シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

日本大学藤沢中学校

2018年10月掲載

日本大学藤沢中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.社会で通用する力を身につける。それは学力も同じ。

インタビュー2/3

スタンダードが最大の特色

入試問題の作成にあたり、気をつけていることはありますか。

原田先生 スタンダードな試験内容にするというのが高校も含めた方針です。ですから文章の難易度や問題傾向が偏らないように気をつけています。

どのような意図があるのでしょうか。

原田先生 私は長い間入試広報をやっていました。受験生のいるご家庭に注目していただくには、学校の特色を打ち出すことが重要です。例えば、全員にiPadを持たせてICT教育をいち早くやる。そういう学校に皆さんは注目すると思います。本校でもどのような特色があるのかを考えましたが、「普通が特色である」という結論に至りました。

大学の生物資源学部が隣にあるので、理科に特化した子を募集し、ほとんどの子が日大に限らずいろいろな大学の理系に進んでいく。「日大藤沢は理系に強い学校」というイメージが定着すれば受験生は増えるかもしれません。しかし、それでは今までの本校の方針とズレが生じてしまいます。昔から社会での「当たり前」をきちんと身につけさせることを大切にしている学校だからです。中学生だったら、時間を守る、宿題を忘れずに提出する、生活のリズムを整える…、そうしたごく普通の生活からきちんと正していきます。高校から入学した生徒も挨拶から始まって、社会へ出ても恥ずかしくない最低限の常識を身につけさせて送り出しています。学習も含めてスタンダードに徹し、スタンダードを磨いていく学校なので、入試問題もそれがベースになっています。

日本大学藤沢中学校/スチューデントラウンジ

日本大学藤沢中学校/スチューデントラウンジ

自分らしい学生生活を送れる。それが大学附属校の魅力

中学校ができて何年になりますか。

原田先生 10年です。中学1期生は大学4年生です。どの先生も中学生を教えることを経験し、おもしろく感じているところです。

小学校もありますよね

原田先生 小学校は4年目になりました。1学年70名で、東京23区から通ってきている子もいます。希望すれば内部進学が可能ですが、どのくらいの人数が上がってくるかはわかりません。今はまだ様子を見ている段階です。

幅広い学部学科をもつ大学の付属校なので、のびのびと小中高時代を過ごしたいというお子さんが多いのでしょうか。

原田先生 私は2年前に高3を担当しました。その時は上位を内進生が占めました。クラブ活動をやっている子が多かったです。学校の外でフラダンスをやっている子もいて、趣味だと思っていたら実はすごい実力の持ち主でした。それがわかったのが高3の卒業間近でした。「日本代表としてハワイで行われる世界大会に出る」というので驚きました。

その子は学校生活も充実させていました。英語に関心があって在学中に英検準1級を取りました。勉強も非常によくできたので東大受験を勧めましたが「東大には行かない」と言われました。大学で学びたいことを自分で見つけていて、偏差値に関係なく志望校を決めていました。推薦入試で合格しました。

その子を見ていて、のびのびと自分らしい学生生活を送れるところが本校のいいところだと思いました。彼女の勉強する姿は楽しそうでした。その子は特進クラスにも入れる力がありましたが、あえて一般クラスを選択し、野球やサッカー部の子たちと仲良くしていました。誰とでも友達になれる性格で、世界中に友達がいます。そういう子に合っている学校だと思います。

授業では教材から発展させて興味関心をふくらませる

授業ではどのような工夫をしていますか。

原田先生 国語科では、生徒の好奇心を刺激したいと考えています。教科書や問題集を使う時も、国語の基本を押さえた上で教材からどんどん発展させています。

例えば三方五湖の1つ、水月湖の堆積物が世界標準になった話が教科書に載っています。ノンフィクション作家の山根一眞さんの文章で、若狭の三方五湖の堆積物から過去7万年分ものものさしが得られたこと。暗に、それは科学者たちのすごく地道な作業や努力から生まれたものであることが書かれています。

長い文章なので、授業では一通り読んだ後に大事なところを拾ってまとめていきますが、その中で生徒から「この壺はなぜ何万年前のものと分かるのか」といった質問も出て来ます。年縞や炭素14法など、その文章に出て来る専門的な言葉も素通りしてしまってはおもしろくないので、こちらも理科の先生に話を聞くなど勉強しながら発展的な授業をしていきます。そういう授業をしていると生徒は「科学者ってすごいな」と実感します。科学というとロボットや宇宙探査など派手なことに目が向きがちですが、隣の大学でも4年間ずっと試験管を振っているような学生がいます。それがいかに大事なことかに気づけるのです。

日本大学藤沢中学校/図書室

日本大学藤沢中学校/図書室

生徒自身が考えることを大切にしている

原田先生 授業では生徒自身が考えることも大切にしています。いろいろな情報を読み取って、自分の意見を組み立てるのですが、それができるかどうかは読書量にかかわりがあるように思います。本をたくさん読んで文章に接している子は意見をパッと組み立てられます。逆に本を読んでない子は時間がかかります。ですから生徒には読書を勧めますし、何を読めばいいかを聞かれた時は歯ごたえのあるものを選んで欲しいと言っています。昨今は読書の範囲が広がっていて、ハウツー本などを読んでも「読書をした」と言うので、まずは夏目漱石、森鴎外など、名作と言われているものを勧めています。

