シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

晃華学園中学校

2018年09月掲載

晃華学園中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.当たり前に語られる「男女らしさ」を問う

インタビュー1/3

トイレのピクトグラムからジェンダーの平等を考える

長岡先生 本校ではここ数年、SDGs(持続可能な開発目標)の活動が活発です。そこで入試でもSDGsを題材にした問題を作りたいと思いました。
オープンスクールや文化祭でSDGsの活動報告や生徒主催のイベントを開いているので、本校に来校した受験生は、どこかでSDGsのアイコンを目にしたことがあるのではないでしょうか。

国際目標は小学生にはなじみがないので、小学生にも身近なピクトグラムのトイレ標識から、SDGsの5番目の目標「ジェンダーの平等」を考えてもらおうと思いました。

トイレのピクトグラムを見て、私たちは当たり前のように「男性とは、女性とは、こういうものだ」ととらえていますが、見方によっては一方的な性の押しつけになり得ることに気づいてもらいたいと思いました。

社会科/長岡 仰太朗先生

社会科/長岡 仰太朗先生

予想より多かったトランスジェンダーの視点

出来具合はいかがでしたか。

田所先生 この設問の得点率は約60%です。配点が3点ですので、得点は平均1.8点となります。

長岡先生 結果はおおよそ予想通りでした。無答はほとんどありませんでした。受験生の解答も、こちらが用意していた模範解答のような答えがおよそ8割を占めました。

トランスジェンダーの視点から「どちらのトイレに入ればいいかわからない」という答えが、正解のうち1~2割ありました。これは予想より多かったです。LGBTのニュースを見聞きするなど、子どもたちの方が大人よりずっと受け入れていると感じました。

説明しきるには「ジェンダー」を踏まえて書くこと

採点基準を教えていただけますか。

長岡先生 与えられた情報や資料を活用して、自分の中で咀嚼して表現する力が求められます。それには聞かれたことを「説明しきる」こと。トイレのピクトグラムが「男性らしさ、女性らしさの押しつけ」になっていることをわかったうえで説明していれば、どんな指摘でも正解になります。

設問文でジェンダーについて説明していますから、これを踏まえないと説明しきるのは難しくなります。例えば、「男性はズボン、女性がスカートをはいている」という答えは、見たことを書いただけで、それが何を意味するのか説明がないので、「説明しきれていない」と判断します。「女性の脚が細く描かれている」「男性の肩幅が広い」といった答えも、女性らしさ、男性らしさの押しつけになることを説明していれば正解にしました。

「女性の脚が1本しかない」といった答えは、何を聞かれているのかわからなかったのでしょう。この場合、「女性は膝を揃えて座るもの」という押しつけを指摘できれば正解です。「男性が服を着ていない」という答えも同様です。「男性は逞しくあるべき」という先入観がはたらくことを指摘してほしいのです。

晃華学園中学校 正門

晃華学園中学校 正門

オリンピックがテーマのリード文で大問1題構成に

貴校の入試問題は、例年は分野ごとの大問3~4題構成ですが、2018年度の第1回入試は大問1題でした。何かねらいがあったのでしょうか。

長岡先生 作問の過程で複数の教員から「オリンピック」がキーワードに挙がりました。結果的にオリンピックをテーマにしたリード文を作り、設問で各分野の知識や考え方を聞くことになりました。

そして、国際オリンピック委員会(IOC)はSDGsに沿った大会運営を求めています。また、東京2020大会組織委員会も省エネ・再エネや建材資材の調達など持続可能な大会を目指しています。オリンピックを取り上げるなら、SDGsに触れるのは自然な流れでした。

晃華学園中学校 校舎

晃華学園中学校 校舎

インタビュー1/3

晃華学園中学校
晃華学園中学校カトリックのマリアニストスクール(汚れなきマリア修道会の学校)としての教育理念をこれまで以上に浸透させ、その教育の真価をよりいっそう発揮していくために、「カトリック的価値観に基づいた総合学習プログラム」を策定。これからの世界が取り組むべき重要課題である5つのテーマ(生命・自然と環境・正義と平和・奉仕と福祉・女性の使命)を、6年間の授業・行事・生活の中で総合的・体系的に学習する。「高い志と使命感」「人間と自然への深い理解と愛」「グローバルな視野」の3点が深く身についていくように、有意な取り組みを学園をあげて実施している。
主要教科はもちろん、芸術・体育・家庭科なども同様に重視し、知性と感性をバランスよく育成する「全人教育型カリキュラム」を展開。
中学はクラス別、高校の英語・数学などでは習熟度別授業を実施。生徒の発達段階や学習進度に合わせて、よりきめの細かい指導が行われる。どんな人生を歩んでいきたいのかということを出発点にして進路指導が行われ、自分の興味や特性を見出していけるようなさまざまな教育活動が計画されている。そのなかで、一人ひとりがかけがいのない存在であることを実感し、ノーブレスオブリージュの精神を学んでいくことで、自分に授かった個性や能力を将来どのような分野で活かしていくことができるかを真剣に考え、自分にふさわしい進路を模索していく。そのため、進学先や進路先は多岐にわたっている。
クラブ、同好会、課外活動と3種類の放課後の活動があり、何らかの活動に参加している生徒がほとんどである。活動は中高合同で、活動日は週1~4日とさまざまで、終礼・清掃後に1時間半程度、工夫して活動している。運動部9(うち同好会1)、文化部16(うち同好会13)があり、そのほかにも、華道、茶道、メディアクラブ、聖書研究、聖歌隊、フランス語、シャミナード会などの課外活動がある。
イースター・静修会・慰霊祭・クリスマスなどの宗教行事のほか、クラス単位の合唱コンクール、中高別々に行われる英語スピーチコンテスト、スキー教室など行事も多い。高校1年生の夏休みには2~3週間の英語語学研修を実施。現在は、イギリスでの研修を行っており、豊かな自然環境の中でのホームステイ生活を通して、英語力だけではなく人間力を磨く。学年の6割前後の生徒が参加している。ボランティアにも積極的。初代校長がアメリカ人であったこともありカウンセラー室は創立当初からある草分け的存在。