シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

昭和女子大学附属昭和中学校

2018年08月掲載

昭和女子大学附属昭和中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.好きなことからでいい。主体的に学習して理解を深めよう!

インタビュー3/3

生徒に合わせて丁寧に教える

数学に拒否感をもっている生徒さんもいると思いますが、どのような工夫をしていますか。

今村先生 生徒に合わせて丁寧に教えるということですね。教科書に書いてある情報が多すぎることもあるので、教科書ありきではなく、生徒ありきで教えています。例えば、文字式の2xと3yはなぜ足せないのか。「みかんとりんごは足せないだろ」というように、身近なものに結びつけてイメージしやすいところから入っていきます。うまくいっていたのですが、今年に入って2xと3yを足す子が続出しました。1学期を終えても「2x+3y=5xy」となるのでどうしてかなと思い、気づいたのがパイナップルとペンが合体する、あの歌の影響です。
「なんでも足せる!それでしょう」となったのでしょう。

小西先生 完成ノートという問題集があり、自分で○つけをして提出するのですが、全部○なんです。答えは2x+3なのに5xで○がついている。そこをしっかり正していかないと2年生でもごまかしてしまう。それは避けたいと、頑張っています。

昭和女子大学附属昭和中学校

昭和女子大学附属昭和中学校

勉強が楽しくなる鍵は主体性

驚くべき成果をあげる子もいますか。

今村先生 それもいます。自分で勉強するようになると楽しくなって、今はまだγクラスですが、この子はα(一番上のクラス)にいっても大丈夫だろうと思えるところまで急成長した生徒が数名います。
どこかでコツがわかると、「なんだ、そういうことか」と開眼していく。そういう子が毎年必ずいます。そういう子をつくるのが楽しいです。「(γに)帰ってくるんじゃないぞー」という気持ちで送り出しています。γにずっといる子もいます。そういう子もγの学級委員になって、「リアルγ」とか言いながら、楽しく学んでいるので、あまり数学の授業が嫌い、という子はいないのではないかと思っています。それが誇りです。

1つのやり方で満足する女子

今村先生 私はずっと女子校の教員なので、男子との比較は自分の息子たちとの比較になりますが、女子は解答までの道筋がどんなにいばらの道でも、やり方が一つわかったらそれをやります。ちょっと工夫すればもっと効率のいい方法があるのに、他の楽な道を探そうとしないのです。女子にとって他の方法を探すことは余計なストレスなんだろうなと感じています。

小西先生 今度の定期テストにもそういう問題がありましたね。

今村先生 はい。「こう解いたけど、もう少し工夫できるんじゃない?」「その工夫の仕方はどうかな」というように、男の子と女の子が会話をしているという設定で、こういう性質があるからこういうことができて楽になるということが学べるような穴埋め問題を出しました。

小西先生 あの問題はおもしろかったです。今まで見たことのない問題でした。

今村先生 メッセージを込めました。習ったことが定着しているかを問う問題を出すことも大事ですが、定期テストは新しいことを学ぶ場としても格好の場だと思ったからです。生徒がマックスで集中しているこの時を逃す手はないなと思い、誘導するような形で、あえて考え方を問う問題を出しました。ここ数年、センター試験のような問題を自作することに力を入れています。それもこれからに生きてくると思ってやっています。

昭和女子大学附属昭和中学校/図書館

昭和女子大学附属昭和中学校/図書館

デジタル媒体から離れて遊ぼう

どんなお子さんに入ってきてほしいですか。

今村先生 順序立てて考えられる。途中の考え方や途中の式をきちんと書ける。そういう力や、自主的に取り組む。最後まであきらめずに粘り強く取り組む。そういう姿勢をもっている子に入ってきてほしいです。丁寧さや素直さも含めて、学ぶ姿勢が身についていると、入ってきてから伸びるからです。

