出題校にインタビュー!
晃華学園中学校
2018年09月掲載
晃華学園中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
3.SDGsの活動を通して社会の課題に向き合う
インタビュー3/3
高校生の要望からスタートしたSDGsの活動
長岡先生 本校のSDGsの活動は、高校生の要望から始まりました。今の高3が高1のときに外部イベントでSDGsを知り、「校内でも自分たちができることはないか」と活動を申し出てきました。
自作ポスターを学内に掲示するなどの啓蒙活動を始めると、たちまち下級生に波及しました。中でも当時の中1(現在の中3)が発起人の高校生から受けた影響は強く、今ではSDGsの活動を引っ張る存在です。
富井先生 一部の生徒から始まった小さな活動が、学校の一体感を生み出すまでの大きなムーブメントになっています。
長岡先生 なかなかうまくいかないこともありますが、失敗して、試行錯誤していろいろなことを経験してほしいと思っています。
晃華学園中学校 SDGsの活動
生徒から始まったことだから有志集団の体裁がいい
長岡先生 校内では自らを「SDGirls」とよぶ生徒たちが中心となり、「SDGirls通信」を発行するなどの啓蒙活動やボランティア活動に励んでいます。
富井先生 SDGsの活動が始まった当時、大学受験を控えた高2・高3は「私たちも活動したい!」と、うらやましそうにしていました。
長岡先生 SDGirlsは今年度から担当教員がつきましたが、委員会でも、クラブでもなく、およそ20名の有志の集団です。
富井先生 “きちんとした組織”になると、予算や活動日などいろいろな制約が生じます。生徒達の気持ちから始まったので、活動が窮屈になるようなことはしたくありません。活動したい生徒がしたいときにできるように、また、いろいろな生徒が参加しやすいようにするには、「有志の集団」というフレキシブルな形が適していると思います。
晃華学園中学校 SDGirls通信
一部のブームではなく、みんなが楽しめている
2016年から活動を始めたということですが、SDGsが国連総会で採択されたのが2015年9月ですから、生徒さんたちは情報のキャッチが早いですね。
長岡先生 生徒のおかげです。生徒が先にアクションを起こすので、教員は生徒をバックアップする“黒子”に徹しています。ファッション系やフード系は生徒の関心が高いので、企業主催の中高生対象のプログラムなどの情報をこまめにチェックして、生徒の参加を呼びかけています。
これまでは興味関心の高い生徒が積極的に外部のイベントに参加していたものの、一部のブームにとどまっていました。ところが、アクティブな活動が多いせいか、SDGsは成績上位者に限らずいろいろな生徒たちが興味を持ってくれて活動の幅も広がっています。社会科の学習意欲にもつながっています。
本校では「外部の模擬国連」への参加を奨励しています。模擬国連の共通言語は英語ですから、参加を目指す生徒は「使える英語」を身につけたいという意欲が高く、短期留学する中学生もいます。このようにSDGsの活動は他の教科にも良い影響を与えています。
中3は自らやりたい活動を見つけて提案
具体的に、どんな活動をされているのですか。
長岡先生 学年ごとにメインの活動を振り分けています。
今年度の中1は、「PEACE ORIZURU」を中心に取り組む予定です。平和の象徴である「折り鶴」づくりを通して、争いがない世界を実現し広げていく、東京2020公認プログラムです。
中2が取り組んでいる汚水処理「ハンディポッド」は、学内の「ルルドの洞窟」(聖母が出現したとされる洞窟)を模した泉の水を浄化する活動で、理科の教員と協同で行っています。
中3は以前から「難民」というテーマに取り組み、中3が中心となって文化祭の古着回収を行ってきました。これを継続しつつ、中3は自分たちで調べてやりたいことを提案してきました。文房具やノートを回収してカトリック難民センターを通じて送るプロジェクトです。
晃華学園中学校 ルルドの洞窟
時代は変わっても根幹は変わらない
