シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

日本大学藤沢中学校

2018年10月掲載

日本大学藤沢中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.ただ覚えるのではなく、その背景にも興味をもって知識を深めよう。

インタビュー1/3

正答率は25%。受験生には難しい問題になった

出題意図からお話いただけますか。

原田先生 大問の1番には語句の問題を出題します。慣例にならって出題しました。我が家の子どもたちもそうでしたが、ことわざや慣用句、四字熟語などは覚えるだけで終わってしまいます。受験生にはそこから少し広げる、掘り下げるといった好奇心を持っていてほしいと思います。いろいろな国の首都名だけでなく、その首都がどこにあるのかも知っているような子が入ってきてくれればいいなという思いで作問しました。

残念ながら正答率は低かったです。この問題は2点配点でしたが平均点は0.5点。正答率は25%でした。第一段階としてこの慣用句が全くわからなかったか。分かっても地理関係、位置関係が読めなかったか。そこはわかりませんが、こういう知識はまだ浅いという傾向が見られました。

小田原や清水寺は知っているかなと思いましたが、善光寺や本能寺がどこにあるかを知らないのではないか。そもそも「牛に引かれて善光寺参り」という言葉はどういう背景から生まれたのか。「敵は本能寺にあり」という言葉は誰の言葉で、どういう場面で使われたのか。そういうことを知らないのではないかと思いました。5択なのでなんとなく「ア」を選んだ子もいたかもしれません。

他に候補にあがった慣用句はありましたか。

原田先生 もう少し優しい慣用句を、と思ったのですが、地名が入っている慣用句が意外と少なく、出題した5つの言葉になりました。「ローマは一日にして成らず」という言葉も浮かびましたが、遠すぎるので外しました。

国語科/原田 哲夫先生

国語科/原田 哲夫先生

知識の幅を問いたかった

この問題はどのように発案したのですか。

原田先生 まずは慣用句の問題にすると決めてから、今回は地名にしてみようということになりました。ただ地名だけを答えさせるのは単純なので、その場所をイメージできるかどうかを問うことにしました。

地理や歴史との教科横断などという大げさなものではないですが、言葉だけでなく背景を知っているかどうかで知識の幅が変わってきます。そういう勉強をしてほしいというメッセージも込めています。

藤沢市を起点にしたのは、日大藤沢に受験をしに来ているので、ここなら分からない子はいないだろうと考えたからです。例えば日本橋を起点にすると、日本橋が分からない子がいるかもしれません。それでは不公平なのでここを起点にしました。

日本大学藤沢中学校/校舎

日本大学藤沢中学校/校舎

知識欲のある子に入ってきてほしい

おもしろい問題ですよね。

原田先生 受験生を混乱させないという考えがベースにあるので、例年通りの問題作成を心がけていますが、多少毛色の変わった問題も一部出そうということで取り組んでいます。今年は鯉のぼりを説明する問題や、アンケートの結果を見て問題点を列記させる問題も出しました。それは大学入試で思考力を問う問題が入ることを踏まえて、本校の入試でも多少は出題していこうという学校の方針です。

私は、中学校時代の勉強はレストランのメニューのようなものだと思っています。ファミリーレストランに入ってハンバーグしか知らなければいつもハンバーグを注文することになり、そのうち飽きてしまいます。ですから、まずはいろいろな料理があることを知ってもらい、食べてもらい、美味しければさらに深めてもらう。そのように誘導することが大切だと思っています。

「この牡蠣、おいしいね。どこで獲れたのだろう。広島産か」というように知識をどんどん広げてほしいので、いろいろなメニューを与えますが、その際に食欲(知識欲)がないと困ります。食いついてくれないので、食欲のある子に入ってきてほしいと思っています。

問題点を2つ見つけるのは難しかった

問7のスマートフォンの問題の出来はいかがでしたか。

【問題】
児童会の山田くんは「学校内でのスマートフォンの使用自由化」を求めて、児童にアンケート調査を行いました。次の文章はその結果発表のために作成されたものです。この文章内容から問題点を2つさがして、それぞれどこがどう問題なのかを説明しなさい。

