シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

昭和女子大学附属昭和中学校

2018年08月掲載

昭和女子大学附属昭和中学校【算数】

2018年 昭和女子大学附属昭和中学校入試問題より

何人かで旅行へ行き、写真を3枚撮(と)りました。
1枚目の写真には3人、2枚目の写真には4人、3枚目の写真には6人写っています。3枚すべてに写っているのは1人、3枚中2枚に写っているのは2人であるとき、旅行へ行ったのは全員で何人でしょうか。ただし、写真に写っていない人はいないこととします。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この昭和女子大学附属昭和中学校の算数の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

9人

解説

旅行に行った人をA、B、C、D、・・・として、次のような表を使って考えてみましょう

解説 図1

写真に写った人を「○」として、条件を1つずつあてはめていきます。
「1枚目の写真には3人写っている」と「2枚目の写真には4人写っている」と「3枚目の写真は6人写っている」を満たすように表に○を入れると、たとえば次のようになります。

解説 図2

しかし、このままでは「3枚すべてに写っているのは1人」と「3枚中2枚に写っているのは2人」という条件を満たしていません。そこで、○の位置の調整を行い、すべての条件を満たす場合を探していきます。

まずは「3枚すべてに写っているのは1人」という条件を満たすように調整していきましょう。
仮に、3枚すべてに写っているのはAだとしましょう。すると、「3枚すべてに写っているのは1人」という条件から、BとCが3枚写っているのはおかしいことがわかります。

解説 図3

「3枚目の写真には6人写っている」ので、3枚目にGとHが写っていたとしましょう。

解説 図4

次に「3枚中2枚に写っているのは2人」という条件を満たすように調整していきます。
上の表を見ると、3枚中2枚に写っているのは、BとCとDの3人です。そこで、3枚目にDは写っていなかったとしましょう。

解説 図5

「3枚目の写真には6人写っている」ので、3枚目にIが写っていたとしましょう。

解説 図6

この表を確かめてみると、「1枚目の写真には3人写っている」「2枚目の写真には4人写っている」「3枚目の写真には6人写っている」「3枚すべてに写っているのは1人」「3枚中2枚に写っているのは2人」という条件をすべて満たしていることがわかります。
つまり、旅行へ行ったのはA~Iの9人とわかります。

【別の考え方】
「仮にこうだったら…」と考えて、「実際」とくらべて考えていくこともできます。

まずは、仮に複数枚の写真に写っている人は1人もいなかったときのことを考えてみましょう。すると、旅行へ行ったのは3+4+6=13(人)と考えられます。

実際には、「3枚すべてに写っている人が1人」「3枚中2枚に写っている人が2人」なので、旅行へ行った人数は13人より少ない人数であることがわかります。そこで、実際は13人よりもどれだけ少ないのかを考えます。

「3枚すべてに写っている人」は1人なのですが、3人いると考えています。つまり、実際の人数は13人より3-1=2(人)少ないことがわかります。

また、「3枚中2枚に写っている人」は2人なのですが、2+2=4(人)いると考えています。つまり、実際の人数は13人より4-2=2(人)少ないことがわかります。

まとめると、実際に旅行へ行ったのは13人よりも、2+2=4(人)少ない人数とわかります。

13-4=9(人)

日能研がこの問題を選んだ理由

問題文を読んでみると、いくつもの条件が提示されていることがわかります。たとえば「1枚目の写真には3人写っている」や「3枚すべてに写っているのは1人」などです。提示された条件をすべて満たすような場合を考えるというのがこの問題です。

いざ取り組んでみると、和差算やつるかめ算などのような、決まった解き方がある問題ではないことに気づきます。ほとんどの受験生にとって、初見の問題であったはずです。

初めて見る問題ですから、「知っているからできる」「知らないからできない」という見方で問題を見てしまうと、力を発揮できるチャンスを自ら放棄してしまうことになります。“未知”に対してどのように向き合えるのかを見ているといえそうです。

入学後、どのような姿勢を大切にしていきたいのかを感じさせます。

このような理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことに致しました。