富井先生 以前にも文房具を回収して現地の子どもたちに送る活動を行っていましたから、話を聞いたときは頷けましたね。
田所先生 「難民」については、SDGsの活動をはじめる前から、中学3年生において大きなテーマの一つとして取り組んでいます。
ユネスコがSDGsの実現に取り組む方針を発表(2016年10月)するまでは、ユネスコスクール(2012年10月加盟)として、平和や自然、人権といったテーマに取り組んできました。もちろん、本校はカトリック校ですので、その精神のもとアデル献金などの献金・募金活動やエコ活動などを行い続けてきております。
このように時代は変わっても根幹は変わらず、「普遍的」なテーマと現代の課題とを結びつけて考え取り組んできました。SDGsの活動においても、カトリック校やユネスコスクールとしての視点が生かされています。
富井先生 SDGsの活動は本校の教育理念と響きあい、又従来の取り組みが発展したものとして広がっています。
晃華学園中学校 先生
1人の発案をみんなで応援する学校文化がある
長岡先生 ある1人の生徒が始めた活動が「ライスドライブ」です。ライスドライブとは、各家庭で余裕のあるお米を集めて生活困窮者などに提供する活動です。「SDGs for School」の一員としてライスドライブへの参加を呼びかけると、告知わずか2日間で、全体目標の20kgを上回る24kgのお米が集まりました。
誰かが呼びかけた活動をみんなが応援する文化があるのですね。
長岡先生 下級生の反響は大きく、中学生の多くが積極的にお米を提供してくれました。自ら行動することで、周りを動かせることを体感できたのではないでしょうか。
中3の全生徒が「校内模擬国連」を経験
長岡先生 2022年度から実施される高校の新学習指導要領では必修科目「公共」が新設されます。そうしたことも意識して、2017年度から中3の公民を、従来どおり政治や経済を学習する「公民α」(週2時間)と、国際的な課題について集中的に学習する「公民β」(週1時間)に分けています。「公民β」は、1学期は難民、2学期は安全保障、3学期は模擬国連というように、学期ごとにテーマを設定しています。
3学期には「校内」模擬国連を行います。テーマは「国連カフェ」。国連主催のカフェを開くとしたら、どのようなメニューを考案するか、生徒一人ひとりが各国の大使に扮し、自国の利益だけでなく世界全体の利益も考えながら議論を重ね、時間内にメニューを決定します。交渉は日本語ですが、これまで学習してきた社会科の知識を土台にして交渉力や協調性を養います。
田所先生 「公民β」を始めるにあたり、中学校の社会科全体の授業を見直しました。中学2年生の地理の授業(週1時間)を、中3の公民βにつなげるようにしています。例えば、地球温暖化のような地球規模の課題を取り上げ、国際的な視点でとらえることを意識させるようにしています。地理と公民の接続、教科内の科目の連携をこれまで以上に取るようにしています。
長岡先生 中1の世界地理では校内模擬国連を見据えて、どの国の大使役になっても困らないように、加盟国の193カ国を一度は取り上げました。
晃華学園中学校 「校内」模擬国連
討論に参加したければ基礎知識の習得は不可欠
6年間で身につけさせたい社会科の力とは、どんな力ですか。
田所先生 入試問題にも当てはまりますが、まずは基本的な知識をしっかりと身につけること。そして、身につけた知識を使って「考える力」を6年間通して育んでいきます。さらに、校内模擬国連などを通じて、協調性や発言力を養っていきたいと考えております。
長岡先生 グループワークやプレゼンテーション、校内模擬国連など、議論する機会が増えたことで、生徒は自分の知識不足を痛感しています。基本知識を身についていないと、そもそも発言できない、討論に参加できないことに生徒自身が気づいたことで、知識の習得を面倒くさがらずに取り組むようになってきました。
公民の授業でも、歴史的な出来事や背景を知らないと討論に加われません。公民の枠を超えて歴史や地理の知識をしっかり身につけようという相乗効果が生まれています。
インタビュー3/3