シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

共立女子第二中学校

2018年08月掲載

共立女子第二中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.散歩で実物を見て触れると興味がわく

インタビュー3/3

理科を学ぶ環境が充実。学校には“珍客”も訪れる

戸口先生 中学3年間で行う理科の実験は100を数えます。本校には4つの実験室、2つの化学室と物理室、生物室、理科演習室を備えています。理科演習室には学内で見られる植物の標本(落ち葉図鑑)や昆虫の写真を掲示しています。生物室の棚には、飼っていたキンケイ(キジの仲間)や、アカハラ、カケス、タヌキ、ハクビシンなど、学校周辺に棲む動物の剥製があります。

日が暮れると小動物が活動し始めます。アナグマ、キツネ、タヌキなどの“来訪者”も、本校の日常の一部です。

松本先生 「今鳴いているのは、この鳥だよ」とその鳥の剥製を見せて耳と目からインプットできます。運がいいとオオタカを目撃できます。

戸口先生 私は社会科を教えていますが、飛鳥時代の法隆寺の所蔵品「玉虫厨子」を取り上げるとき、その名の由来になった実際のタマムシを見せながら説明できるので、生徒は印象に残ると思います。

松本先生 タマムシは毎年、誰かが捕まえますね。本校では珍しくありません。

共立女子第二中学校 生物室

共立女子第二中学校 生物室

野外観察の散歩で実物を見るから特徴の実感がわく

松本先生 理科の授業ではどの学年も野外観察を行っています。1学期が始まると早速「散歩」に出かけます。春はいろいろな種類のサクラを楽しめます。

中1はまず花の観察をします。実験室に花を持ってくるのではなく、花が咲いている校庭へ足を運ぶのでいろいろな花を見ることができます。花の構造はそれぞれ違いますが、外側から、がく、花弁(花びら)、おしべ、めしべという順番は同じです。チューリップは花弁が6枚あるように見えますが、外側の3枚はがくです。実物を見ることで「不思議だな」と興味がわいてきます。

高3も散歩します。「生物多様性」の学習に役立ちます。受験生は樹木の名称だけを丸暗記しがちなので、校内の雑木林を歩いて落葉樹のクヌギやコナラがどんな樹木か確認したり、常緑樹の樫の木と見比べられるのでずっと実感が持てます。

戸口先生 校内の自然は、教科書そのものですね。

松本先生 散歩は漫然と歩くのではなく、四季の移ろいを感じてほしいですね。俳句を作るのに生徒を散歩に連れ出した教員もいます。見せてもらいましたが、教室で作るのとは全然違いました。ヘビに出くわしたこと、耳にしたホトトギスの鳴き声など、体験したことが盛り込まれた作風になっていました。

知らないから過度に怖がる。知れば恐れるに足らず

松本先生 虫が嫌いな生徒が多く気持ち悪がりますが、説明すると警戒心が薄らぎます。生徒は葉にくっついているのが卵と知らず、「これ、何ですか?」と持ってきます。「何だと思う?」と聞き返すと、いろいろなことを言います。「卵だよ」というと、好奇心いっぱいの目をします。いきなり「卵だよ」と答えると驚いてしまうので、考えさせてワンクッション置くと過度に怖がらないし、“イヤなもの”と決めつけません。

教室にハチが侵入すると、ちょっとした騒ぎになります。この辺りをよく飛んでいるハチはオナガキバチですが、このハチの針は皮膚に刺さるほど丈夫ではありません。きちんと説明すると生徒は落ち着きます。

それに、ハチの針は産卵管が変形したものですから刺すのはメスだけです。体が大きなクマバチがブーンという大きな羽音を立てて近寄ってくると尻込みしますが、これはオスがメスを確認している行為です。ホバリング(静止飛行)して自分の縄張りを主張しているのもオスですから、触っても大丈夫です。

アブはハチと見た目が似ていて間違えやすい。でも、アブはハエと同じ仲間の2枚翅、ハチは4枚翅なので、翅の数を数えると見分けられます。ただ、ハチは前翅と後翅がくっついているので“2枚”に見えるのですが…。

アブにも「刺す」印象があると思いますが、アブは「噛み」ます。花粉をなめるハナアブを見つけると、「ハエの仲間だから、なめさせてごらん」と生徒に体験させます。実は結構冷たくて気持ちがいいのです。