中1の中には、いきなり森鴎外の「阿部一族」を選んで、途中で放棄した子がいましたが、選ぶ本も重要です。中1には難しすぎました。名作の中では夏目漱石の受けがいいです。「坊ちゃん」は有名で小学校でも紹介されますし、なにより文体がおもしろいので読みやすいのではないかと思います。

いろいろな本を読もう

原田先生 読書を促すために、中学生向けのおすすめの本を各教科から出してもらい、図書館に並べてもらっています。読書マラソンも実施したことがありますが、ライトノベルなど軽い本ばかり読むので、これではいけないと思いました。世間では「読まないよりも読んだほうがいい」と言われていますが、調べると、ライトノベルを読んだ子に国語の力はついていないのです。なぜなら消化が良すぎるからです。難しい言葉との出会いもありませんし、ストーリー展開や登場人物の感情の変化もお約束通りなので、娯楽の読書と教養の読書は分ける必要があると考えています。

まずは読みやすい本ばかりでなく、いろいろな本を読んでほしいのです。力がついていく子は歯ごたえのある本を読もうとします。その前段階として新聞を読むなど、活字に対する抵抗感を取り除くことが大切なのかもしれません。中にはニーチェばかり読んでいる中学生もいます。読後の感想や考えを共有できる仲間がいるとさらにおもしろくなるのでしょうが、ニーチェはさすがにいなかったようです。

10年前と何が違うかと言えばスマホがあることです。YouTubeを見ている子が多く、休みの日は何時間も見ている子がいます。その分テレビは見ていませんが、読書の時間にも影響があると思います。決まった時間に毎日机に向かう習慣をつけること、本を読むことをしてほしいですが、今は机から引き離すものがたくさんあるので難しさを感じています。

日本大学藤沢中学校/図書室

日本大学藤沢中学校/図書室

中1から触れる古文・漢文

原田先生 国語科の行事としては、お正月に百人一首大会を行っています。やはり3年生が強いのですが、年によっては2年生が3年生に勝つこともあります。古典は「すがた」なので、意味や内容から入るよりもまずは体験してもらおうという趣旨で行っています。

中1から古典をやるのですか。

原田先生 中1から古文、漢文をやります。中1の教科書は易しいし、口語訳も載っているので、授業では教材を追加しています。物語を追うよりも、まずは原文に接して言葉づかいとして覚えてほしいんですよね。説明では「おかし」と「あはれ」の違いがよくわからなかった子も、いくつかの作品に触れているうちにニュアンスの違いがわかるようになるので、触れることを大切にしています。

『徒然草』は知っていてほしいので暗唱させていますが、プリントを配布して教科書にあまり出てこないような意味深長な文章を与えると、興味深そうに読んでいます。

生徒たちは我々が想像している以上に漢文が嫌いです。漢字が並んで出てくることにすごく抵抗感があるようです。慣れるために、白文状態(漢字だけの文)で読むことから始めています。

漢検は中3までに2級取得が目標

原田先生 中3までに2級取得を目標に漢検対策も行っています。毎週小テストを行い、20点満点で15点未満のものはひたすら漢字を書かせて提出させています。それでも2級レベルに到達できるのは80人中4人くらいです。準2級はもう少しいます。

高校生になると漢検よりも英検やTOEICに力を入れるので、漢検は中学生のうちが勝負です。2級(一般社会レベル)までで十分だと思うので、中学時代に頑張ってほしいと思っています。

インタビュー2/3

日本大学藤沢中学校
日本大学藤沢中学校日本大学生物資源科学部に隣接し、緑あふれる約115,412平米のキャンパスには、最新の教育施設を備えた新校舎をはじめ、各種の教育施設が設置され、私学として明るく創造性に富み、心身ともに健康で心豊かな人間の育成を目指した、質量ともに充実した教育環境を形成している。平成21年度より併設の中学校を設立し,付属高等学校・中学校の特性を活かし、大学・高校・中学校十か年一貫した展望とゆとりのある教育を実践されている。
先生方の指導はきめ細かく、放課後の補習など常に生徒の傍でサポートしている。進路指導においても、日本大学進学を希望する生徒は[全員進学]を目標とした受験指導を行い、日本大学以外の国公立・難関私大の受験など、進路の多様化に対応したクラスや講座も設けられている。
さらに、国際的素養を磨くため、カナダへの修学旅行やオーストラリアでの語学研修、英国ケンブリッジ大学への語学研修、優秀な留学生と学ぶ国内語学研修、卒業前のシンガポールへの語学研修などを実施している。単なる語学修得だけでなく、真の国際人としての基礎を築いている。
フィールドワークへの積極的な取り組みも特徴的。たとえば、「食」について、農場での植物栽培や、ソーセージなどの食品加工も体験する。いずれも専門知識を持つ大学スタッフの指導のもとに、食品づくりのシステムや安全性を学び、大学の学習そのものを体験することで、大学進学への意欲を高める。日大・生物資源科学部に隣接するメリットを生かしたプログラムだ。
運動部には高校19部・中学10部もの武道やスポーツのクラブ活動があり、全国制覇を狙う競いの場から趣味の活動を広げる場まで、それぞれの環境で同じ志を持つ仲間達と切磋琢磨して心と身体を鍛えることができる。中学では野球部などが活躍。高校の水泳やサッカー、女子ソフトテニスは関東・全国大会レベルだ。