シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

共立女子第二中学校

2018年08月掲載

共立女子第二中学校【理科】

2018年 共立女子第二中学校入試問題より

私たちの学校にはたくさんの自然が残っています。特に何か所もある雑木林には多くの生き物たちの営(いとな)みが観察されます。
この雑木林について、次の問いに答えなさい。

(問1)学校の周りに見られる山は、スギやヒノキで植林されています。この林は、雑木林と比べると違いがあります。どのようなところが違いますか。次の(ア)~(エ)の中から適するものを1つ選び、記号で答えなさい。

  • (ア)スギなどの林は雑木林と比べて、虫などが少ない。
  • (イ)スギなどの林は雑木林と比べて、土の栄養がたくさんある。
  • (ウ)スギなどの林は雑木林と比べて、鳥が活発に活動し、さえずりも多く聞こえる。
  • (エ)スギなどの林は雑木林と比べて、日光が入りやすく明るい。

(問2)秋になると雑木林では、10mにも達する大きなコナラの木から、ドングリがたくさん落ちてきます。これらのドングリは、冬の間に根を出し、春になるといっせいに芽(め)を出します。しかし、これらの芽から育ったほとんどの木は、数年でかれてしまいます。芽が出てもすぐにかれてしまうということは、コナラの木にとってあまり意味がないことのように思えますが、実際には大切な意味があります。ドングリから育った小さな木には、どのような意味があると考えられますか。次の(ア)~(エ)の中から適するものを1つ選び、記号で答えなさい。

  • (ア)小さな木は晴れた日に光合成をして、大きな木に栄養を与える。
  • (イ)小さな木は雨によって土にたくわえられた水を吸収するため、大きな木が呼吸をしやすくなり、成長が速くなる。
  • (ウ)風などで大きな木が倒れた時に、小さな木は林のすきまをうめるように大きく成長する。
  • (エ)小さな木が数年でかれることで、ほかのドングリの芽が出やすくなる。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この共立女子第二中学校の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答
  • (問1)(ア)
  • (問2)(ウ)
解説

(問1)問題の冒頭文から、雑木林が多くの生き物のすみかになり、落ち葉などによって栄養豊富な土を作り出していることが推測できます。これらのことが雑木林の特徴であることと、(問1)ではスギなどの林と雑木林の違いを選ぶことから、雑木林の特徴にあてはまらない、(ア)の「スギなどの林は雑木林と比べて、虫などが少ない。」が適するものになります。

(問2)小さな木が光合成をして栄養分をつくっても、その栄養分を直接大きな木に与えることはありません。また、雨によって土にたくわえられた水を小さな木が吸収することと、大きな木が呼吸をしやすくなることには関係がありません。小さな木が数年でかれることで、ほかのドングリの芽が出やすくなったとしても、そのほとんどが、数年たつとふたたびかれてしまいます。一方、小さな木が育っていれば、風などで大きな木が倒れた際に、林のすきまをうめるように大きく成長することができ、コナラにとってよいことがあるといえます。これらのことから、(ウ)の「風などで大きな木が倒れた時に、小さな木は林のすきまをうめるように大きく成長する。」がふさわしいことになります。

日能研がこの問題を選んだ理由

雑木林に関する情報をもとに、スギなどの林と雑木林の違いを推測する問題と、問題文の情報と選択肢の内容を照らし合わせ、ドングリから育った小さな木の意味をとらえる問題です。

住んでいる環境による違いはあるものの、子どもたちも何らかの機会に林を目にしたことがあるでしょう。しかし、その林が、さまざまな種類の植物が育つ雑木林なのか、ある種類の植物のみが植林された林なのかという点に目を向けることは少ないのではないでしょうか。また、雑木林の中で芽を出し、数年でかれてしまう植物について考える機会も、なかなかないように感じます。

この問題では、雑木林がそこにすむさまざまな生き物に与える影響や、雑木林の中に生えている植物どうしの関係について、問題文や選択肢で示された情報をもとに明らかにしていきます。

この問題は、子どもたちが自然の中にある植物の意味や役割に目を向け、身のまわりにあるさまざまなもの同士のつながりや、それぞれの役割についても改めて考えを進めていくことで、新たな知識のネットワークを構築するきっかけになるでしょう。

このような理由から、日能研では、この問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。

SDGs17のゴールとのつながりについて

  • 18 SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS
  • 15 陸の豊かさも守ろう

人間が植林した少ない品種の林と、多種類の木が生えている自然の雑木林。たくさんの生物とつながっているのはどちらでしょうか?
問題文を読み、選択肢を選ぶことによって、森林について学ぶことができる。さらに、生態系の保護や生物多様性、森林の管理などなど、新たに興味を持ったことについて調べてみる——そんな学びを通じて、SDGs(持続可能な開発目標)の目標15「陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する」につながるような入試問題です。
あなたの身近にある森林や植物は、持続可能な開発目標とどのようにつながっているのでしょうか?

私学とSDGsのつながりについて詳しくはこちらから

日能研は、SDGs をツールとして使い、私学の活動と入試問題に光を当てた冊子をつくりました。
詳しくはこちらから