共立女子第二中学校 掲示物

共立女子第二中学校 掲示物

レポートの敷居を低くして実験結果を考察する

松本先生 目的、方法、結果、考察というレポート形式にすると、生徒は堅苦しく感じてしまいます。そこで、目的の代わりに、「この実験のタイトルを考えよう」と言います。すると、大抵は目的を表すタイトルになります。このように問いかけを変えると、生徒はおもしろがって書いてくれます。

例えば、ブロッコリーからDNAを抽出する高1の実験では、「抽出したものが本当にDNAかどうか確かめるにはどうすればいいか」という問いを出して考察してもらいました。高2になると、きちんとしたレポートが書けるようになります。

また、中学のうちからいろいろな授業で発表する機会を増やしています。今の生徒は嫌がらずに前に出てきます。理科の授業では「私もこれで発明家」というテーマで発表してもらいました。「寝起きが悪い人のための、飛び跳ねるベッド」など、実現可能かどうかは度外視して、「こんなのがあったらいいな」というものを自由に発想してもらいました。なかなかアイデアが浮かばない生徒も、他の生徒の発表を聞いて発想をふくらませていました。

高校で「探究活動」を開始

戸口先生 2022年から始まる新学習指導要領を先取りする形で、今年度から、高校の総合学習の時間を「探究活動」に充てています。

松本先生 先日、ウエディング・プランナーをしている卒業生が高1に話をしてくれました。そのあとで、卒業生が伝えたかったことは何か、話を聞いてどんなことを考えたかなど、グループでディスカッションをして発表してもらいました。

私がやってみたいと思っている課題が、実験台どうしを渡す橋を作るのに、紙とセロテープだけでどれだけ耐久性のあるものを作れるかというもので、建築学につながります。

戸口先生 高1で探究活動を行うための基礎を身につけて、高2で各自がテーマを選んで本格的な探究活動に取り組んでいきます。

共立女子第二中学校 バラ園

共立女子第二中学校 バラ園

答えにたどり着く“道”をたくさんつくりたい

6年間でどのような理科の力をつけさせたいですか。

松本先生 答えを導き出すにはいろいろなアプローチがあります。その“道”をたくさんつくれるようにするのが理科という教科の役目ではないかと思っています。新しいことにチャレンジすることも、理科的発想ではないかと思います。

私は、理科の学習を通じて得たこと、興味を持つ、疑問を持つことなどを他教科にも生かせるように意識しています。実験など理科の学びの中で試行錯誤することが他教科によい影響をもたらすと考えています。

本校の生徒たちは指示したことをきちんとやる“素直ないい子”です。でも、素直すぎると受け身になって自分で考えようとしなくなります。素直すぎなくていい、反発していいし、「やってはいけない」と言われたら、こっそりできないか知恵を働かせるくらいでいいのです。10代の今だからこそ、失敗してもいいから新しいことにどんどんチャレンジしてほしいと思います。

インタビュー3/3

共立女子第二中学校
共立女子第二中学校八王子市にある併設型中高一貫校。高校は昭和40年、中学は昭和59年に開校している。母体である共立女子学園は明治19年(1886)、先覚者34人が発起人となり、女性に専門的知識と高度の技能を修得させ、女性の自主性と社会的自立を育成することを目的として創立された。広大な敷地の中の充実した施設は、大きな魅力である。
学園の一貫不変の理念は、「女性の社会的自立」。仕事に限らず地域そして家庭などそれぞれが活躍の場を見つけ、自分ならではの社会貢献ができる「人間力」を育てる。社会に出た際に役立つ、美しい立ち居振る舞いを学ぶ礼法、浴衣の着付け、華道・茶道など和の正しい作法の指導など女子校ならではの教育は、長年にわたって受け継がれてきた伝統である。
学習面においても、恵まれた自然環境を生かした野外観察や天文教室など体験型の授業を多く取り入れている。一方で時代の変化に対応したグローバル教育や大学進学対策に関しても現状と将来をしっかりと見据え、私学ならではの柔軟性を活用したカリキュラムを設定されている。特に英語教育においては、4技能育成に重点を置いた授業とニュージーランドの姉妹校との交流を通じたバランスの取れた英語力を定着させ、来るべき大学入試改革に対応。
大学進学においては、共立女子大学の併設校としての強みを生かし、充実した推薦制度を利用した安心の進学システムが構築されている。共立女子大・短大を第一希望とする場合は文芸・国際の両学部については成績基準を問わず入学が可能。また併設高校特別推薦制度を利用すれば、外部大学との併願も可能となり、安心して難関大学にチャレンジすることができる。