シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

共栄学園中学校

2018年10月掲載

共栄学園中学校【理科】

2018年 共栄学園中学校入試問題より

私たちの住む地球には、ヒト以外にも多くの種類の生物が存在しています。自然界では、陸や水中、海洋、森林、地中などそれぞれの環境(かんきょう)で生きていくために、生物は様々な部分や機能を発達させています。最近の飛行機の翼(つばさ)部分は、鳥類のタカの翼の構造をヒントに空気抵抗(ていこう)が以前より小さくなるように改良されました。このように、生物のからだの構造や機能を参考に技術を開発することを「バイオミメティクス(生物模倣(もほう))」といいます。

(問1)下線部のようなバイオミメティクスのもととなった生物は、どの様な製品に利用されているでしょうか。下図の生物①~③をもとにした製品を、下の(ア)~(オ)からそれぞれ選び、記号で答えなさい。

【生物】

  • ①オナモミ
  • ②カワセミ
  • ③サメ

【製品】

  • (ア)包丁
  • (イ)新幹線
  • (ウ)マジックテープ
  • (エ)家のかべ
  • (オ)水着

(問2)あなたの考えるバイオミメティクスを、【生物名、その生物のどの構造・機能を応用するか、製品の例】の3点を合わせて、1つ紹介してください。
絵を使った説明をしてもかまいません。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この共栄学園中学校の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

(問1)

  • ①(ウ)
  • ②(イ)
  • ③(オ)

(問2)

(例)生物名:ミツバチ
構造・機能:体中に生えている無数の毛と、後ろ足の花粉かご。
製品:無数の毛を模倣した部分にほこりを付着させ、花粉かごを模倣した部分でほこりを集めてかたまりにし、取ったほこりを捨てやすくする掃除道具。

解説

オナモミの実の表面には、先端がフックのように曲がったとげが多数あり、動物の毛などにつきやすくなっています。動物の体につくことで、さまざまな場所に運ばれ、運ばれた先に子孫を残すことができます。マジックテープには、このとげの構造が利用されています。カワセミは、高速で空気中から水中に飛び込みます。飛び込む際にあげる水しぶきが極めて少ないことから、カワセミのくちばしの構造をヒントに、トンネルに入るときに空気抵抗や騒音の少ない新幹線が開発されました。

サメのうろこは、つき方や形が水中での抵抗を小さくする構造になっています。この構造を参考にした水着が開発され、その結果、競泳では次々に新記録が打ち出されました。

オナモミ、カワセミ、サメの例のように、生物のからだの構造には、生活のための工夫がさまざまあります。自分が知っている生物のつくりを、どのような道具のつくりに生かせそうか、結びつけて考えてみましょう。

日能研がこの問題を選んだ理由

問題文中のバイオミメティクスに関する情報をもとに、生物のからだの構造や機能と製品の特徴を結びつけ、自分自身でバイオミメティクスの製品を考える問題です。

注射針、新幹線、水着など、さまざまな製品に生物の構造が利用されているという話を聞いたことがある子どももいるかもしれませんが、この問題のように、参考となった生物のからだの構造に改めて目を向け、それぞれの製品の特徴と結びつける機会はなかなかないのではないでしょうか。

この問題では、すでに実用化されているバイオミメティクスの例を参考にしながら、これまでに理科で学んできた生物のからだの構造や機能をとらえる視点を使います。身のまわりの生物や道具の特徴を思い起こし、その2つを結びつけていきます。「生物名」「どのような構造・機能を応用するか」「製品の例」の3点を合わせて紹介する設定になっていることで、科学的な根拠をもとに考える流れになっています。

この問題は、子どもたちが日常と理科での学びが結びついていることに気づき、より快適な生活をするための知恵が自然の中にたくさん隠れていることを感じるきっかけになるでしょう。

以上の理由から、日能研では、この問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。

SDGs17のゴールとのつながりについて

  • 18 SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS
  • 9 産業と技術革新の基盤をつくろう

「どの生物の、どの部分が、何に使えるかな?」と考えると、生物を見る目が変わってきませんか?
長い年月を経て進化した生物は、優れた機能や構造を持っています。これらを模倣し、技術開発やものづくりに活用しようという技術が「バイオミメティクス(生物模倣)」です。バイオミメティクスは、素材、機械、医療、環境、エネルギー、交通システムなど多様な分野に貢献するものとして期待されています。
SDGs(持続可能な開発目標)の目標9「強靭なインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業化を推進するとともに、技術革新の拡大を図る」ためにも必要な視点になります。
この問題と向き合った子どもたちは、どんな生物の機能・構造を、どんな製品に応用したのでしょうか。それが「エネルギー効率」の応用であれば目標7「すべての人に手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する」、また街づくりに応用するアイデアならば目標11「都市と人間の居住地を包摂的、安全、強靭かつ持続可能にする」などなど、答えによってさまざまなつながりが生まれそうです。

私学とSDGsのつながりについて詳しくはこちらから

日能研は、SDGs をツールとして使い、私学の活動と入試問題に光を当てた冊子をつくりました。
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