そういう力をつけるためには、どのようなことをすればいいのでしょうか。

今村先生 小学生には、1日20分、なんでもいいので、自主的に学習に取り組んでほしいです。僕は小学校の時、勉強がすごく嫌いでした。その時に担任の先生が僕らに課したのが、1日20分、好きな勉強をするということでした。専用のノートにやって提出すると、教室の中に貼ってあるグラフが増えるので、それが励みになりました。逆にやらないとバレるので、笛の練習でもなんでもやって提出しているうちに、1日20分の学習が身につきました。中学校に入って勉強するようになったのは、それが根底にあります。

小学生の時は勉強が好きではなかったのですね。

今村先生 私は小学生の時、遊びほうけていました。もちろんスマホや3DS、パソコンなど、デジタルの遊び道具もなく、外で遊ぶしかありませんでした。毎日のように「なにをしようか」と、みんなで考え、工夫をしなければ遊べない時代でした。ドッジボール1つとっても、「こういうルールを作ったほうがおもしろいんじゃないか」「このエリアはこうしたほうがいいんじゃないか」と、図形を書いて考えました。そのうち「ドッジボールを○でやったらどうなる?」といったアイデアが出るなど、遊びが発展していきました。

今はそういう工夫がありません。完成されたゲームをやる子が多いので、そこから離れられれば学力は上がっていくのではないかと思います。オセロ、将棋、かるた、トランプなど、デジタル媒体ではない遊びというものに、実は算数、数学、その他諸々の力をつけるベースがあるのではないかと思います。

昭和女子大学附属昭和中学校/掲示物

昭和女子大学附属昭和中学校/掲示物

インタビュー3/3

昭和女子大学附属昭和中学校
昭和女子大学附属昭和中学校1920(大正9)年に人見圓吉が創設した、日本女子高等学院が前身。建学の精神である「世の光となろう」のもと、「清き気品、篤き至誠、高き識見」の言葉を掲げ、人格と能力を兼ね備えた、社会に貢献する人材の育成をめざしています。
都心に位置しながら、豊かな緑に恵まれた広々とした構内には、式典・講演会のみならず、外部の利用からも高い評価を得ている人見記念講堂、人工芝グラウンド、可動式スタンドを備えた新体育館、年間を通して利用できる温水プール、54万冊もの蔵書を有する大学図書館、日本文化の授業や音楽・国語の授業で使用される茶室があります。
昭和女子独自の中高一貫積み上げ教育を実践し、高2年で高校課程を修了。その後は、高校に籍を置いて併設大学で学ぶ「五修生制度」や、併設大学への被推薦権を得たまま他大学受験も可。併設大学への内部進学率は低下していて、2016年は30%でした。
週6日制で授業時間を確保し、多様な進路に対応できるカリキュラム”SHOWA NEXT”を展開。朝読書、3~4分間のスピーチを行う「感話」、個人研究の「私の研究」、クラス研究の「昭和祭研究」があります。また、中学校の生徒全員が3年間にわたって行う「ザ・ボストンミッション」は、中学1年~2年で準備研究、中学2年の終わりにアメリカキャンパス「昭和ボストン」で12日間の海外研修を経験。帰国後、その成果を英語で発表します。アメリカの歴史や文化を学びながら、現地の生徒とも交流し、国際感覚や英語運用能力を養っていきます。さらに、キャンパス内にあるブリティッシュ・スクールとの交流もあり、文化の違いを体験しながら、コミュニケーション力や協調性を養っていきます。
「ユネスコスクールプログラム」では、思考力・応用力・表現力を磨く取り組みが行われています。高校3年では、第2外国語(6カ国語)を選択することができます。
上級生と下級生が一緒に清掃や作業を行うことで、思いやりや協調性を育てる「朋友班活動」、企画から運営まですべて生徒たち自身で行う「感謝音楽祭」、中学1年~高校2年生が学年ごとに学校所有の宿泊施設で3泊4日の共同生活を送る「学寮研修」など、昭和ならではの独自の取り組みがあります。
木曜日の必修クラブのほかに、課外クラブ活動もあり、放送部が全国大会、水泳、書道、陸上部なども大活躍。珍しいドッジボールもあります。