シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

東京女学館中学校

2018年11月掲載

東京女学館中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.文章記述から受験生の考え方がわかる

インタビュー2/3

大問2題に変更、文章記述問題にじっくり向き合う

以前と比べると文章記述問題が増えていますよね。

坂田先生 2017年度入試から問題構成を3分野融合の大問2題に変更、文章記述問題を増やして配点も多めに取る分、全体の問題数を減らしました。思考力や資料の読み取り、表現力など問題を解くプロセスを重視しています。
社会科の入試時間は30分です。大問3題のときは、終盤の文章記述に力が尽きた様子がうかがえました。大問2題にしてからは、文章記述が増えても最後まで書いてくれるようになった印象があります。

塾でも大問3題のときは、子どもたちから「間に合わなかった」「過去問をやると時間が足りない」という声を聞きました。大問2題はリード文が少なくなったことで、考えて文章を書くことに時間をかけられるようになっていると思われます。

社会科/坂田 充先生

社会科/坂田 充先生

文章は「何が」「どうなのか」はっきり書こう

上田先生 文章記述は、受験生が何を、どのように表現しようとしているかが一番わかります。また、知識の正確な理解や文章を構成する力を見ることができます。
覚えていれば答えられる問題だけでなく、自分なりに考える、知識を総動員するような問題も出して、知識力と思考力の両方を試したいと思っています。

社会科の表現力として、小学生にどの段階まで求めていらっしゃいますか。

上田先生 伝えようとしていることをできるだけくみ取るようにしています。設問の要求を理解していること、キーワードを押さえていれば、用語記述と違い、多少の誤字・脱字、漢字の間違いは目をつぶります。

坂田先生 聞いていることに対して、主語と述語の関係がきちんとわかること。主語がないと何を言おうとしているか判断しかねます。「何が」「どうなのか」ということをはっきり書きましょう。
理由の場合は因果関係が成立しているか、結論とかみ合っているかどうか。内容の説明、理由の説明、自分の意見など、設問の要求に応じた文章を書くようにしましょう。

東京女学館中学校/正門

東京女学館中学校/正門

設問の要求をとらえていない解答が増えている

先ほど、この問題で受験生が「違い」を指摘できていなかったとおっしゃっていましたが、塾の公開模試でも、設問で聞かれたことにきちんと答えていない子どもが増えているように感じます。

坂田先生 その傾向は高校生にも見られます。読んでいないわけではなく、流してしまっているのだと思います。
「こう聞かれたら、こう答える」といった反射的に答える習慣がついてしまっているのかもしれません。知識を出す問題ばかり解いていると、「こう答えればいい」と早合点しがちです。今一度、設問をていねいに読むように心がけてほしいですね。

「ニュースノート」に新聞記事を要約して意見を書く

授業ではどのような取り組みをされていますか。

上田先生 ノート作りは板書をただ写すのではなく、学びを発展させるようなまとめ方を指導しています。中1の地理、中2の歴史では、ノートの左側にプリント(ワークシート)を貼り、右側に気になった事柄を調べて書き込みます。ノートは学期に2度ほど回収してチェックします。図やイラストを多用したり、カラフルに色分けしたり、ノートを見ると個性が出ます。

坂田先生 ノートは評価の対象になります。自分で考え、整理してまとめることで定期試験の学習にもつながります。

上田先生 中3の公民では「ニュースノート」を作成し、社会や世界の動きに関心を持つ習慣をつけます。気になった新聞記事の切り抜きをノートの左側に貼り、右側に記事の要約と自分の意見を書きます。題材は政治、経済、国際情勢から最先端科学までさまざまです。

東京女学館中学校/ニュースノート

東京女学館中学校/ニュースノート

NGOに取材し社会の課題を考える「社会貢献学習」

坂田先生 10年ほど行っている取り組みが中3の社会貢献学習です。政府や国際機関、NGOなど約250の団体が参加する「グローバルフェスタ」をグループごとに見学し、興味を持った団体に取材を申し込み、後日取材します。南スーダンのPKO活動に派遣されていた女性自衛官の方に取材したグループもありました。その団体の国際支援から国際社会の問題に対し、自分たちなりの解決策をプレゼンテーションするところまで行います。

生徒には取材するだけでなく、活動の手伝いもするように促します。活動内容によっては難しい団体もありますが、例えば、マラソン大会で募金活動をして途上国支援をする団体では、給水係など運営の手伝いをしたそうです。
このように、中3は校外活動を通して社会とのつながりを意識させます。NGOでは多くの女性が活動しています。社会貢献学習はロールモデルを見る機会として、キャリアガイダンスとしての要素もあります。

上田先生 中3のグローバルフェスタの見学がきっかけで、NGOの活動に携わるようになった卒業生がいます。毎年、後輩たちを快く迎えてくれます。

戦争体験者から話を聞いてレポートにまとめる

坂田先生 長く取り組んでいるのが、身内の人の戦争の体験談をまとめるレポートです。ただ、身内に戦争体験者がいなくなってきていて、年々難しくなっています。子ども時代に疎開されていた方、旧満州の開拓移民だった方はいらっしゃいますが、戦地に赴かれていた方は、もうなかなかいらっしゃいません。最近は戦後の体験に範囲を広げています。

上田先生 お一人お一人の体験談に胸を打たれます。体験談を直接聞く機会が少なくなる中、生徒たちには貴重な体験になっています。レポートの内容はクラスみんなでシェアしています。

東京女学館中学校/展示物

東京女学館中学校/展示物

インタビュー2/3

東京女学館中学校・高等学校
東京女学館中学校・高等学校伊藤博文が創立委員長として発足した「女子教育奨励会」が母体となり、1888(明治21)年に設立。建学の精神は「諸外国の人々と対等に交際できる国際性を備えた、知性豊かな気品ある女性の育成」です。インクルーシブ・リーダーシップ(共生し協働する力)を養うために、生徒会、クラブ、さまざまな行事を生徒による実行委員会方式で実施。
「国際学級」は英語に特化したカリキュラムで、実践的な英語力を養成。一般学級でも英語習得を中心とした国際教育を重視。英語や英会話はクラスを2分割します。アメリカ文化研修は、働く女性の職場から家庭まで密着するというユニークな文化交流。さらに、日本の文化にも力を入れ、茶道・華道体験、歌舞伎や能楽の鑑賞、京都・奈良への修学旅行(高2)などを実施。中3の修学旅行は沖縄で、平和や環境問題を学びます。
白のセーラー服に青いリボンの制服は1930(昭和5)年に制定され、「品性を高め、真剣に学ぶ」精神を象徴。中1では60歳以上の卒業生へのインタビューも交えたスクールアイデンティティ学習を実施。体育大会では、17世紀のフランス宮廷ダンス「カドリール」を高3が制服で踊るのが伝統。クラブではオーケストラ、ダンスが人気。茶道部は表千家・裏千家があります。食堂の手作りパン、ソフトクリームは大人気。