今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!
聖光学院中学校
2018年11月掲載
2018年 聖光学院中学校入試問題より
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(問)1から6までの数字が書かれた6枚のカード[1][2][3][4][5][6]を並べかえて6桁(けた)の整数をつくります。つくった6桁の整数の上から2桁が2の倍数、上から3桁が3の倍数、上から4桁が4の倍数、上から5桁が5の倍数、上から6桁が6の倍数になるものをすべて答えなさい。
中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この聖光学院中学校の算数の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)
解答と解説
日能研による解答と解説
解答
123654、321654
解説
○○の倍数という条件から、それぞれの位に入る数を序々に特定していきます。
2~6の倍数には、次のような特徴があります。
これらのうち、覚えておきたいのは「2の倍数」「3の倍数」「4の倍数」「5の倍数」です。6の倍数は、2の倍数でもあり、3の倍数でもある数なので、どちらの特徴も持つ数といえます。
- 2の倍数
- 一の位の数が偶数である。つまり、一の位の数が0、2、4、6、8のいずれかである。
- 3の倍数
- 各位の数の和が3の倍数になる。たとえば、123は1+2+3=6となり、6は3の倍数なので、123は3の倍数とわかる。
- 4の倍数
- 下2桁の数が4の倍数である。もしくは、下2桁の数が00である。たとえば、1208は下2桁の08、つまり、8が4の倍数なので、1208は4の倍数である。
- 5の倍数
- 一の位の数が0か5である。
- 6の倍数
- 一の位の数が偶数で、各位の数の和が3の倍数になる。
次のように、それぞれの位をア~カとします。
すぐにわかるのがオです。「アイウエオ」は5の倍数で、ア~カに入るのは1~6のいずれかなので、オは5とわかります。
さらに、次の3つのことがわかります。
- アイが2の倍数なので、イは2、4、6のいずれかである。
- アイウエは4の倍数なので、ウエは4の倍数で、エは2、4、6のいずれかである。
- アイウエオカは6の倍数なので、カは2、4、6のいずれかである。
オに5を入れ、イ、エ、カに2、4、6を入れるので、残るのは1と3です。つまり、アとウには1か3のどちらかが入るということです。
そこで「アに1、ウに3が入る場合」と「アに3、ウに1が入る場合」の2つの場合を調べていきます。
アに1、ウに3が入る場合
6桁の数は「1イ3エ5カ」となります。このうち、「1イ3」は3の倍数なので、1+イ+3は3の倍数になります。そのようになるのは、イが2のときのみです。
ここまでで、6桁の数は「123エ5カ」とわかりました。
「123エ」は4の倍数なので、その下2桁の「3エ」は4の倍数です。そのようになるのは、エが6のときのみです。つまり、6桁の数は「12365カ」とわかるので、残りのカに残っている4を入れて、答えの1つである「123654」が見つかります。
アに3、ウに1が入る場合
6桁の数は「3イ1エ5カ」となります。このうち、「3イ1」は3の倍数なので、3+1+イは3の倍数になります。そのようになるのは、イが2のときのみです。
ここまでで、6桁の数は「321エ5カ」とわかりました。
「321エ」は4の倍数なので、その下2桁の「1エ」は4の倍数です。そのようになるのは、エが6のときのみです。つまり、6桁の数は「32165カ」とわかるので、残りのカに残っている4を入れて、答えの1つである「321654」が見つかります。
以上より、6桁の数は123654と321654とわかります。
- 日能研がこの問題を選んだ理由
1から6までの数字を使って6桁の数を作ろうとすると、6×5×4×3×2×1=720(通り)もの数が考えられます。234156や513462のように、先に6桁の数をあてずっぽうに作って、その数が条件を満たしているかどうかを検証していくのは現実的ではありません。まして、この問題は条件を満たす数を「すべて」答える問題です。
すべて求めるには、「2の倍数」や「4の倍数」といった条件から、それぞれの位にどのような数が入るのかを特定していく考え方が求められます。
たとえば2の倍数であれば「一の位の数が偶数」ということがわかりますし、5の倍数であれば「一の位の数が0か5」ということがわかります。このように、条件からわかることを明らかにし、それらの条件を組み合わせて、それぞれの位に入る数を考えていくのです。
まるでパズルのように序々に6桁の数が完成に近づいていくこの問題は、算数の楽しさを改めて体感させてくれる問題です。
「すべて」という言葉が「なんとなく解けた。」を許してくれません。「○○だから△△だ。」というように根拠を明らかにしながら考える力と、「本当にこれですべてといえるのか」を確認する力が問われているのです。「○○だから△△だ。」と考える力は、論理的な思考力と言い換えることができるでしょう。特に算数や数学で育んでいくといわれる力です。
算数のおもしろさと論理の大切さを伝えてくれるこの問題は、入学後の学びの姿勢を伝えてくれているかのようです。
このような理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことに致しました。