそ、気づくこともあるはずです。日常と離れた地域で起きていることを、「自分が解決に乗り出すべき問題として自覚する」ことも大切です。

この問題の解答は、人によって多様です。今、自分ができることとして、どのようなものがあるのか、考えをめぐらせてみましょう。

日能研がこの問題を選んだ理由

この設問に取り組むことは、受験生たちにとって、同じ地球に住む人々に目を向けるきっかけになったのではないでしょうか。また、地球上に暮らす人々の日常は、全てが同じではなく、地域によって、さまざまな環境で暮らしているということをふまえ、考えを広げていくことにもなったのではないでしょうか。

現在の社会や、今の自分の置かれた環境、自分自身に目を向けがちであった視点を、世界に広げていくことによって、気づくことはたくさんあるはずです。世界各地を今日の日常と比較して考えたとき、受験生が目を向けたポイントは、貧困、飢餓、保健、ジェンダー、平等、平和など、人によってさまざま異なることでしょう。今回、問題を通して考えたことがらが、シエラレオネのどんなところにつながるのか、あらためて見つめなおしてほしいと思います。今の自分は何ができるのか。ほんの小さなことでもよいので、できるところについて考えを広めていってほしいと思いました。以上のことから、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ばせていただきました。

SDGs17のゴールとのつながりについて

  • 18 SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS
  • 1 貧困をなくそう
  • 2 飢餓をゼロに
  • 3 すべての人に健康と福祉を
  • 16 平和と公正をすべての人に
  • 17 パートナーシップで目標を達成しよう

「世界で最も平均寿命が短い国」に対して、「今のあなた」は何ができますか?
シエラレオネ共和国は、西アフリカの大西洋側に位置する国で、1808年からイギリスの植民地でしたが、1961年にイギリス連邦加盟国として独立。しかし、政治は安定せず、1991年から内戦に突入し、10年以上も不安定な政情が続きました。

2002年に内戦は終結しましたが、内戦によって何もかもが破壊され、人々が満足に暮らしていけるだけの社会的基盤は残っていませんでした。新しくインフラを整備するだけの経済力も、長く続いた内戦によって失われていたのです。

そのため、衛生状態は非常に悪く、特に病気への抵抗力がない子ども達の生命を脅かします。食料や医薬品を十分に手に入れられる環境ではないので、子ども達も、そしてその母親も、感染症など命の危険にさらされているのです。これが、シエラレオネの平均寿命が世界で最も短い原因です。

そんなシエラレオネに向けて、今の自分にはどんな支援や貢献ができるかを考える、この問題はSDGs(持続可能な開発目標)の目標1「あらゆる場所で、あらゆる貧困に終止符を打つ」、2「飢餓に終止符を打ち、食糧の安全確保と栄養状態の改善を達成するとともに、持続可能な農業を推進する」、3「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する」、16「持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進し、すべての人に司法へのアクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する」、17「持続可能な開発に向けて実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する」などにつながっています。

私学とSDGsのつながりについて詳しくはこちらから

日能研は、SDGs をツールとして使い、私学の活動と入試問題に光を当てた冊子をつくりました。
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