「私たち児童会では『学校内でのスマートフォンの使用自由化』を学校に認めてもらうため、全校500人の中から私のクラスの10人にアンケートをとりました。その結果、7人が『自由化した方がよい』と回答しました。つまり、学校の70%の人たちがスマートフォンの自由化に賛成していることが分かったのです。だから、学校は私たちのスマートフォンの自由な使用を認めるべきだと思います。

原田先生 上記の文章を読んで、「サンプリングが偏っている」という問題点は結構できていましたが、「7割の人が賛成している。だから認めるべきだ」という問題点はレベルが高かったようです。「ある与えられた事実をもとに、だから何々すべきだという論法は誤りなので、それを関係づけるのはまずい」と答えてほしかったのですが、そこまで書けた受験生は少なかったです。

サンプル数についてはいろいろな考え方があると思います。「中心極限定理」では、500人の母集団なら10人も取れば十分といえます。日本国民が1億2000万人いれば2000人も取れば十分なのです。しかし問題は人数ではなく、「私のクラス」に偏っているということなのですが、今回は「500人の学校なのでもっと多くの生徒にアンケートを取るべきだ」という答えも正解にしました。

これは情報リテラシー的な問題ですが、意外と合否との相関関係がありました。高い点数を取った子はしっかり答えていましたし、中には白紙答案もありました。

日本大学藤沢中学校/中庭

日本大学藤沢中学校/中庭

鯉のぼりの説明が意外とできていなかった

原田先生 鯉のぼりの問題は、採点していておもしろかったです。鯉のぼりを見て、鯉のぼりがどのようなものかを外国人に説明しなさいという問題でした。この問題も合否との相関関係がありました。鯉のぼりという名前や5月5日のこどもの日に、子どもの健やかな成長を願って飾るものだという説明をしてほしかったのですが、おもしろい答えがたくさんありました。

説明しなさいと言っているのに「私は鯉のぼりが大好きです」「子どもの頃よくおじいちゃんが飾ってくれました」といった体験を書いていたり、「毎年1月1日に軒先に出す」「7月7日に飾る」など日にちを間違えていたり。採点しながら、こんなに間違えている子がいることにちょっと驚きました。

手紙を書く時に封筒の表に書く言葉を選ぶ問題もおもしろいと思いました。

原田先生 5つの選択肢から「親展」を選ぶ問題ですね。詳しい意味は知らないかもしれませんが、目にしたことはあるのではないでしょうか。広い意味での国語常識ですよね。

インタビュー1/3

日本大学藤沢中学校
日本大学藤沢中学校日本大学生物資源科学部に隣接し、緑あふれる約115,412平米のキャンパスには、最新の教育施設を備えた新校舎をはじめ、各種の教育施設が設置され、私学として明るく創造性に富み、心身ともに健康で心豊かな人間の育成を目指した、質量ともに充実した教育環境を形成している。平成21年度より併設の中学校を設立し,付属高等学校・中学校の特性を活かし、大学・高校・中学校十か年一貫した展望とゆとりのある教育を実践されている。
先生方の指導はきめ細かく、放課後の補習など常に生徒の傍でサポートしている。進路指導においても、日本大学進学を希望する生徒は[全員進学]を目標とした受験指導を行い、日本大学以外の国公立・難関私大の受験など、進路の多様化に対応したクラスや講座も設けられている。
さらに、国際的素養を磨くため、カナダへの修学旅行やオーストラリアでの語学研修、英国ケンブリッジ大学への語学研修、優秀な留学生と学ぶ国内語学研修、卒業前のシンガポールへの語学研修などを実施している。単なる語学修得だけでなく、真の国際人としての基礎を築いている。
フィールドワークへの積極的な取り組みも特徴的。たとえば、「食」について、農場での植物栽培や、ソーセージなどの食品加工も体験する。いずれも専門知識を持つ大学スタッフの指導のもとに、食品づくりのシステムや安全性を学び、大学の学習そのものを体験することで、大学進学への意欲を高める。日大・生物資源科学部に隣接するメリットを生かしたプログラムだ。
運動部には高校19部・中学10部もの武道やスポーツのクラブ活動があり、全国制覇を狙う競いの場から趣味の活動を広げる場まで、それぞれの環境で同じ志を持つ仲間達と切磋琢磨して心と身体を鍛えることができる。中学では野球部などが活躍。高校の水泳やサッカー、女子ソフトテニスは関東・全国大会レベルだ。